「ヤンマガWeb」の総合ランキングで1位を獲得するなど、人気急上昇中のマンガ『二度と自撮り送ってやんない!』の第1巻の発売を記念して、作者の竹掛竹や先生にインタビューを実施。"自撮り"をテーマにした経緯や、作品の見どころなどをお伺いしました。


ーー 『二度と自撮り送ってやんない!』がデビュー作にして、いきなり人気を博していますね。

竹掛竹や
いま、一話分が短くて手軽に読める漫画って、人気ありますよね。そこにうまく入り込めたのかなと思います。それに、ツイッターでも作品を読めるようにもしているので、フォロワーの人たちに見てもらえるのは大きいのかもしれません。


ーー 「自撮り」をテーマにするという着想はどこからきたのでしょうか?

竹掛竹や
ツイッターにあげていた絵の中に、お腹のピアス穴を自撮りして見せるというシチュエーションのものがあって、それを見てくださった編集の方が「自撮りってどう?」と言ってくれたのが最初でした。

自撮り関連の絵とか話だと、女の子が男の子に自撮りをいたずらっぽくこっそり見せて、男の子が動揺するのを楽しむというパターンがいちばん多いんです。だから私は逆のかたちにしようと思った。女の子が男の子から「自撮り送って」と言われ、ちょっと動揺しながらつい送ってしまうというシチュエーションをつくろうと考えたんです。


ーー いかにも「ありそう」と思える設定が秀逸ですね。

竹掛竹や
「絵を描く参考にしたいから」とお願いすると自撮りを送ってくれる幼馴染みがいたら、うれしいだろうな……。そういう単純な自分の欲求は、もちろん込められています。

「絵の参考にする」という理由があるから、女の子がモヤモヤしつつ断り切れず送ってしまうという微妙な心理を突けたらいい。だからそう、擬似遠距離恋愛みたいな雰囲気が出せたらいちばんだなと思っているんです。


ーー 「擬似遠距離恋愛的」な雰囲気とは、どういうものだと考えていますか?

竹掛竹や
会えないからそれぞれ妄想が勝手に暴走するというか。たとえばLINEのやりとりなんかでも皆さん経験していると思うんですけど、ちょっと気になる人とLINEをするときの空気って独特じゃないですか?うれしいけど緊張するしドキドキする。顔が見えず文面からあれこれ推測するしかないから、ちょっとした言葉に一喜一憂してしまう。

そういう心理が常に存在する遠距離恋愛のシチュエーションって、皆けっこう好きなはず。現実でやるといろいろ大変だしなかなか長続きしないけど、ああいう空気感はグッとくるんじゃないですか? 



ーー 相手が送ってくる一字一句にドギマギする感じを出すには、文面を見たときの反応が大事になってきそうですよね。そのあたりはどうキャラを動かしていますか?

竹掛竹や
幼馴染みの男女のやりとりが続くわけですけど、文面だけ見ると男の子のほうは何を考えているかわからないような状態にしています。それで女の子のほうはヤキモキするという。現実でも、文面からはニュアンスが伝わらなくてヤキモキすることはよくあるので、その感じをうまく出したいんです。

彼女のキャラは、自分の理想的な「こんな子がいたらかわいいだろうな」というのをそのままかたちにした感じです。男の人が読んで、「ああ、こんな子に自撮り送られたいな」となればいいなと思うし、女の人に「この気持ち、わかるわー」とも思われたい。あと男の人にも、自撮りを送る立場だったらどんな気分だろうと想像してもらえるとうれしいですね。

ふたりは学校で会えば、また違った感じで接するわけです。離れた場所にいて画面上だけでやりとりしているときと、対面しているときのギャップを鮮明に描きたいとはいつも思っていますね。


ーー ヤキモキしながらつい言われるがまま自撮りを送ってしまう日鞠が魅力的です。日鞠の姿かたちはどうつくり上げたのでしょうか?

竹掛竹や
わりと王道なかわいい子にしてあります。ただ、自撮りがテーマなので、鏡に写して自撮りすると左右が反転するじゃないですか。なので、左右反転するとちょっと違いが出る見た目にはしています。髪型だとか。

表情にはかなりこだわっていますね。表情を描き分けていろんな感情を表現するのは自分の強みだと思っているので、そこは勝負どころです。顔の左右で表情を描き分けたりと、かなり細かいことをやってます。

なぜ表情にこだわるようになったか、ですか? もともと好きで読んでいた漫画が、ダークで無機質なものばかりだったんです。鬼頭莫宏先生の『ぼくらの』だったり。ああいう世界観が今も大好きなんですけど、いざ自分が描くとなるとその反動というか、自分は逆の道を進もうという気持ちになったんですよね。


ーー 竹掛先生はツイッターのフォロワー数もかなり多いと思いますが、その存在は励みになりますか?

