伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ次世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、13巻発売時点で、単行本累計発行部数320万部を突破している。

同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。第5回となる今回は、残念ながら2022年での生産終了が決定してしまった日本が誇るスーパースポーツ、現行NSX(2代目モデル)を紹介する。ホンダのハイテクモデルは、世界の並み居るスーパーカーたちを相手にどう闘うのか?

文/安藤修也
マンガ/しげの秀一

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現代のスーパーカーのロールモデル


1990年に発売された初代NSXは、日本車としては初めて世界に互する実力を備えたスーパーカーとして伝説になったが(詳細はベストカーWeb『頭文字D名車列伝』参照)、2005年に生産を終了していた。それから約10年後の2016年に満を持して発表されたのが2代目NSXだったが、昨年(2021年)「タイプS」が発表され、同モデルのデリバリーを最後に生産終了となることがアナウンスされている。

NSXはホンダの海外向け高級ブランド「アキュラ」でも販売されており、この2代目モデルは米国オハイオ州の工場で生産される逆輸入車となる。アルミボディの採用で「栃木工場でしか修理できない」と言われた先代型と違って、いい意味でも悪い意味でもグローバルな匂いを持つスーパーカーへと成長し、現代的なスーパーカーらしくハイテクデバイスも満載されている。

ホンダ NSX(現行型)/全長4490×全幅1940×全高1215mm、パワーユニット:3.5L V型6気筒ターボエンジン+電気モーター、最高出力:507ps、最大トルク:550Nm


パワーユニットは、3.5L V6ツインターボエンジンをベースに、フロントに2基、リアに1基の合計3基のモーターを備えたホンダ独自のハイブリッドシステム「スポーツハイブリッドSH-AWD」を採用。F1でさえハイブリッドを採用する時代なのだから、スーパーカーもハイブリッドで! という主張を具現化した近未来スーパースポーツのロールモデルとなる存在だ。

ちなみに「AWD」というのは「オール・ホイール・ドライブ」つまり4WDのことで、モーターを使って4輪に駆動力を発生させる電動4WDモデルでもある。

600馬力近い最高出力を備えながら、CO2を排出しないEVモードも備えるという、世界にも稀な(稀であった)スーパースポーツカーの存在は、現代でもホンダの技術力が世界トップクラスであることを証明している。F1のトップエンジンサプライヤーだった時代に羽ばたいた初代NSXとは、また異なる個性を備えた、ホンダ独自のモダンスーパーカーを生み出したのだ。


ハイブリッドシステムを除去して軽量化?

 
が、スーパーカーならやはり乗車時の高揚感や、スポーツモデルらしい一体感も必要となってくる。
そして当然、同モデルは期待に応えるだけのアビリティを備えていた。

実際に走らせてみれば、まずエンジンを車体中央に搭載するミドシップならではの優れた旋回性を実感できるし、コーナリング性能は「スポーツハイブリッドSH-AWD」によってさらに高められ、曲がりすぎるほど曲がる。また、ミドシップではバランスが失われがちな直進安定性も電動4WDの制御によって揺るぎないものとなっている。



『MFゴースト』の作中に初登場したのは、MFG第2戦「芦ノ湖GT」の予選1日目。第1戦の「小田原パイクスピーク」での最終リザルトが14位だった前園和宏が、雪辱を果たすべくシビックタイプRから乗り換えたのが2代目NSXである(MFGでは、同年内に同メーカーのクルマであれば搭乗車種を変更ができる)。

ただし、MFGには「内燃機関のみ参戦可能」というレギュレーションが設定されているため、NSXは3基のモーターを取り外されており、4WDでもなく、ハイブリッドカーでもない。その影響もあってか、前園はセッティングを出すのに苦労していたようで、第1戦をシビックタイプRでエントリーすることとなった理由は、NSXのコンディションが整わなかったからである。

これはつまり、2代目NSXならではの電子制御による優位性を手放したことになるのだが、タイムアタック中に前園が「2年かけてやっとここまで仕上げたぞ…」と確信をもって発言しているとおり、予選ではなんと5位を獲得! モーター関連のメカニズムが除去されたことで大幅な軽量化が実現し、NSXが本来持つ高い限界性能が発揮されたのだろう。


■高度な走りでクルマ好きを魅了



しかし、決勝レースのコンディションは雨。スタートではトラクションの面で有利な4WDのランボルギーニ ウラカンに先を行かれるが、すぐに抜き返す。その後は3位集団として、ポルシェ 911GT3、フェラーリ 488GTB、そしてウラカン、アウディ R8といった世界トップクラスのスーパーカーらと互角の攻防を続けた。

その後、911GT3がドライバーのミスで3位から陥落し、NSXも4位まで順位を上げたが、後方から追い上げてきた片桐カナタの駆るトヨタ 86とデッドヒート。レースを続行するか否か判断に迷うほど濃霧が立ち込めてきたなかで、視界ゼロをも恐れない勇猛果敢な走りをみせた86に抜かれてしまうが、最終的には5位でフィニッシュしている。ゼッケン13、つまり前年度ランキング13位の前園にとっては、極上の結果と言えよう。

ホンダはNSXのことを「誰もが操ることができる人間中心のスーパースポーツ」と定義しているが、それは初代モデルが視界のよさやユーティリティ性能でファンを魅了したように、2代目もまた、卓越した走行性能と限界領域での操作のイージーさを両立したハイテク機構を柔軟に取り入れることで、同車をユーザーフレンドリーなスーパーカーに仕上げている。

ハイテクの介入度合いは異なるが、高度な仕上がりをみせた走りを披露してくれるという部分では先代型と変わらず、今なお世界中のクルマ好きたちが「羨望」「矜持」といった言葉を想起するモデルである。


※こちらの記事は、ベストカーWebの記事を再編集したものです。


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