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『ナリキンフットボール』


サッカー漫画といえば、圧倒的才能をもつ大空翼を筆頭にアクロバットな技でも人気を集めた『キャプテン翼』、天才や異能キャラ続出の『ブルーロック』、Jリーグで戦うチームの監督を主人公に、チームそのものに焦点を当てた『GIANT KILLING』など様々な作品が思い浮かびます。

そんな、世の中に数あるサッカー漫画のなかでも、本作の主人公・鼓屋我王(つづみやがおう)は少し異色な存在。点取り屋でもなければ、天才ドリブラーでもない。チームの司令塔として華麗なパスを繰り出すこともありません。日本代表に選ばれるようなテクニックもなし。

本作は、タイトルに「ナリキン」とあるように、サッカーにお金の要素を散りばめた作品でもあります。野球で言えば『グラゼニ』が有名ですね。キャラクター登場時も、その名前と所属チーム、そして年俸が紹介されています。



また、異色ついでに言えば、本作の舞台はJ2。サッカー漫画における王道の舞台は高校サッカー、あるいはJ1だと思いますが、我王は物語冒頭で、J1優勝チームから契約満了を言い渡され、J2の北九州モンキーズへと移籍していきます。

3000万円だった我王の年俸も、J2に移籍した結果‥‥



なんだか冴えない主人公‥‥と思ってしまいそうですが、我王にはちゃんと、惹きつけられる魅力がありました。

J1時代、優勝がかかる試合。相手チームには日本屈指のCB(センターバック)・岡田がいて、身長193cmの恵まれた体格と100M走10秒6の俊足で我王が所属する東京レックスの攻撃陣を跳ね返します。我王がふわっと浮かせたパスも、岡田と競ったFWには通らず前半終了。ミスキックとも思えるプレーに周囲はブーイング。



しかし、これはミスキックではなく、我王が取った対岡田対策の戦術だったのです。なぜあんなボコ蹴りをしたのか。その理由を我王は数値を挙げて明確にチームメイトへ説明します。あのボコ蹴りこそが、岡田に勝つための策なのだと。

半信半疑ながら、我王の言う通りプレーすると──!



見かけ上の数字ではなく、その本質を見抜く目。サッカーにおいて必要な情報とは何か。その情報を頭に入れたうえで、何をすれば相手に勝てるのかを考える。我王はいわば、サッカーにおける頭脳の部分を担う存在なのです。

また、こんなエピソードも。J2移籍直後、監督自ら、新入団選手だけを集めた組み分けテストを開催します。J1優勝チームからの移籍ということで周囲からの注目を集めていた我王ですが、体力・運動能力面において凡庸で、チームメイトもあ然。



しかし、J1で対岡田戦術を生み出した我王を知っている私たち読者としては、次のページで描かれる、我王が何かをチェックしているシーンに、少しワクワクしてしまいます。



体力テストの後に行われた、3対3のミニゲーム。我王は、体力テスト最下層の3人チームを組まされます。絶望するふたりをよそに、再び資料を読み込んでいる我王。



そしていざミニゲームが始まると‥‥!



我王が読み込んでいたのは、今回実施した各選手の体力テストと、過去の数値の比較資料でした。トップチーム行きがかかった今回のテスト。自らをアピールするには、苦手種目を捨てて得意種目に全フリするのが常套手段、ということを見抜いた我王は、各選手が過去と比べて数値を落としている種目こそ、その選手の弱点だと判断。そこを突けば勝てる、と踏んだのです。そしてその見立ては正解でした。

このように我王は、様々なデータやスタッツをチェックしてそれぞれの選手の特性を掴み、個々の局面を打開する戦術を駆使してゲームを、そしてチームをコントロールしていきます。この選手なら何かやってくれそう、と期待させてくれる点でも、我王はまさしく主人公。

これまで北九州モンキーズの司令塔として活躍していたベテランの波木成(なみきじょう)選手は、そんな我王をこう評します。



これまでのサッカー漫画界にはあまりいなかった、サッカーの技術はそれほどないが、頭脳は冴えてる主人公。圧倒的プレーや超絶テクを披露することはなくても、どんな戦術や策を使ってJ2で戦っていくのか、ワクワクドキドキさせてくれる、新しいヒーロー像。ド派手なビジュアルや言動にも華があります。

タイトルにある「ナリキン」を考えると、J2で終わるはずもなく。J1優勝チームからJ2中位のチームに流れ着いた我王が、どう成り上がっていくのか期待したいところです。

ちなみに本作の原作・清水海斗先生と漫画・明石英之先生は、それぞれ巻末コメントで過去に味わったサッカーにまつわる後悔を経て、今に至ると語っています。そんな作者たちの想いもこもった『ナリキンフットボール』。お金 × 頭脳 × サッカーの化学反応が描く新しいサッカーの世界に触れることで、現実のサッカーに対する見方や楽しみ方を変えてくれるかもしれません。



レビューアー/ほしのん
中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。



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