『パリピ孔明』アニメ放送直前!
アニメーション監督・本間修 × 原作者・四葉夕ト 特別対談!
アニメーション監督・本間修 × 原作者・四葉夕ト 特別対談!
© 四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会
4月5日(火)より、いよいよ放送開始のTVアニメ『パリピ孔明』。日本を代表するアニメーションスタジオP.A.WORKSが、初めて漫画原作のアニメ制作を担当したということで、マンガ界のみならずアニメ界からもアツい視線が集まっています。
今回は、TVアニメ『パリピ孔明』で監督を務める本間修氏と、原作者・四葉夕卜氏の対談企画が実現。
今明かされるアニメ化までの軌跡とは‥‥?
『パリピ孔明』はアニメ化し甲斐がある作品
――アニメ化決定を聞いた時、四葉さんの心境はいかがでしたか?
四葉:壮大なドッキリなんじゃないかと思いました(笑)。
しかも制作がP.A.WORKSさんだったので、本当にびっくりしましたよ。ただ、アニメ化は原作者として一つの目標にしていたので、こうして夢が叶ってありがたいです。
――本間監督と『パリピ孔明』との出会いを教えてください。
本間:アニメ化をきっかけに読ませていただいたのですが、「すごくカロリーの高い漫画だな」って思いました。登場人物がたくさん出てくるし、音楽モノだけどギャグモノでもある‥。アニメにしたら大変だろうなって思いました。でも、“描きどころ”がすごくしっかりしている作品だったので、アニメ化し甲斐があるなとも思いましたね。
四葉:“描きどころ”ってどのあたりですか?
本間:音楽シーンですね。制作する時は、まず「音楽シーンを魅せるぞ!」という目標を立ててやっていました。これがあればチーム『パリピ孔明』としてズレていくことはないかなって。
ギャグモノと音楽モノをどう両立させるか
――原作を考えるにあたって、ギャグモノ・音楽モノという部分では、その両立についてどのように工夫されていますか?
四葉:孔明がいる時点でもうギャグなんですよね。孔明が渋谷に転生するという設定自体がもうギャグじゃないですか(笑)。なので、孔明自身をふざけさせちゃいけない! って気をつけています。
渋谷にいきなり転生する孔明!
本間:確かに、孔明自体がギャグですよね。でも、決して孔明がふざけているわけじゃない。ここを少しでもずらしてしまうと『三国志』ファンから「え?」って思われてしまうだろうなと。『三国志』はもちろん孔明が好きな人たちから、違和感を持たれないように描くのって本当に大事だなって思います。
四葉:あと、音楽シーンは英子やKABEがいることで、より真剣さが出ているのかなと。それによって、ギャグモノ・音楽モノが両立できているのかも‥‥。反対に孔明がいないとすっごく真面目な音楽モノになってしまいますからね。
――英子やKABEなど、人物描写について意識されていることはありますか?
四葉:一番気にしているのは、各キャラクターの動機です。なんで歌手になろうと思ったのか、ラップをやろうと思ったのか‥‥。そういった過去の設定付けというか、音楽で世界が広がった初期衝動はしっかりと考えるようにしています。
――自己投影したり、共感できるキャラクターはいますか?
四葉:自分が経験してきたことの1割くらいをそれぞれのキャラクターに振り分けているのですが、100%自己投影みたいなキャラクターはいませんね。
本間:ということは、全部を組み合わせると自分になるみたいな‥‥?
四葉:そうならないように、自分とは切り離したキャラクターも出すようにしています。でもそういうキャラクターを考えるのって難しいんですよね。例えば、悪い奴を考えるのが特に苦手で‥‥。これは多分僕が善人だからだと思うんですけど(笑)。
P.A.WORKSが『パリピ孔明』で攻めた! 普段はやらない表現
――本間監督は、ギャグモノ・音楽モノ両方の面を持つ『パリピ孔明』のアニメ化に悪戦苦闘されていたそうですね。
本間:そうなんですよ。ただ、原作のバランスをアニメにもしっかりと落とし込めたら、面白くなるだろうなって。そのために、今回はP.A.WORKSが普段はあまりやらない、コミカルな表現を結構使ったり、色々やらせていただきましたね。
四葉:もしかして孔明がスライディングして動くシーンですか?
本間:そうです! キャラクターの足を動かさずに静止画をスーッってスライドさせたり、漫符を用いた表現は珍しいんですよね。子ども向けアニメだとよく見かける表現だけど、P.A.WORKSではあまりやらないんですよ。だから、この辺りの表現をどこまでやっていくのか、そしてその後にやってくるシリアスな場面との切り替えなど、とにかく原作のバランスからズレないように気を遣いました。
こだわったのは「夜」の色
――アニメならではの印象に残っているシーンはありますか?
