『彼岸島』シリーズ1000万部突破を記念して、現在『彼岸島 48日後…』を連載中の松本光司と、ヤンマガWebとコミックDAYSにて『彼岸島』公式スピンオフ『彼、岸島』を連載する佐世保太郎による全4回の対談企画が実現!

最終回となる第4回は『彼岸島』シリーズのこれまでとこれからに迫ります! 連載19年というロングランとなったのには、節目節目のめぐり合わせがあったのです! そして、松本光司が『彼岸島』シリーズ最終回を、語る…!?

何故か最終回を迎えられない『彼岸島』

佐世保太郎
僕は『彼、岸島』をできれば『彼岸島 最後の47日間』のラストまでは追っていきたいというのはあります。ただ、人気がなくなったら終わってしまうので、今は一話一話作るのに必死です。
松本先生は最終回の構想はすでにありますか?
松本光司
なくはないけど、確定はしてないです。雅と決着をつけることは多分決まってるけど、それ以外は流れによりますかね。
実は昔に何度か終わらせようと考えたことはあるんですよ。でも何故か終われないんですよね。
佐世保太郎
どういうことですか?
松本光司
『彼岸島』がそろそろ終わりに向かおうかとしているときに、映画化のオファーがきたんですよ。「映画の劇場公開が終わるまで、もしくはDVDなどのソフト化まで、できれば連載を続けてほしい」と言われまして。現役の連載作品の方が宣伝になるということでしょうね。こっちとしては映画化自体嬉しいし、ありがたいので「わかりました、頑張ります」と。2、3年は続けることになったんですね。
松本光司
で、映画の件が終わり、そろそろ終わりだねといったあたりで、当時の担当編集から「ここからラストに向けて、大きく盛り上げて、最後の花火を打ち上げましょう! タイトルを一新して続編を1巻から描いたらどうでしょうか?」と提案されたんです。
「どういうこと?」って思ったんですけど、単純に彼岸島の巻数が増えてきたので、書店に全巻置いてもらえなくなってきたんですね。1巻の置いてない作品は、新規の読者が増えないんです。なので新しいタイトルにして1巻から置いてもらおうという商業的目論見込みでの「最後の花火」だったみたいです。
ただ、僕は「読者が混乱するから嫌だ」と反対しました。
佐世保太郎
反対したんですね。けど、最終的にタイトルを変えたのはどうしてですか?
松本光司
自分としては、当時の明のキャラクターに限界を感じていました。今の明を当たり前に知っている人からするとピンとこないと思うのですが、連載開始からずっと明目線で描いてきたので、読者の目線と同じになりすぎていて、本人のキャラクターがあまり立たないんです。
漫画の中で「こんな凄い10代いないよ!」みたいに明を引いた目線で見ることがほとんどできなかったので、その頃は師匠や兄貴の方が魅力的に映っていたと思います。
佐世保太郎
そうなんですか?
松本光司
本当は明はとんでもない奴のはずなのに、それを伝える術がなくて表現できないまま、連載を終えてしまうのはとても残念でした。
明の魅力を伝えられる、普通の少年を出したい。そしてしばらくは彼の目線で明を見せられないだろうか?
その新キャラを面白く導入できる方法、それが編集のすすめる「タイトルを変えて1巻からという話」だったんです。
佐世保太郎
なるほど、ここで!
松本光司
タイトルが代わって、違うキャラが本土から流れ着き、彼がしばらく主人公でいたら「明たちどうなったの?」っていう疑問が、いい感じの引きになる。そうすれば、明に出会ったときにとても嬉しくて頼もしいはずだと。
松本光司
それで、主人公を変えて良いならタイトルを変える話やりましょうって言いました。
佐世保太郎
編集者さんの反応はどうでした?
松本光司
「松本さんは"売るためです"って言っても全然乗ってこないけど、作品が面白くなるって思ったらすぐ動くんですね」って愚痴ってました(笑)。
タイトルは色々悩んだのですが、終わりがけで急に長い話になると読者がゲンナリしちゃうから、期限を決めようってことで『彼岸島 最後の47日間』と、終わりを匂わすサブタイトルを付けました。
佐世保太郎
どうして「47」という数字にしたんですか?
松本光司
深い理由はないんですけど、30日だとなんとなく短いし、1ヶ月半くらいがいいねってことで、最初は48日位かなってなったんですよ。
佐世保太郎
はい。
松本光司
ただ、ちょうどそのとき、AKB48が日本を席巻していまして、このタイミングで48は便乗したみたいで恥ずかしいから1日減らそうって(笑)。それで「47日」にしたんです。
佐世保太郎
わかります(笑)。
松本光司
結局タイトルを変えて仕切りなおしたおかげで結構長くなったのですが、今度こそ終わらせようと、寂しいけど決めていました。
で、『最後の47日間』の終わり間際、これから雅の島に行って最終決戦、という旅立ちのときに、ラストのコマで「最後の長い1日が始まる」というネームを出したんですよ。自分としては本当にあと一日なんだと覚悟決めた瞬間でした。
松本光司
けれど、それを受け取った編集から気まずそうに「ドラマ化が決定しまして、その最終話が映画にもなります。あと3年は続けてほしいのですが…」って言われまして(笑)。
佐世保太郎
あと1日って言ってるのに3年ですか(笑)。
松本光司
ものすごくありがたい話だし、「描いてほしい」なんて、ほんとに嬉しいお願いじゃないですか。なんとかしたいと思って、その最後の1日の話を何話も描きながら、どうしようかを必死で考えたんですね。
パターンとしては2つありまして、1つは雅とは決着をつけ、しっかり完結した上で「別の場所に邪鬼が出て、明が倒しにいく」という残党狩りのスピンオフ。もう一つは明たちは失敗して本土が感染、明がケリを付けに本土に来るという本土決戦もの。どっちするかはずっと悩みました。

