『ギャングキング』完結記念!柳内大樹インタビュー! 


発行部数は1200万部で、連載期間は17年! 2003年に『ヤングキング』で発表されて、『マガジンSPECIAL』『別冊少年マガジン』、そして『イブニング』と掲載誌を変えながら続いてきた人気コミック『ギャングキング』。5月21日に最終巻となる単行本37巻が発売された記念して柳内先生にインタビューを実施! 幻の最終回や作品誕生秘話、そして、次回作についてまでたくさんきいてきましたゾ!!


最終回は泣きながら描きまくってました


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『ギャングキング』の連載、お疲れ様でした。最終回はキャラクターたちみんなの表情が切り取られていて、描かれていても感慨深かったんじゃないですか?
柳内大樹
自分でも泣いていましたね。他の作品でもそうで、めちゃくちゃ感情を込めるタイプなのでしょっちゅう泣くんですが(笑)、今回は特に泣きながら描きまくってました。それもよし悪しで、実は力を抜いたほうがいいものが描けるのかなって思うんです。剣豪も剣をゆらゆら揺らしながら力を抜いて構えてるじゃないですか。ああいう心持ちでやりたいと普段から思っているんですが、これで終わりなんだと思うとよけいガッチガチでした。
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それだけ気合が入ったってことですね。最終回のイメージは早い段階から決まっていたんでしょうか?
柳内大樹
実は始まった頃から、最終回は決めていたんですよ。癖なんでしょうね。作品を描くときに、終わりはどんな感じになるのかまず考えるんです。それがもっと面白くなるに越したことはないので、変わるなら変わるでいいと思っていたら‥‥あっさり変わりました(笑)。
柳内大樹
ぶっちゃけて言えば、アメリカに行ったジミーで終わらせたかったんですが、僕のやりたいことと読者さんが求めていることの中で、「最後こそ読者の皆さんが求めてるような終わり方がいいんじゃないか」と編集長に言われて。それですでに作っていたネームも全部捨てて、あの最終回にしました。子供っぽくて青春丸だしみたいな感じの終わり方なんですが、それが『ギャングキング』っぽさなのかなと思って、自分でもすごく納得できましたね。

最終回より

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幻の最終回にはどんな案があったんでしょうか!?
柳内大樹
自分でも頭おかしいんじゃないかと思うんですが、恨まれているピンコがガソリンを掛けられて、火を点けられようとしていたところを自分からタバコを銜(くわ)えて燃えながら歩いていく‥‥っていう案も考えていて(笑)。それはファンの友達にも絶対やめたほうがいいって言われて、やめましたね。僕としてそんな終わりもカッコいいかなと思ったんですが、変えて良かったです(笑)。
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タイトルは編集部に行く電車で決めました


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それはそれでカッコ良くて、見てみたかった気もします! さかのぼって、もともと『ギャングキング』のアイデアはどのように誕生したんでしょうか?
柳内大樹
ずっと描きたいと思っていた作品が他にあって、それは『SEVEN☆STAR MEN SOUL』なんですが、いろんな雑誌に企画の持ち込みをしていたんです。その中で『ヤングキング』さんが、「これはちょっと難しいですが、代わりに何かありますか?」と聞いてくれて、そのときに入れ墨の高校生の話をしたんですよ。編集部に行く途中の電車に入れ墨の高校生がいて、僕が高校のときも自分で入れ墨を入れてるヤツがいたなぁと思って、それを話しただけなんですけどね。そうしたら担当さんがえらい食いついてくれて、とんとん拍子で決まったんです。
柳内大樹
僕、電車で結構閃くんですよ。タイトルを決める会議のときも、行きの電車で「『ヤングキング』かぁ。じゃあ『ギャングキング』だ」って、半分ダジャレみたいなものですよね(笑)。初めはそのタイトルも反対されたんですが、今となってはいいタイトルだったのかなって。
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入れ墨に象徴されるようなアウトローの作品で若者が主人公となると、無鉄砲で無軌道なキャラクターとなりそうですが、ジミーは一本気で真面目なんですよね。
柳内大樹
明るくてカッコいい主役を描けばいいんですが、ウジウジしてるでしょ?(笑) それは僕がウジウジしてるからなんですよね。自分で言うのも何ですが、根っこが真面目なんです。『ギャングキング』のシステムとして初めに考えたのが、真面目なヤツほど強くしてみようということだったんですよ。入れ墨っていう無茶なことはしているけれど、誰よりも真面目なヤツとして描き始めたんですよね。
柳内大樹
あとがきでも書いたかもしれないですが、もともとピンコにしても、病んでいた頃の僕自身というか。自分のルールを守ろうとしすぎて、人にもそれを押し付けて傷つけて‥‥みたいな。それでそこで友達もいなくなって、どうしようとなっていたときに『ギャングキング』を描き始めて。だからジミーと一緒にピンコを救うみたいなイメージで描いてました。ジミーが力と優しさを考え始めるきっかけも、ピンコなんですよね。だから『ギャングキング』で僕自身も救われました。
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ピンコ

