「講談社コミックプラス」に掲載されたヤンマガ作品のレビューをご紹介!!

『ろこぽん』 原作:雪永ちっち 漫画:なだいにし

ある日突然地球にやってきた、宇宙人ろこぽん。政府が彼に命じたのは、日本でのボランティア活動だった。‥‥表向きは。Web漫画界の天才×新鋭作家の放つ、衝撃のバトルアクション!

「正義の殺し屋」降臨




映画や漫画に出てくる宇宙人って、多くの場合グロくて強い。見た目は怖いし、異常に俊敏。加えてよくわからない毒を吐いたり、めちゃめちゃ優れた聴覚で人間を追い詰めたり。敵意むき出しでコミュニケーションも取れないし、宇宙人=一触即発の人類の敵ってイメージだ。



この漫画『ろこぽん』の主人公は、言葉が話せてケンカが強く、その強さを人間を守る方向に発揮してくれる。そんな宇宙人、今までいそうでいなかった。



彼の名前は「ろこぽん」。ある日突然地球にやってきた。すらっとした体でスーツを着こなし、日本語を理解するが、首から上はゆるキャラだ。完全に謎の生物だけど、知能は高そうだし、コミュニケーションもバッチリ取れる。



政府はろこぽんを防衛省の管理下に置き、市民権を与え、街のパトロールなどのボランティア活動を命じる。皆に愛され、人気者になれそうだが、そうでもない。だってろこぽんは基本的に仕事に対するやる気がないし、ボランティアなんて「行けたら行く(行かない)」とスルーしてばかりなのだ。



ろこぽんが地球に来たのは昨日今日の話ではなく、8年も前。何をしていたかというと、タピオカ飲んで、ゲーセン行って、グアムに行って、要するに政府の金でブラブラしてたんです。宇宙人であるという個性にかまけ、何もアピールしてこなかった‥‥。反省しているところに防衛省のおじさんからの着信が。



ろこぽんに命じられたのは空港の掃除。やる気のないろこぽんがすんなり了解した、この場合の掃除とは‥‥。



毒ガステロを企てていたテロリストたちを殺すこと。宇宙人らしい瞬殺ぶりだ。
ろこぽんの本当の仕事は「宇宙人は殺人罪に問われない」という法の抜け穴を利用した政府雇われの殺し屋なのだ。



「正義の殺し屋」。政府は親しみを込めて、ろこぽんをそう呼ぶのだった。


俺は俺のために、お前を助けただけだ


このとおり、有能だがやる気はなく、スキあらばサボろうとする。そんなろこぽんに、政府がつけたパートナー兼監視役「姫乃メイ」。



5年前、メイが殺されそうになっていたところを、通りがかったろこぽんが偶然助けた。それはろこぽんが殺し屋になることを決定づけてしまった1件だった。



以前はろこぽんの大ファンで、ピュアな新人警官だったメイ。こんなこと言ってたのに



今はこう。5年の間にいろいろあったようで、サクサクと仕事をこなすメイに、昔の頼りない面影はない。



ろこぽんは自分にできない「殺人」だけやってくれればいい‥‥。そんな不遜な態度のメイを5年前と同じように庇い、負傷するろこぽん。動揺するメイにろこぽんは言う。「死なせねーよ」



晴れてバディになったろこぽんとメイ。それは、謀殺課内の連携が強化され、今までより難しい任務も受けられるようになったということ。2人(?)にとっては、ますます苛烈な任務の始まりだった。


無敵 VS 無敵



フレンドリーで優しいのにめっちゃ強い宇宙人が、いざという時には無双しまくるだけの漫画ではないのが『ろこぽん』の面白いところ。ヒーローとしての熱意ややる気はほぼ感じないし、強い相手と戦えば怪我もする(しかも治るのにもまあまあ時間がかかる)。無敵っぽいけど、わりと人間臭いのだ。



そして、裏の世界にろこぽんの存在が知られるのに比例して、差し向けられる刺客もどんどん手ごわいものになる。この刺客たち、宇宙人でもないのにろこぽんよりもよっぽどキモい。そして怖い。



今後くりひろげられるであろう、「無敵(っぽい宇宙人)」VS「無敵(の刺客たち)」の攻防が楽しみだ。
まだ始まったばかりの、ろこぽんの殺し屋稼業奮闘記。行く末まで、目が離せそうにない!


ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
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