彼岸島の舞台を本土に移したのは、より面白いものを描くため


松本光司
正直、舞台を本土に移すのは自信がなかったです。今までは島がどこにあるのかわからないように描いていて、日本にあるとは言っているけど、ちょっとした別世界、ファンタジーだったんです。
けど、本土決戦となると土地や時代設定などでリアルさが求められるから、今の彼岸島の世界観と合体したときに急に興ざめしてしまうかもしれない。はたして自分には読者を面白く誘導できる力量があるだろうか?と不安でしょうがなかったんですよ。
松本光司
ただ、スピンオフはなんとなくどんな漫画になるか想像つくけど、本土決戦はどうなるか全く想像できないので、やりがいは本土の方があるとも思っていました。うまくいったらこっちのほうが絶対面白いし、自分が全力で描いた本土決戦は、ちょっと自分でも見てみたかったんです。結局悩みに悩んで、面白い『最後の47日』の終わりと、もっと面白い本土編の始まりが思いついたらそっちで行こうと決めました。
佐世保太郎
面白い終わりと、面白い始まりですか?
松本光司
はい。結局、雷門の前に立つ雅の勝利で終わり、本土決戦は片腕を刀にした明で始まるという2つを思いついたので、思い切って本土に来ることにしました。
佐世保太郎
『彼岸島 48日後…』ですよね。前回避けた「48」という数字にしたのはどうしてなんですか?
松本光司
前のタイトルが『彼岸島 最後の47日間』なので、なんとか続編だとわかるタイトルにしたくて、1を足したんです(笑)。とにかく最後のって入れちゃったから順番を誤解しやすいんですよ。本当は最後の47日間の後だから、47日後なんですよね。ただ数字を増やした方が続きっぽいかと。苦肉の策ですよね。
佐世保太郎
『彼岸島 48日後…』はもう28巻まで出ていますよね。『彼岸島』を超えそうじゃないですか?
松本光司
そうですよね。描いていて、思ってたより東京は広いなって思いましたよ(笑)。
佐世保太郎
まだまだ最終回は迎えないということで。いちファンとして安心しました。
松本光司
今すぐではないにせよ、もちろん終わりはありますよ。悲しいですけど。
ヤンマガWebで4週にわたり連続掲載した松本光司×佐世保太郎のスペシャル対談もこれにておしまい! でも…! 漫画はこれからも続きます! これからの『彼岸島 48日後…』『彼、岸島』の応援をどうぞよろしくお願いいたします!

★松本光司、佐世保太郎から読者のみなさまへのメッセージ

松本光司
ここまで来れたのも読者のみなさんのおかげなので、まずは感謝を伝えたいです。ありがとうざいます。
これからも全力で頑張っていきますので、よろしくお願いします!
未読の方も、読んで見てください。多分楽しめると思いますよ。
佐世保太郎
毎週『彼岸島』を追っているファンの方はもちろん、昔は読んでたけど今は遠ざかっている人もいらっしゃると思うので、そういう人にぜひ読んでほしいなと思っています。そしてできれば笑っていただいて、さらにコミックDAYSでいいねを押していただけたら嬉しいです。

★佐世保太郎、松本光司に帯コメントを依頼!!

