新人漫画家さんのために、大ヒット作家に「人気作を生む秘訣」をお聞きするこの企画。
三田紀房先生、門馬司先生、小川亮先生という豪華メンバーに登場いただきます!

第3回となる今回は、三田先生から新人漫画家さんに向けて、漫画づくりの際の心構えや、具体的なコツについてお話しいただきました!

このほかのインタビューはこちらから!

三田紀房先生 プロフィール
1958年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学政治経済学部卒業。
代表作に『ドラゴン桜』『インベスターZ』『エンゼルバンク』『クロカン』『砂の栄冠』など。『ドラゴン桜』で2005年第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。


【最終艦】 あなたの人生こそ面白い!! 自分の人生に意味をみろ! ジャンルに囚われるな!


ーーこれまで数多くの作品を作られてきた三田先生ですが、ご自身の人格形成や、漫画作品に影響を与えた人物や小説、ドラマなどを教えてください。

三田
小説・エッセイだと、向田邦子さんの作品、特に『思い出トランプ』です。
短編集なのですが、向田邦子さんの人間を見る目、特に女性の描き方などからの学びは多かったです。

向田邦子さんのエッセイは、日常的なお話が多くて、そこに沢山の人間が登場するんです。そのため、読んでいるうちに沢山の人間を、色々な視点から観察することができるんですよね。

ドラマや小説全般に共通して言えることなのですが、見たり、読んだりすることで、「人間を表現する術」を学べると思うんですよ。
これを繰り返して行くうちに、自分なりのキャラクターが生まれてくる。

ぜひ皆さんも、色々な作品に触れてみてください。


※向田邦子(むこうだくにこ)(1929―1981)
 放送作家、小説家。『寺内貫太郎一家』『阿修羅のごとく』などのテレビドラマの脚本家として知られる。そのほか、鋭い人間観察によって人々を描いた『父の詫び状』  などの随筆も有名。

ーー これまでの経験から、漫画を描く上で「これはするな」ということはありますか。

三田
「するな」とは言いませんが、流行っているジャンルに自分のスタイルを合わせて、そこから何かを生み出そうとする作業はやめた方がいいんじゃないかなと思います。

つまり、ジャンルから考え始めてはいけない、ということですね。
「小さなことから考える」。これが作品を作る上で大切だと思います。

例えば「戦争ものをやろう」と考え始めると、ジャンルとして大きすぎるから取っ掛かりがないんですよね。
まずどこかにフックをかけて、そこから話を広げることが大事だと思います。

ーー前回のインタビューでお話しいただいた「戦艦大和」や「数学」が「取っ掛かり」ということですね。

三田
そうです。『アルキメデスの大戦』も、最初は「新国立競技場」という戦争とは違うところから始まりました。
この「新国立競技場」というフックがあったからこそ、そのあとの話の展開にも色々と繋げることができたんですね。
これが「小さなことから考える」ということです。

ーー新人の漫画家さんは、連載の前に、まず賞に応募するために読み切りを描くことが多いと思います。こういった読み切りなどの、短い話を作るときのコツはありますか。

三田
とにかく新しいものを作ることです。これは個人個人の思う「新しさ」でいいです。

特に新人漫画家さんは、これまで自分が生きてきたことの価値に気づいていないことが多いんです。

これはしょうがないんだけど、皆自分が生きてきた人生が当たり前でつまらないと思ってることが多い。でも実際に自分の人生を漫画にすると、それは読者にとって当たり前じゃない、新しいストーリーになるはずなんです。

きっと自分が思ってるよりも全然普通じゃないし、面白い。
難しく考えないで、リラックスして描いたらいいと思いますよ。

最近だと『スキップとローファー』がいい例だと思います。
あの作品も、元になったのは自分の体験だそうです。そういう方が面白くなるし、ヒットすると思いますよ。

自分の生きてきた人生の価値を認めて、それを商品化するぞ、と決めれば、
空想と想像だけで描くよりも、漫画家の道っていうのはひらけていくと私は思います。

皆さん、頑張ってください!

ーー三田先生、最終回も貴重なご意見ありがとうございました!
 次回は『満州アヘンスクワッド』の原作者、門馬司先生に登場していただきます! お楽しみに!!

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