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そういう意味でも思い入れの深い作品なんですね。
柳内大樹
本当そうですね。病んでいた僕が立ち直って、おかげさまで漫画も売れて、毎日が楽しくなってきて(笑)。逆にそんな中でピンコを描くのは、昔を思い出すからしんどくもあったんです。そういう意味では、キャラの中でもピンコに一番思い入れが強いかもしれないですね。

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僕自身は根が暗いのでピンコ。ハマーやマッスルみたいなキャラは憧れなんです


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そんなお話も伺いたかったんですが、連載を振り返っての思い入れある展開やキャラクターとなると?
柳内大樹
ワークマンズ編が好きで、僕の友達なんかでも似たような人生を送っているヤツがいますが、そういう人たちに腐らないで欲しいと思いながら描いたりもしてましたね。だからベロにもすごく思い入れは強いです。


ワークマンズ編

柳内大樹
あと、キャラクターで言うと、ハマーやマッスル。ハマーとマッスルは実は見た目が違うだけで、僕の中では同じキャラなんですよ。何でも笑い飛ばすというか、ただ楽しいだけで笑い飛ばしているのは深みがないですが、悲しさやつらさやしんどさをちゃんと分かったうえで、馬鹿なふりして笑い飛ばしている。そういうキャラを描いてるのは楽しかったですね。結局、僕自身はピンコで根が暗いので、ハマーやマッスルみたいなキャラは憧れなんです。ああいう大きい男になりたいですね。
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ハマー

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マッスル


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キャラクターは先生の心根の反映なんですね。
柳内大樹
全部自分だと思いますよ。悪いヤツも、弱いヤツも。弱いヤツなんて特にそうで、サイコも、器用貧乏なバンコも僕。根が暗いなんて言いながら、ひとまず僕は社交的じゃないですか(笑)。そういうところはバンコですよね。
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バンコ

柳内大樹
『ギャングキング』を描くときに、自分以上のことを描かないっていうのもルールとして決めていたんです。メッセージ性が強い作品なので、その中で自分以上のことを描いてしまうと、絶対に無理が出る。自分が感じ取ったことだけ描いて、頭の中で作ったものはどんなにカッコいいことでもやめておこう、と。そういうところも真面目にやってました(笑)。キャラが全部自分というのも、自分以上のことはやれないからなんですよね。
ヤンマガWeb
キャラクターのあだ名の面白さも魅力でしたが、そのネーミングも先生の周りから来ているんですか?
柳内大樹
ほとんどそうですね。例えば、アバレも友達のあだ名から取っていて、すごいカッコいいヤツだったので漫画に出そう、と。アバレは本当はアバレゴリラだったらしいんですが、長いからアバレになったみたいです(笑)。ピンコもそういうあだ名の友達がいて、泉っていうヤツだったんです。由来は分かりますよね!? だからたぶん漫画のピンコの名字も泉なんでしょうね(笑)。
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アバレ


『ギャングキング』のカラーイラスト複製原画集『プラチナ』と『ゴールド』が販売 !


