集いし絵描き共に 大暮維人氏唸る―!!
大賞〈100万円〉
『夢のおしまい』
宮村 希(埼玉県・22歳)49P

大暮維人氏選評
「2Pからでも応募が可能」という本賞にあって、よもや49Pの大作が送られてくるとは誰が予想したでしょうか。まず、断っておきます。審査に内容の面白さは一切考慮していないことを誓います。ただし、この作品だけは評価基準が他の作品とは全く違うことは事実です。宮村氏の戦略と画力の「質」は、他の応募者とは一線を画しています。普通であれば、短いページ数で一コマにかけるカロリーを集約させようと考えるでしょう。しかし氏は、作品全体の空間バランス、密度の強弱、ペース配分、そしてスタミナ勝負で戦いを挑んできました。100メートル走の競技に、フルマラソンの選手が飛び入り参加してきたようなインパクトです。そして氏の画力は極めて安定しています。派手さはありません。正直、地味、と感じる人も多いでしょう。しかし、継続は力です。漫画において、その力は時に何よりも重要なものです。数コマ、数ページうまく描ける人間はたくさんいます。しかし、それを何十ページ、そして何年、何十年と続けられる人間は、極めて少数です。氏の持つ安定感と基礎能力の高さ、そして絵に滲む「描いてきた時間」は、他作品の鋭さ、瞬発力を絵の積力で圧倒し、巨大な継続力の潜在性を十二分に示しました。イラストではなく漫画の賞なのですから、氏はその特性を活かした最も強く賢い戦い方を選び、自分もまた、その評価基準で大賞に選びます。
こちらの作品はヤンマガWebで掲載中です!

大暮維人氏選評
「2Pからでも応募が可能」という本賞にあって、よもや49Pの大作が送られてくるとは誰が予想したでしょうか。まず、断っておきます。審査に内容の面白さは一切考慮していないことを誓います。ただし、この作品だけは評価基準が他の作品とは全く違うことは事実です。宮村氏の戦略と画力の「質」は、他の応募者とは一線を画しています。普通であれば、短いページ数で一コマにかけるカロリーを集約させようと考えるでしょう。しかし氏は、作品全体の空間バランス、密度の強弱、ペース配分、そしてスタミナ勝負で戦いを挑んできました。100メートル走の競技に、フルマラソンの選手が飛び入り参加してきたようなインパクトです。そして氏の画力は極めて安定しています。派手さはありません。正直、地味、と感じる人も多いでしょう。しかし、継続は力です。漫画において、その力は時に何よりも重要なものです。数コマ、数ページうまく描ける人間はたくさんいます。しかし、それを何十ページ、そして何年、何十年と続けられる人間は、極めて少数です。氏の持つ安定感と基礎能力の高さ、そして絵に滲む「描いてきた時間」は、他作品の鋭さ、瞬発力を絵の積力で圧倒し、巨大な継続力の潜在性を十二分に示しました。イラストではなく漫画の賞なのですから、氏はその特性を活かした最も強く賢い戦い方を選び、自分もまた、その評価基準で大賞に選びます。
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準大賞〈50万円〉
『拷問師』
幸野健士郎(愛媛県・22歳)4P

大暮維人氏選評
わずか4Pながら、その画力と尖り具合は群を抜いています。この賞のコンセプトに沿えば本来の大賞は本作であるべきだとも思います。実際、最後まで悩みましたが順位はつけねばならず、惜しくも次点となりました。絵の鋭さと、端々に感じる執念にも似た緻密な作業は、本作の一番の魅力です。これは一朝一夕にできる画面構成ではなく、常日頃からこうした繊細な作業をしていることは、絵が雄弁に物語っています。構図、人間ピアノのアイデア、一瞬の爆発力、全てに文句のつけようがありません。もし、この賞の審査基準に「内容の面白さも含める」とあれば、大賞に選びました。ここまで言ってしまうと、ではなぜ大賞ではなかったのかと納得がいかないかもしれないので、その理由も書いておきます。一つはパースの問題です。キャラクターと床のタイルは、構図やキャラとの距離で大きく変化しますが、その角度、一枚の大きさ、向き、いずれもその比率や方向が合っていません。2ページ目のタイルは、右上に行くほど頭とは距離が離れるので、逆に小さくならねばなりませんので曲パースにするべきですし、最終コマのタイルは一枚がもっと大きくあるべきです。そんな重箱の隅をつつくような…と思うかもしれませんが、そのパース感覚はこうした画面構成においてはかなり重要で、それが場の空気を作りますし、空間把握力はイコール画力だからです。もう一つ、「絵の緻密さが魅力」と言った端からアレですが、細部の雑さは気になりました。カミソリで皮膚を削る最初のコマは、一見、何が行われているか把握が難しかったです。削がれていく皮膚のシワ、抉られた皮の内側、金属の質感、食い込む刃の冷たい痛々しさ、あるいは拷問師の指など、それらの質感表現や生々しさが足りず、トーンによる色付けの雰囲気で逃げているように感じられました。そして手は、人の持つもう一つの顔です。1P目はその手こそが表情であるにもかかわらず、その表情が薄く硬いです。ただ、これらはあくまでも賞の順位をつけねばならない故の高い水準での要求であって、力量は十二分だと思います。
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大暮維人氏選評
わずか4Pながら、その画力と尖り具合は群を抜いています。この賞のコンセプトに沿えば本来の大賞は本作であるべきだとも思います。実際、最後まで悩みましたが順位はつけねばならず、惜しくも次点となりました。絵の鋭さと、端々に感じる執念にも似た緻密な作業は、本作の一番の魅力です。これは一朝一夕にできる画面構成ではなく、常日頃からこうした繊細な作業をしていることは、絵が雄弁に物語っています。構図、人間ピアノのアイデア、一瞬の爆発力、全てに文句のつけようがありません。もし、この賞の審査基準に「内容の面白さも含める」とあれば、大賞に選びました。ここまで言ってしまうと、ではなぜ大賞ではなかったのかと納得がいかないかもしれないので、その理由も書いておきます。一つはパースの問題です。キャラクターと床のタイルは、構図やキャラとの距離で大きく変化しますが、その角度、一枚の大きさ、向き、いずれもその比率や方向が合っていません。2ページ目のタイルは、右上に行くほど頭とは距離が離れるので、逆に小さくならねばなりませんので曲パースにするべきですし、最終コマのタイルは一枚がもっと大きくあるべきです。そんな重箱の隅をつつくような…と思うかもしれませんが、そのパース感覚はこうした画面構成においてはかなり重要で、それが場の空気を作りますし、空間把握力はイコール画力だからです。もう一つ、「絵の緻密さが魅力」と言った端からアレですが、細部の雑さは気になりました。カミソリで皮膚を削る最初のコマは、一見、何が行われているか把握が難しかったです。削がれていく皮膚のシワ、抉られた皮の内側、金属の質感、食い込む刃の冷たい痛々しさ、あるいは拷問師の指など、それらの質感表現や生々しさが足りず、トーンによる色付けの雰囲気で逃げているように感じられました。そして手は、人の持つもう一つの顔です。1P目はその手こそが表情であるにもかかわらず、その表情が薄く硬いです。ただ、これらはあくまでも賞の順位をつけねばならない故の高い水準での要求であって、力量は十二分だと思います。
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佳作〈30万円〉
『告白』
筬之イズル(愛知県・23歳)6P

