伝説のクルママンガ頭文字Dの意思を現代に受け継ぐ新世代のクルママンガ、MFゴースト。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得している。

当連載では、同作品内で繰り広げられる『MFG』で活躍するドライバーや、主人公・片桐夏向の周囲を取り巻く人々など、魅力あふれる登場人物たちの人となりを分析し、そのキャラクターや人物像を明らかにしていく。

第4回は、片桐夏向の前に立ちはだかるライバルのひとりでMFGドライバーの沢渡光輝を紹介したい。トップドライバーとしての卓越したドライビングテクニックとともに、美男子ながら強烈な女性への趣味を持つ沢渡、その真髄はどこにあるのか?

文/安藤修也
マンガ/しげの秀一

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■フランス帰りのプレイボーイ


主人公が戦いを重ねていくうちに、より強い敵が次々に登場してくるというのはバトルマンガの常である。この『MFゴースト』でも、ラウンド1「小田原パイクスピーク」終了後、片桐夏向をはじめとするMFGに参戦ドライバーたちの前に強力なライバルが立ちはだかった。その新たなキャラクターこそ、沢渡光輝である。



彼が強烈な個性を持った人物であることを読者はのちに知ることになるが、その登場シーンも衝撃的だった。MFG初参戦で鮮烈なデビューを飾った片桐夏向が、新たにセッティングをし直した86でターンパイクを練習走行していた際に、86のインをズバッとついてパスしていったアルピーヌ A110。沢渡は、その車内で「にっ」と爽やかな笑顔を見せた。

最初にわかった情報は、この車両のカーナンバーが「4」であること。つまり、前年度のMFGランキングは4位であり、ドライビング能力に関しては筋金入りの実力者である。この登場シーンでも自ら語っているが、過去に3年間フランスでモータースポーツ留学をしていた過去があり、その間に夏向とは何度かレースで邂逅しているという。

その後、ラウンド2の予選2日目、相葉瞬と挨拶を交わす際に、全身をあらわにしているが、長身でスレンダー、足がかなり長く見える。少しウェーブがかった髪を中分けにし、凛々しい眉に長いまつ毛と中性的な顔立ちだ。

ファッションは、細身のパンツにライダースジャケットで決めている。女性ウケしそうな雰囲気たっぷりで、2022年3月現在、唯一、片桐夏向以外で同作の単行本の表紙を飾っている男性キャラクターでもある(第8巻参照)。


■「セブンティーンコンプレックス」とは!?


ルックスがいいだけに性格が気になるところだが、前述のとおり、なかなかに強烈で個性的な男である。

そもそも、開幕戦に出場しなかった理由というのが、その日は彼女の誕生日だったため。MFGの”神フィフティーン”と呼ばれるトップドライバーのひとりでありながら、レースに対する貪欲さ、熱心さ、執着といったものがまったく感じられない。MFGへの参戦理由も小遣い稼ぎだという。



そしてさらに言葉を失ってしまうのが、彼の性的パーソナリティーの部分だ。このシーズンで参戦3年目となる沢渡のことをよく知る、相葉瞬いわく、「17の女しか好きにならないっていう‥‥筋金入りのロリコンなんだ」

‥‥コンプライアンス的にいろいろ問題ありそうだが、沢渡本人はこれを一応否定し、「しいていうなら、セブンティーンコンプレックスです」と、通りのよさそうな言葉で言い換えている(←問題解決にはなってない)。

現在21歳の沢渡は、「17歳女子のポテンシャルをなめたらいけません。やつらは最強です」と説得力ありげに話しているが、そうなった理由もよくわからない。

初恋は小学生の頃で、友人の姉(当時17歳)にひと目ぼれ。中二でできた初めての彼女は、やはり17歳のJK。それ以来17の女性ばかりを好きになり、フランスにいた3年間にも4人の17歳と付き合ったとのこと。

本当はカーナンバーも「4」でなく「17」をつけたいと考えており(笑)、さらに、今付き合っている彼女が18歳になったら「別れます」と断言している。なお、本能的な嗅覚で(素性を隠している)「7番ちゃん」こと西園寺恋のことを、「17か18」と見抜いている。なんというか、ここまでくれば、「恐るべしセブンティーンコンプレックス!」としか言いようがない。


■夏向によって目覚めた闘争心


もちろんカーナンバー「4」は伊達じゃない。「ドラテクはハンパない」「テクニカルステージにはやたらと強い」「潜在能力的にはベッケンバウアーに迫れる唯一の男」と相葉が惜しみなく絶賛するほどのドライビングの腕前を誇り、フランスの名車・アルピーヌ A110を駆る。

ラウンド2「芦ノ湖GT」の予選では、その潜在能力を出し切り、MFG史上初となるまぼろしの(高橋啓介が打ち立てた)コースレコードを破った。この走りは前代未聞のスーパーラップと評されたが、走行後に彼女へ電話して「まだ本気は出してねーけどな」と話しているのだから驚く。



プレイボーイキャラというのは多くのマンガに登場するが、『頭文字D』の主要登場人物にはいなかった。現代的で、ある意味イノセントな、興味深い存在である。しかしその後、ラウンド2、ラウンド3とステージを経ていくごとに、沢渡は変貌を遂げていくことになる。

たとえばラウンド2では、ベッケンバウアーとの一騎打ちで壮絶なバトルを繰り広げた挙句、「なんだかなァ‥‥オレも‥‥ずいぶん変わっちまったもんだぜ‥‥1位にこだわる気持ちがここまであるとはな‥‥!!」と、結果にこだわりを見せる場面が見られ、ベッケンバウアーに負けると、「泣きたいほど‥‥くやしいぜ!!」とも発言。

闘争心が目覚めた理由は、自ら「カナタ・リヴィントン、おまえがいるからさ‥‥」と語っており、「この世の中で一番大事なものが女ではなくなった‥‥。悪く思うなよ沙奈‥‥。これが本当の‥‥オレだからな!!」と、悔しさのような感情を滲ませている。

そして、ラウンド3「ぺニンシェラ」終了後、ベッケンバウアーと夏向に惜しくも敗北して3位でフィニッシュすると、「レースでドッグファイトになった時‥‥勝負所の最後のひと伸びでいつもミハイルにさされてしまう‥‥」「だから‥‥ゴメンな‥‥可愛いクルマと別れる時は、女と別れる時の何倍もつらい‥‥」とA110からのマシン乗り換えも示唆している。

イケメンキャラで女性読者からの人気が高いかと思う反面、セブンティーンコンプレックスなどと言ってるので、硬派な女性ファンには「キモい」と思われるかもしれない。今後のファンの動向は、これからのバトルでの活躍、そして彼のレースへの打ち込み方、変貌次第になるだろう。


※この記事はベストカーWebの記事を再編集したものです。

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