竹掛竹や
そうですね、何かしら反応があるというのはうれしいものです。私のアカウントって、リプライをもらえる割合がかなり高いんです。感想をダイレクトにもらえると励みになるし、フィードバックにも利用させてもらっています。体感レベルですけど、皆さんの意見を統計し分析して、作品に反映させています。


ーー 読者の意見はどのように作品へ取り入れていますか?

竹掛竹や
たとえば第2話の最後に、主人公の日鞠の「私ってチョロい?」というセリフがあります。これを言わせることで、そうかこのキャラって「チョロいタイプ」なんだと読者に印象付けたかった。そのように、こちらが意図したキャライメージがうまく読者に浸透したかどうかを測るには、ツイッターのリプライを活用します。リプライのリアクションを見て浸透していないなと感じたら、また別の描き方を練り直す必要がありますから。

幸い「私ってチョロい?」というセリフを出したときは、うまく浸透してくれたみたいでうれしかったです。


ーー 「ヤンマガWeb」の連載では縦スクロールのフォーマットを採用していますね。読みやすさ、描きやすさについてはどう感じていますか?

竹掛竹や
この作品では、LINEのようなチャットアプリでの会話が重要なモチーフ。というかそこでの会話自体がストーリーのベースになっています。チャットアプリ自体が縦にスクロールして見ていくものですから、それを漫画で表現するときも当然縦スクロール型がしっくりきますよね。縦スクロールと今作の相性は間違いなくいい。

縦スクロールって、縦長の絵の見栄えがよくなりますね。私は作中でキャラの身体まで見せる大ゴマをよく描くので、もともと縦長のコマを多用するほう。自分の表現は縦スクロールに合っていると思います。


ーー ほかに、縦スクロールで作品をつくるときに注意している点はありますか?

竹掛竹や
読者の視線誘導には気を使っています。紙の誌面だと、左下にある見開きページの最後のコマを読んだら、ページをめくって、視線は右上に移りますよね。それが縦スクだと、左下からスクロールして右下へと視線が移る、というように、視線誘導のための目の置きどころがちょっと変化します。でもそれで描きにくくて苦労する、というようなことはないです。


ーー そもそも竹掛先生はなぜ漫画の道へ進んだのでしょうか?

竹掛竹や
大学生のとき、なかなか夢中になれるものを見出せなくて、何でもいいから新しいことをしたい!という気持ちが強くありました。絵を描くのは好きだったので、あるとき漫画描いてみようと思い立ち、作品をひとつ完成させてみました。

描いたら持ち込みというものをするものらしい、とどこかで聞きかじったので、漫画誌の編集部へいくつか持ち込んでみました。すると当然ですけど、まったく評価されず、あれこれ指摘を受けました。あまりにボロボロに言われたので、「だったらもっとおもしろいもの描いてやる!」と逆に火がついて、描き続けることになったというのが本当のところです。

3年ほど前にツイッターを始めて、そこで絵や漫画に対するリアルな反応をもらえるようになったのは、大きいモチベーションになっていますね。いつも読んで感想をくれる人たちに、すこしずつでも何か創作を通してお返しができればいいなと思っています。


ーー これからどんな作品をつくっていきたいですか?

竹掛竹や
『二度と自撮り送ってやんない!』では、ふたりの関係が進むにつれて、自撮りがどう変わっていくかをしっかり描いていきたいですね。関係が深まると、これまで通りに自撮りのやりとりができなくなるかもしれないし、または自撮りの中身がもっと過激になっていくかもしれない。

どうなってしまうんだろう?と自分でも楽しみにしながら描いていきたいです。ラブコメって、距離が近くなっていくその過程こそ楽しいものですから

ツイッターの中の意見ですけど、私は「フェチを描くのがうまい」と言ってもらえることが多い。「お前の絵のせいで、こんな性癖ができちゃったぞ」などと(笑)。ありがたい意見です。自分としてもフェチは意識したいですし、人の特殊な性癖を目覚めさせるような作品が描けたらいいなと思います。
 
ツイッター上で触れる皆さんの言葉には本当に深く影響されるので、ぜひどんなことでも書き込んでもらえたら。そう、「女の子に自撮りを送ってもらうようお願いしてみた」といった体験談も知りたいです。漫画を参考にして行動してみた人がいたらぜひ教えてください。まあそれで女の子とうまくいかなくなっても、責任は負えないですけど(笑)。



『二度と自撮り送ってやんない!』第1巻は本日3月18日発売!


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