第58回ちばてつや賞-ヤング部門-発表|講談社コミックプラス
 
     
  今回のちばてつや賞は、密度、質ともに高い作品が集まりました。エンタテインメントの形が多様化し、いろいろな分野に才能が散らばっている時代に、これだけ多くの面白い作品が出てきてくれるのは嬉しいものです。「漫画はまだまだ大丈夫!」と思わせてくれる作品をたくさん読むことができ、明るい気持ちになれる選考会でした。  

 
ちばてつや先生
 

ちばてつや先生総評

 次代のヤングマガジンを担うであろう新人が、続々登場するちばてつや賞!! 今回も多数の力作が集まる中、大賞に選ばれたのは井上智徳氏の『ヘルシング教授の思い出』だ!


大賞

『ヘルシング教授の思い出』井上智徳(28歳・東京都)
大賞
2008年6月20日(金)発売 別冊ヤングマガジン第28号に掲載!

ストーリー

日常に絶望し、心を閉ざして生きる少女・時子は、近所で噂の幽霊屋敷で不思議な老人と出会う。老人はヘルシング教授と名乗り、自分は永遠の命を持った吸血鬼だと告白sるのだった‥‥! 半信半疑の時子だったが、教授が長い時間の中で失ってしまった記憶を辿る手伝いを申し出る。

 

選評

1コマ1コマの絵、セリフ、構図に深みと味わいがあった。短編の作り方を心得ている作者だなという印象を受ける。ヘルシング教授とドラキュラの永遠の戦いを、現代っ子の時子の悩みに絡ませて、味わいある作品に仕上げている。教授と時子が、お互いに人生に「明るさ」を見つけた動機を強く描けると、さらに良かった。
 
 

優秀新人賞

『ひくいところに住む灯り』五十嵐健三(27歳・東京都)
優秀新人賞

ストーリー

職業はパチプロ。耳障りなノイズの中で、日に日に脳が腐っていくような感覚を味わう主人公。そんな憂鬱な日々の中での楽しみといえば、風俗以外にない! 今日も先輩の有田に誘われ、向かう先はもちろん風俗店‥‥
 

選評

気負いのない静かなタッチの絵で、キャラクターや背景の淡々とした演出が自然で上手い。コマ運びや表情、大ゴマの使い方など、漫画的な表現が全てにおいて的確で、描きやすく、わかりやすく伝える力量を持っている。

 
 

優秀新人賞

『ディナー』左将人(22歳・東京都)
優秀新人賞

ストーリー

仕事を失った男・小林は、謎多き中年男性・トモさんに誘われ、豪華なレストランで食事する。その帰り道、トモさんは路上に倒れていた男を不意に指差して「あの男の面倒を見てやってくれ」と言い出すのだが‥‥。
 

選評

 ストーリー上、不鮮明な部分は多々あるのだが、静かで自然な演出や何気ない日常の描写に、何かひきつける魅力があり、不思議な感性を感じる。伝えたいメッセージを明確にすれば、読者の胸を打つ作品を創れる力を持っている作家だと思う。
 
 

準優秀新人賞

『カンキツ系』渋谷ユウジ(24歳・神奈川県)
準優秀新人賞

ストーリー

お笑いコンビ・カンキツ系の神崎と吉川は、若手漫才NO.1を決めるイベント「W-1」に向け、ネタ準備万端で気合いも十分!! だが、大会目前、吉川は自分の母親の余命が半年だと知る‥‥。
 

選評

キャラクターの表情が、ややぎこちなく固いために肝心の笑いをこわばらせている。しかし、ストーリーを練り、登場人物を巧みに配置し、感動させる話を作ろうと努力する姿勢は十分、読み手に伝わってくる力作だ。
 

準優秀新人賞

『スカトロック』 藤川努(29歳・東京都)
準優秀新人賞

ストーリー

小さな島で暮らす、音楽好きの高校生・奏太が、東京から来た転校生・陽子のギターに惚れ込んだ!! 彼女をなんとか自分のバンドに引き込もうと、奏太は彼女にセッションを申し込む!!

 

選評

構図もキャラも勢いがあってイキイキしている。仲間たちそれぞれの個性をうまく描き分けつつも、物語の焦点を主人公の奏太と陽子に絞った演出はよい。アップ、ロング、見開きと読むリズムにも工夫があった。
 
 

準優秀新人賞

『大切な者』 国安拓史(25歳・栃木県)
準優秀新人賞

ストーリー

建築現場で働く陸は、周りの中間が少しずつ「大人」へと変わっていくことに無性にイラ立っていた。そんな中、陸が現場で殴り倒した男から逆襲を受け、陸は重傷を負ってしまう‥‥!!
 

選評

書き込まれた線に、不思議な魅力がある絵だ。主人公や、チンピラの若造、現場のゴロツキなど、荒んだ世代の人物たちのセリフも、それぞれ活きていた、何に対してもイラ立つ心情や、ささくれが伝わってくる。
 
 

準優秀新人賞

『B・D・B』 民谷剛(27歳・東京都)
佳作

ストーリー

ボウリングピンのようなチンコを持つ男・本田君は、ボウリング大会出場を目指すマミに誘われてボウリングを始めるが、迷惑な男たちに絡まれたあげく、マミを賭けて対決することに!?
 

選評

読者を面白がらせよう、楽しませようと努力し、コマ割りやキャラクター等、いろいろ工夫している。エンタテインメント精神が豊かな作者。その展開に読者はハラハラし、最後のピンの正体を見て拍手を送るはずだ。
 
 

準優秀新人賞

『龍&竜』 今村KSK(23歳・東京都)
佳作

ストーリー

かつては親友だった龍郎と竜介。だが、ある事件のせいで2人の友情は壊れ、龍郎はオタクに、竜介は不良になった‥‥。ある日、龍郎は竜介がタチの悪い不良に狙われていることを知る!!
 

選評

分かりやすい絵と、迫力のあるストーリーに引き込まれる。ただ、人物がみな重々しく影を感じてしまうのが少々惜しい。対照的に明るく無邪気な少年少女を描けるようになれば、さらに作品の幅が出てくるはずだ。

 
 

佳作
『恋するススム』下川晃弘(21歳・神奈川県)
佳作

選評

ナマイキだが、意外に素直な一面もある主人公に好感が持てる。お金では買えないものがある、という普遍的なテーマがストレートに伝わってきた。
 
佳作
『空の勇士』光橋信宏(19歳・京都府)
佳作

選評

家族を守りたいという思いが丁寧に描けている。ドラマとしてはシンプルだが、意識的に作品を読みやすくしようという工夫が随所に見られる。
 

期待賞
『うさぎひめ』横山雅司(29歳・東京都) 
佳作

選評

多くの知識が散りばめられていて、宇宙へのロマンに溢れた作品。作風にオリジナリティあり。
 
期待賞
『俺はガッツ!!』原山久志(27歳・東京都)
佳作

選評

テーマが若者の焦燥感だけに留まらず、そこから脱却して成長する様にきちんと描けている。

   
期待賞
『盲目の夜』佐々木水素(19歳・東京都)
期待賞

選評

不思議な世界観があり、引き込まれる。伏線も巧みで、意外性のある展開を演出できる。
 
 
期待賞
『ワル』柴田憲一(24歳・北海道)
期待賞

選評

奇妙な友情関係に独特の面白味があり、キャラクターが立っている。テンポが良く無駄がない。