佐世保太郎
実は3月5日(金)に第1巻が発売されるんです。(※現在は絶賛発売中!)
ぜひ松本先生に帯コメントをいただけたら嬉しいなと。
松本光司
もちろんいいですよ。先に言われてたのでなんとなく考えていたんですけど、パロディなのでまるで非公認扱いのような否定的なコメントのが面白いかなって思っていて。
松本光司
けど、うちの読者の反応を気にしているみたいなので悩みますね。肯定的な方が良いかな?
佐世保太郎
否定的なコメントだとどんな感じでしょうか?
松本光司
ちょっと優しめで「明や篤がこんなに悪人だったとは!!」みたいなのとか。
佐世保太郎
見方を変えればそうですよね。"大戦犯"ってツッコんでますしね。
松本光司
もっとストレートに「面白いですよ」のがいいですかね。それか文末に「(笑)」を入れるとか…。
佐世保太郎
「明や篤がこんなに悪人だったとは!(笑)」ですね。これなら彼岸島ファンの方に怒られなさそうです。
佐世保太郎
肯定的なコメントだとどんな感じになるでしょうか?
松本光司
「腹を抱えて笑いました、ぜひ読んでください」くらいですか。おざなりですが。
あ、否定的なコメントと繋げてもいいけどね。そしたら文末の「(笑)」はいらないかな。
松本光司
「明や篤がこんなに悪人だったとは!!腹を抱えて笑いました」
どうでしょう?
佐世保太郎
めちゃくちゃ嬉しいです!ありがとうございます!

★ヤンマガ編集部員からのPRタイム!

 
T中(『彼岸島 48日後…』担当編集。『彼岸島』を連載当初から担当する)
『彼岸島』
飽きない!常に”今”が面白い!
担当ですら、次の展開が予想できないのがすごい。毎回「こうなるのか!?」と叫んでしまう。そのくらい読者の想像の斜め上にいけるのはすごいなと思います。
一方で、松本先生は何よりも「伝わること」を大事にしています。例えば、最新回を読むときに前のテンションに戻ってほしいから、1〜3ページ使って前回の話をリフレインさせています。そうすると先週の気持ちになれるので、次の話が入ってきやすい。さらに毎回見せ場を作るし、最終シーンの引きも強いから、続きが気になる。だから夢中になるんです。
『彼岸島』は長いシリーズではありますが、先生の中では新作を描くかのように常に新しいアイデアをぶつけているので、ぜひ今まで読んだことがない人も手に取ってみてください。
 
『彼、岸島』
笑える吸血鬼!
吸血鬼もので笑える作品は新しいなと思います。
また、原作の設定にすごく忠実なのがすごい。原作へのリスペクト、愛が感じられます。
その上で佐世先生らしい着眼点でシーンやキャラを選んでくるので、次は何を選ぶんだろう?と毎回楽しみです。

H野(『彼、岸島』担当)
『彼岸島』
読み始めると圧倒的に面白いので、飽きずに読み進めることができます。
人間の汚く醜い部分が吸血鬼になると顕在化して、それと対峙することで「自分だったらどうするか」と迫られているようですごく考えさせられます。
エンタメ的な面白さと、リアルに人間が描かれている面白さ、その二つを兼ね備えた作品です。
 
『彼、岸島』
『彼岸島』のストーリーに佐世先生独自の目線を入れてるので、原作とはまた違った面白さがあると思います。
作中にはしつこいくらい「◯巻参照」と注釈を入れているので、原作ファンの方は該当部分を読み返しながら、『彼、岸島』を楽しんでもらえると嬉しいです。
 
T安(『彼岸島 48日後…』担当編集)
『彼岸島』
長編なので、「今から読むのはな…」と思う方もいるかもしれません。けれど、ストレスなく読めるように松本先生が工夫しているので、読み始めたら本当に止まらないです。
今回無料施策もやるので、これを機に読んでみてください。
 
U井(ヤンマガWeb班員)
『彼岸島』
毎週本当に楽しいです。その1話を読んだだけで興奮できます。毎話、前回までの流れもわかりやすく伝えてくれるし、見せ場もある。だから毎週読んじゃうし、読んだら絶対人に感想を言いたくなる作品です!