「講談社コミックプラス」に掲載されたヤンマガWeb掲載作品のレビューをご紹介!!

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異世界に転生する。この共通フォーマットのもと、スライムに転生して魔族の王様に君臨する話や、チート能力を付与されて異世界で無双する冒険者の話など、これまでに様々な物語が生み出されてきました。

今回、そんな異世界転生シリーズに新たに加わるのは、人間⇒フェンリル(柴犬)転生物語。フェンリルとは、北欧神話における巨大な狼の姿をした怪物のこと。本作では、かつて、ある国を救った神として民に崇められている存在です。

フェンリルに転生、のはずが……


主人公・タロウはブラック企業勤務で身も心もボロボロ。そんなある日、トラックに轢かれそうになった犬(実は狼)を助け、代わりに轢死してしまいます。「これでもう仕事しなくていい」と死を受け入れるタロウですが、女神・リリーによって転生させてもらえることになりました。


狼の命を救ったことで、ただの転生(という表現もアレですが)ではなく、なんと神様への転生が実現。タロウはフェンリルへと姿を変えます。さすが神話の怪物。強くて威厳のあるビジュに、これからの無双が期待できそう。

しかし、リリーのひと言で状況は一変します。


タロウの転生先は、ヴィラルという魔法都市。かつてフェンリルの庇護により栄えた国ですが、フェンリルが亡くなり、他国との戦火の中で滅亡の危機に。ヴィラルの王女・ソフィアは、唯一神フェンリルの力が世界平和をもたらすと信じ、自身を生贄として捧げるため、フェンリル再降臨を待ち続けていました。そんな彼女が待つヴィラルの地へ、フェンリルとなったタロウがついに降臨です!


転生直前、リリーがつぶやいた「あっ この子かわいい!」の言葉が残像となって脳内にこびりついていましたが、その結果が、これ。キュートで愛らしい柴犬として、ヴィラルに爆誕。「こんなただの犬」と酷い言われようですが、救いの神として待ち望まれていたのですから、その気持ちもわかるというもの。タロウにもソフィアにも罪はありません。

従者ソフィアとともに、世界平和を取り戻す!


そもそもソフィアは、身体に高密度な魔力を秘めており、この魔力をフェンリルに捧げるための生贄として、外界から遮断された老いも病気もない魔法の部屋で300年間(!)、フェンリル降臨を待ち続けていました。3世紀待ってようやく会えたのが柴犬。

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「タロウ」という名前とも相まって、柴犬道まっしぐら。ソフィアも、そしてタロウ本人もフェンリルなのか柴犬なのかと半信半疑になりますが、そこにリリーが登場。タロウは正真正銘のフェンリルだと告げ、彼らの不安を一応、取り除いてくれます。

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見た目は柴犬、中身はフェンリル。その名は、唯一神タロウ。

フェンリルが降臨したということは、いよいよソフィアの役目が果たされる……!


タロウの柴犬的フェンリルへの転生騒動から、ヴィラルの王女・ソフィアとの出会い、そして生贄問題まで、物語序盤における怒涛の展開をテンポよく描く、異世界転生ファンタジーならではの構成。「いや食べないけど!?」のようなキレのあるツッコミからもわかるように、随所にコメディがまぶされているので、さらに読みやすくなっています。


元人間のタロウが、異世界とはいえ人間を食べられるはずもなく。こうしてふたりは、主従の契りを交わし、ソフィアの故郷であるヴィラルを再興し世界を平和にするための冒険が始まるのです。

神と世話役の不思議な関係


神様であるタロウと、その世話役になったソフィア。主従の関係を構築したわけですが、本作ではその立場が逆転するようなシーンもちらほら。


モフモフなわんこを永遠に触っていたくなる気持ち、よくわかります。

さらに、タロウとソフィアが、これからお互い協力していこうと意気投合する感動的な場面では――


神様フェンリルと言いつつそのビジュアルが柴犬のせいで生じる、主従逆転の構図。

本作の肝のひとつは、かわいい柴犬風でありながら、その正体は神・フェンリルという主人公タロウのギャップです。さらにこのギャップが生み出す、従者ソフィアとのユニークな関係性も見どころ。

300年の時を経て、滅亡寸前だった国を復活させ世界に平和を取り戻すための大冒険に、ほっこりコメディ要素がいい調味料となって物語の味わいが深まります。

今のヴィラルは、そして世界はどう変わってしまったのか。タロウたちにこの先、どんな出会いが待っているのか。ふたりの、いや、一匹とひとりの冒険から目が離せません!


※こちらの記事は講談社コミックプラス6/29更新の記事を再編集したものです。


レビュアー/ほしのん
中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。
X(旧twitter):@hoshino2009 


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