大暮維人氏選評
女性が可愛く、丁寧で、魅力的です。人間を魅力的に描く能力は掛け値なしに才能であり、それが男であれ女であれ、性別に関わらず漫画において最も重要なことです。応募作の中で人間が最も魅力的に描かれていたのが本作で、作者もまた、そうした強い意志を持って描いてることが十分に伝わります。そして、映画的な構図や難しいことにチャレンジしようとする意気込みが感じられます。全体的にもっと丁寧さと描き込み量(特にオチにかかる後半部分)があれば、作品全体を通しバランスの取れた構成となってインパクトのある作品に仕上がっていたと思います。
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大暮維人氏選評
女性が可愛く、丁寧で、魅力的です。人間を魅力的に描く能力は掛け値なしに才能であり、それが男であれ女であれ、性別に関わらず漫画において最も重要なことです。応募作の中で人間が最も魅力的に描かれていたのが本作で、作者もまた、そうした強い意志を持って描いてることが十分に伝わります。そして、映画的な構図や難しいことにチャレンジしようとする意気込みが感じられます。全体的にもっと丁寧さと描き込み量(特にオチにかかる後半部分)があれば、作品全体を通しバランスの取れた構成となってインパクトのある作品に仕上がっていたと思います。
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審査員特別賞〈10万円〉
『殻軋む日々』
ぞえあみ(大阪府・27歳)11P

大暮維人氏選評
もし、本賞が「大暮の一番好きな絵を選ぶ賞」なら、ぶっちぎりの一位でした。絵の雰囲気やダイナミックな構図、空気の厚み、奥行き、世界観、生き物や衣装のデザインなど、素晴らしく好みです。惜しむらくは「こだわり」の物足りなさです。こうした絵の生命線は、作者の持つ独自の世界観の構築能力と、細部にまで行き届くその執着心です。例えば防護服は、もっとこの世界観にのみある特別で印象的なギミックが必要なのでは…とか、『銃夢』や『マシーネンクリーガー』のような実用性、実践的なディテールが必要だったのかも…とか。そのこだわりこそが読者へのフックになり、より強い作品の魅力となりますから。
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大暮維人氏選評
もし、本賞が「大暮の一番好きな絵を選ぶ賞」なら、ぶっちぎりの一位でした。絵の雰囲気やダイナミックな構図、空気の厚み、奥行き、世界観、生き物や衣装のデザインなど、素晴らしく好みです。惜しむらくは「こだわり」の物足りなさです。こうした絵の生命線は、作者の持つ独自の世界観の構築能力と、細部にまで行き届くその執着心です。例えば防護服は、もっとこの世界観にのみある特別で印象的なギミックが必要なのでは…とか、『銃夢』や『マシーネンクリーガー』のような実用性、実践的なディテールが必要だったのかも…とか。そのこだわりこそが読者へのフックになり、より強い作品の魅力となりますから。
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期待賞〈3万円〉
『毒舌な女の子』
期待賞〈3万円〉
『煩悩監獄』
期待賞〈3万円〉
『何も語らぬ人々』
期待賞〈3万円〉
『こんな子あんな娘』
大暮維人氏総評
漫画の絵は物語と不可分であり、切り分けて評価するのは難しい。作品によって「最適な絵」は違い、極論「丸書いてチョン」の絵が最適解、最もいい絵である場合すらあるからで、正解というものがありません。そこで今回の審査にあたり、一つの基準を設けました。「武器は何か」です。上手な絵を描ける人はたくさんいます。しかしその中から頭角を表すには、その人だけが持つ、他を圧倒する「何か」が必要です。それが技術なのかセンスなのか、個人の特性と戦い方によって手にする物は人それぞれです。『夢のおしまい』はハンマーのような圧倒的スタミナと積量。『拷問師』はカミソリのような切れ味のセンスと技術。『告白』は矢のような「人物の魅力」でロングレンジの射程。『殻軋む日々』はニッチながら鉤爪のように「好きな人には深く刺さる絵柄と画面構築」。それぞれに素晴らしい武器のある作品を選ばせていただきました。とても楽しかったです。



