伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ新世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得している。

当連載では、作品内で繰り広げられるガソリン車のレース『MFG』で活躍するドライバーや、主人公・片桐夏向の周囲を取り巻く人々など、魅力あふれる登場人物たちの人となりを分析し、そのキャラクターや人物像を明らかにしていく。

今回は、MFGラウンド1「小田原パイクスピーク」で解説を務めた小柏カイをピックアップ。作中では姿を現していないが、その言動から『頭文字D』ファンを熱くさせた。往時の活躍を振り返りつつ、現在の姿を想像していきたい。

文/安藤修也
マンガ/しげの秀一

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■伝説のミッドシップ使いは引退後何をしていたのか?


熱心な『頭文字D』ファンであれば、小柏カイと聞けばすぐにあの意志の強そうな顔が思い浮かぶはずだ。父親の代から藤原家と因縁があり、一度ならず二度までも藤原拓海を苦しめた強敵だった。続編となる今作『MFゴースト』では、MFGラウンド1「小田原パイクスピーク」のゲスト解説者として登場している。ただし、登場といってもその容姿が描かれることはなく、声、つまりセリフのみでの登場となった。


実況担当の田中洋二(彼もセリフのみで登場)によれば、レーシングドライバーとして活躍したあと、現在は監督としての立場でレース活動に携わっているという。

つまり『頭文字D』のプロジェクトD神奈川遠征で「R・Tカタギリ」のドライバーとして拓海に敗れたあとも、レーシングドライバーとしてそれなりに活躍したのではないだろうか。実際のレース業界でも、一流ドライバーとしてそれなりの結果を残さなければ、ドライバーから監督への華麗なる転身というのはなかなか見られないからだ。
また、登場時には実況の田中から、MFG上層部のメンバーと面識があることを語られ、「彼らは古くからの友人です」と答えている。プロジェクトDのミッション終了後も、同じ北関東を根城とする走り屋として、高橋兄弟らとなにかしら親交があったのだろうと予想される。ただ、謎の人物リョウ・タカハシ(高橋涼介のこと)に関する情報を求められると「しゃべるなとクギをさされているのでしゃべれないんですよ(笑)」と返している。

一方で、そのリョウ・タカハシが考案したMFGのレギュレーションについて、「(涼介による)天才的な手腕」だと絶賛し、さらに持論を展開している。

いわく、「リッチマンズレギュレーション」と言われたMFGのハイパワー車全盛の状況も、4年目にきてひとつのターニングポイントがきているのだと。パワーよりバランスを重視するマシンとドライバーの躍進がその兆しで、ベッケンバウアーの活躍に理解を示している。


■涙の影に見え隠れする藤原拓海との友情


ラウンド1の決勝レースがスタートすると、718ケイマンを駆るベッケンバウアーが頭ひとつリードする。すかさず解説の小柏は「タイヤマネジメントのうまさでしょうね。冷えたタイヤに熱をいれる技術がうますぎます」と、ベッケンバウアーのテクニックは世界最高水準だと絶賛

さらに「こんなことができるのは決勝進出15名の中でも彼一人でしょうね」と断言した。8歳からカートでテクニックを磨いてきた小柏には、タイヤの重要性がしっかり身についていて、他のドライバーのタイヤの使い方についても目がいくのだろう。

しかし、この発言が間違いだったと彼自身すぐに気づくことになる。それは、実況の田中が片桐夏向に関して独自取材してきた彼の素性を話したことに端を発する。夏向が名門RDRS(ロイヤル・ドニントンパーク・レーシング・スクール)の出身であること、そして当時の講師に藤原拓海が在籍していたことが明かされたのである。
これらを聞き、小柏は思わず感情剥き出しで「わたくしは‥‥個人的には藤原(拓海)君とは、浅からぬ縁といいますか‥‥因縁のようなものがあって、ドライバーとしても戦ったこともあり、親交がありました‥‥」と吐露する。どうやら親交があったのは若い頃までで、大クラッシュをして経歴を棒に振ってしまったあとの拓海の行方を知らなかった様子である。

拓海が無事で英国で講師をしていたという話を聞き、「今はともかく‥‥うれしいです‥‥彼が今でも元気でいてくれるなら‥‥それだけで」と涙を見せた(と描写されている)。



■駆動方式にこだわった男のFFへの評価!


それ以後、拓海の弟子である夏向を見る目が変わったかのように、そのドライビングテクニックについて解説し始める。

86がアルファロメオ4Cをかわしたシーンでは、「4つのタイヤを総動員して減速をするテクニックは驚嘆に値します!!」と声を上げ、ロータス エキシージをパスしたシーンでは、「われわれのように長くレースをやってきた者のセオリーからいくと、それはないだろうという所でスパッと行ってしまいます。(中略)何か特別な感覚を持っているとしか思えません!!」と、拓海とのバトルを回顧しているかのような評価を発している。

そして夏向が、ベッケンバウアーとは違う魅力を持つ新時代のドライバーだと認めると、「独特の感性があります‥‥今はまだ荒けずりのところも散見しますが、その分、成長過程の伸びしろを感じさせてくれます」と発言。まるで夏向に拓海のイメージを重ね合わせたかのような、夏向に対する親心のようなものが感じられなくもない。


レース中、前園が駆るホンダ シビックタイプRに関してコメントしている。「はげしいアップダウンのある公道ステージにおいて、FFは構造的に不利なんですよ。みじかい距離ならば問題はないのですが、レースディスタンスになるとタイヤがもたないんです。上りでも下りでもフロントタイヤに負担が集中するのが前輪駆動ですから‥‥」とかつて自分が公道ランナーだったこと、そして駆動方式にこだわりを持っていた彼らしい発言も聞くことができる。

この次のラウンド2「芦ノ湖GT」では、前園がシビックタイプRから、ミッドシップのNSXに乗り換えることになる。国産ミッドシップのMR2とMR-Sを愛機として、そこにひとかたならぬこだわりを持っていた小柏の、NSXに対するコメントも聞きたかったものである。はたして中年になった小柏は『頭文字D』に出ていた父親に似たのか、今度は容姿とともに再登場を望みたい!


※この記事はベストカーWebの記事を再編集したものです。

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