四葉:先ほど話したスライディングみたいに、時々リアルじゃない描写が入るから、少し息抜きになるというか‥‥。あと、映像がすごく綺麗でしたね。特に渋谷の高層ビルの屋上で星を眺めるシーンは、本当にあんなに星が見えたら最高なのになって。現実は悲しいですよね(笑)。
本間:渋谷の街やライブシーンは、勝負どころだと思って色々頑張りました。
四葉:あの星空のシーンが綺麗だったからこそ、英子の心のピュアさがよく伝わってくるなと思いました。
本間:ありがとうございます。『パリピ孔明』は、夜の渋谷の街、夜のクラブ、みたいに”夜”が印象的な作品だと思うのですが、同じ夜だからといって全部同じ配色にすると単調になってしまってパリピ感が消えてしまう‥‥。だから、英子に寄り添った夜とか、電飾だらけで煌びやかな夜とか、それぞれの“夜”に合わせて美術さんと試行錯誤しながら仕上げました。特に、1話のラストに登場する、夜だけどキャラクターたちの背後から光が当たっているこの感じを少しでも再現したいと思って何テイクも重ねましたね。
英子と孔明の運命を決定づけた象徴的なシーン。
――四葉さんは、過去に週8で通っていたほどクラブがお好きだそうですが、アニメで描かれるクラブのシーンはいかがでしたか?
四葉:懐かしいなって思うくらいリアルでした。本間監督は実際にクラブへ取材に行かれたんすか?
本間:行ったんですけど、本当はもっと行きたかったですね。ミアが歌うクラブ「Z2O」の外観は、渋谷の「ATOM TOKYO」をモデルにしているんですけど、ちょうど緊急事態宣言が発令されたタイミングだったので営業中は行けず‥‥。なので、外観を撮影させていただいたり、別のクラブですが、営業前に店内を取材させていただきました。営業中のクラブが体験できなかったので、結構苦戦したのですが、懐かしいって感じていただいて良かったです。
――本間監督にとって印象的なシーンはありますか?
本間:強いていうなら先ほど四葉さんも仰っていた9話かな。でも、各話必ず良いと思ってもらえるシーンを入れようと意識したので、全話ですかね(笑)。音楽シーンがない回も、ドラマの面をしっかりと魅せたり、とにかく視聴者さんに楽しんでもらえるようなシーンなりカットを入れようって思いながら作りました。各話にちゃんと見どころがあるので、そこを見てもらえると嬉しいです。
孔明の諭すお経ラップ!? ラップシーンの裏話
――アニメのアフレコ現場や、声優さんの声が入った映像をご覧になって、印象に残ったり、特に思い出深い出来事はありましたか?
四葉:いや、もう本当に声優さんってすごいなぁって。超単純な感想ですけど(笑)。
本間:四葉さんはアフレコ現場でもしっかりと意見を言って下さって、なるほどな! と思うことがたくさんありました。例えば「お酒飲もう!」じゃなくて「お酒いっちゃおう!」とか、細かい言い回しの指摘だったり。パリピっぽい人が少ない現場だったので、とても貴重な意見でしたね。
四葉:声優さんといえば、孔明役の置鮎さんのラップが完全にイメージ通りだったのでびっくりしました。諭すお経ラップみたいな‥。とにかくすごかったです。
本間:ラップは、ほぼ原作そのままの文言なんですよ。だから、アニメ『パリピ孔明』でラップのシーンを観るときは、原作を副読本にすると面白いと思います。ラップがすごくスッと入ってくるんじゃないかなと。あと、ラップのシーンは、字幕をつけるか否かっていう戦いがあったんです(笑)。視聴者は字幕がないと内容が分からなくなってしまうのでは? という心配の声もあったんですけど、やっぱり字幕をつけると物語に集中できなくなってしまうんじゃないかなと。だから、結局字幕はつけない方向で通したんです。
→原作のラプシーンは全て四葉先生の自作で、韻を踏んでいるところが太字になっている。
「『関雲長』と『男優賞』で韻を踏めたときは優勝したと思いました」 by 四葉
四葉:映像がすごく見応えあるので、字幕なしで良かったと思います。なので、内容を詳しく知りたい方は、原作を購入して、アニメを見て、さらにブルーレイを購入していただけると(笑)。
――完璧な流れですね! アニメ『パリピ孔明』、お二人はどんな人に見てもらいたいですか?
四葉:『三国志』を知らない方に見ていただきたいです。それによって『三国志』が世の中に広まる‥‥というのが僕の計画なので。今のところ計画通りに事は進んでいます。
本間:話がうまいなぁ〜! (笑)僕は制作に入る時にこんな作品にしたいなっていうのを一つ考えていたんですけど。例えば、疲れて帰ってきた時に、普段アニメを観ない方とかもアニメ『パリピ孔明』を観て元気を出してくれたら良いなぁって‥‥。これはある程度実現できたと思っているので、堅苦しく考えずにアニメを見て元気を出してくれたら嬉しいです。
四葉:全員に見てほしいですね。
本間:あと、『パリピ孔明』って、”理想のおじさん”がたくさん出てくるなと思っていて。決して恋愛感情はなく、純粋に夢を一緒に支えて応援しくれるおじさんたちに英子は囲まれている。だから、これは”男性の立ち振る舞い”が見られるアニメだなと思いながら作ったんです。年上の男性キャラクターが年下の女性キャラクターに対して、ちゃんとしている作品って意外と少ないよなと。孔明やオーナー・小林さん、バーテンダーたちの立ち振る舞いにも注目してほしいです。
本間修
アニメーション監督。『ウマ娘 プリティーダービー Season2』『色づく世界の明日から』で演出を務める。
四葉夕ト
漫画原作者、作家。『転生大聖女の異世界のんびり紀行』(講談社)『転生七女ではじめる異世界ライフ ~万能魔力があれば貴族社会も余裕で生きられると聞いたのですが?! ~』(KADOKAWA)など。