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ヤンマガWeb
そんなキャラクターたちが描かれた『ギャングキング』のカラーイラスト複製原画集『プラチナ』と『ゴールド』が販売されるということで、先生お気に入りの1枚は?
柳内大樹
キャラがコラージュで組み合わさった集合のイラストは自分でも好きですね。すごく時間が掛かったんですが、さっきの剣豪の話で言うと、こういう絵はいい意味で力が抜けるんです。キャラがたくさんいて遊びがあるから、楽しく描けるんですよね(笑)。
柳内大樹
実は色を塗るのが苦手なんです。アシスタント経験がなくて独学なので、水彩のやり方が分からなくて色塗りはコピック(カラーペン)なんですよ。色を選ぶのは好きなんですけどね。
ヤンマガWeb
色の表現も注目ですね。“描く”ということで、これから先生が“描いてみたい”ものも聞かせてください。
柳内大樹
スポーツものはちょっとやってみたいなと思いますね。僕自身はボクシングをちょこっとと剣道をちょこっとで、全部ちょこっとなんですが(笑)、団体競技を描いてみたいです。やっぱりワークマンズ編が好きで、ああいうものをまた描きたいと思うんですが、ヤンキー漫画だとなかなかシチュエーションを作るのが大変じゃないですか。でもスポーツものならできる。それこそワークマンズ編のメンバーが全員でスポーツやってるような、暑苦しいくらいの感動もの描きたいですね。
柳内大樹
あとは家族ものかな。『北の国から』が死ぬほど好きなんです。本当に好きなドラマで、ああいう作品の漫画バージョンみたいなものを作れたらな、と。ただまだその域には達していないので、もうちょっと年を取ってからかなぁ。
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ヤンマガWeb
終わったばかりで続編の話をするのも何ですが、『ギャングキング』の新作はあり得るんでしょうか。キャラクターたちのその後は気になるところですが‥‥。
柳内大樹
続編をやるつもりは基本的にないんですが、コイツらが大人になったところも面白そうだなと思いましたね。例えば最終回の前の話で、アイツらの将来の姿を本当はもっと深く掘り下げたかったんですよ。ページの都合でできなかったんですが、ネームの状態では考えまくっていて。ちょっとワクワクしますよね。
柳内大樹
あとスピンオフというわけではないですが、『ヤングキング』でモンタナの読み切りを3部作でやるはずだったんですよ。1話目だけ描いて世に出ているので、その続きはいつかやってみたいですね。モンタナはなんでああいうふうになったか。ヤクザ漫画ですね。それで言うと、ジミーの父親や勝針、あとタカやユージっていう『ドリームキング』からのキャラがみんな同世代で、実は同じ時期にヤンチャしてたっていう裏設定があるんです。そこはあまり表現できずに終わってしまったので、そのあたりもありかな。ピンコが虐待を受けていたときの話とか、ネームは切っているけれど出してないものがいっぱいあるんです。ほかの漫画が売れなくなったらやろうかなぁ(笑)。
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モンタナ


先生にとって『ギャングキング』はどういう作品ですか? 


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今後にも期待しつつ、あらためて作品は完結ということで、最後に先生にとって『ギャングキング』はどういう位置付けの作品になったか教えていただけますか?
柳内大樹
とにかく思い出深くて、周りの皆さんが読んでくれている作品の一番は『ギャングキング』なので、楽しい経験をさせてもらいましたね。何だろう、ごはんを食べさせてくれた作品? いや、いいこと言いたいんだけれど、浮かばないんだよなぁ(笑)。でも、僕自身が一番出た作品になったことは確かです。
柳内大樹
自分に嘘をつかないということを決めてから漫画家としても日の目を浴びるようになった気がするんですが、その最初の作品が『ギャングキング』で、怒りも本当に怒りながら描いて、悲しみも本当に泣きながら描いて。僕、青春っていうものに対してあまりいいイメージや、いい思い出がなかったんです。でも『ギャングキング』を描き出して、自分も青春を迎えた気がするんですよ。だからジミーやピンコたちと一緒に、青春していたんだろうなって。『ギャングキング』は青春‥‥って、いいこと言いましたよね、今?(笑)
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