伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ次世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、13巻発売時点の現在で、ついに単行本累計発行部数320万部を突破した。
同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。第11回目となる今回は、ドイツの名門・アウディの頂点に立つスーパーカー、R8を取り上げたい。モータースポーツで磨かれた技術力はMFGでも花開くことになるのか?
文/安藤修也
マンガ/しげの秀一
■エリートが乗るプレミアムブランドの頂点
「アウディ」は、長らくラリーフィールドでの活躍があり、クワトロ(フルタイム4WD)のイメージが強いブランドであった。しかし高級車路線に転じたことで、現在ではラグジュアリー、知的、クールといったイメージが定着。ドイツ御三家(メルセデスベンツ、BMW)のひとつとして世界的に評価される、信頼性の高いテクノロジーメーカーである。
そしてこの(ミニバン以外)ほぼ全ジャンルの車種を販売するフルラインナップメーカーの頂上に君臨するクーペ&スパイダーがR8だ。初代モデルは、低くワイドなフォルムにエンジンをミッドシップマウントするというスーパーカーのお手本のようなスタイルで、2006年に誕生した。
アウディ R8(V10パフォーマンス 5.2FSIクワトロ)/全長4545×全幅1940×全高1290mm、パワーユニット:5.2L V型10気筒エンジン、最高出力:620ps/8000rpm、最大トルク:580Nm/6600rpm
1999年に子会社となったランボルギーニからスーパーカー製造のノウハウを吸い上げたアウディだが、ランボルギーニ側もアウディの影響で技術力が大きく前進している。なお、そういった関係もあり、ランボルギーニのウラカンはR8とベースを共有する兄弟車となっているが、ブランド同士のテイストの相違もあって、乗り味は大きく異なる。
1999年に子会社となったランボルギーニからスーパーカー製造のノウハウを吸い上げたアウディだが、ランボルギーニ側もアウディの影響で技術力が大きく前進している。なお、そういった関係もあり、ランボルギーニのウラカンはR8とベースを共有する兄弟車となっているが、ブランド同士のテイストの相違もあって、乗り味は大きく異なる。
そして、2016年には現行型となる2代目R8が発売。先代型同様、ボディ素材にアルミやカーボンを用いた「ASF(アウディ・スポーツ・フレーム)」と呼ばれる軽量化つ堅牢なボディ構造やフルタイム4WDが採用され、エンジンはV8からV10へと換装、車体下面をフラットにして空力にも配慮するなど、モータースポーツのフィールドで磨かれてきた技術力が余すところなく投入されている。
斬新ながら知的さも感じさせる印象深いデザインは、世界的に高く評価され、2代目モデルはそのスタイリングをブラッシュアップしつつ継承した。もちろんフロントフェイスの中央には、アウディ最大の特徴でもある「シングルフレームグリル」を備えている。乗り味もスポーティだが硬すぎずしなやかで、ハンドリングは軽快だ。大人っぽくて上質な、多くの人を満足させる完璧なスーパーカーなのだ。
■4WDの特性を活かして戦う
そんなR8が『MFゴースト』作中に初登場したのは、第2話。MFG第1ラウンド「小田原パイクスピーク」の予選である。カーナンバー5をつけて疾走するR8のグレードは、「 V10プラス」と表記されている。これは2代目の初期モデルで、2016年から2019年まで販売された、当時のトップグレードであった。
ドライバーは27歳の坂本雄大。ドライビング中でも常にパーカーのフードを被ったまま、そしてサングラスをかけたままという特異なファッションで、クセの強そうな長い前髪、そしてアゴの無精髭と、ルックスだけでもキャラがかなり立っている。今年で4年目の参戦だと発言も聞かれるベテランドライバーだが、因縁深い相葉からは、「ダークサイドの暗黒卿」と呼ばれている。
予選の結果は、ポルシェ2台に続いて3位を獲得した。前途揚々と思いきや、スタートして以降、後方からGT-Rに攻め立てられ続けられ、1周目の通称”カマボコストレート”でスリップストリームからオーバーテイクされてしまう。しかしその後も引き離されることはなく、熾烈な3位争いを展開。
後方から追いついてきたフェラーリ488GTBに、接触ギリギリで追い抜かれると、坂本は「今のは審議だろ!!」とシャウト。この後も追い抜いたドライバーに対して坂本が抗議する場面は散見され、見た目に違わずエキセントリックな性格だとわかることになる。レース自体は、最終的にブレーキングミスしたGT-Rの前に出て、見事4位の座を確保した。
■ル・マンウイナーとしてのプライドに期待
第2ラウンドの「芦ノ湖GT」では、予選8位と躍動できなかったが、決勝レースのコンディションは雨! 濡れた路面ではトラクション性能がものをいう。4WDの特性を活かした攻めのレースが期待されたものの、7位走行中に後方から86が迫ってくる。三国峠では、コース取りの巧みさとドリフトテクニックでパスされてしまう。さらにR8と同じ4WDで絶好調のGT-Rとエキサイティングなバトルを展開。車体をぶつけられ、マシンを壊したくない坂本は「戦略的撤退」を決め込んで、7位フィニッシュした。
第3ラウンドは「ザ・ペニンシュラ真鶴」。予選で振るわず9位スタートとなったあと、中段グループがバラけず、NSXにパスされてしまった。さらに、終盤にはまたもGT-Rとサイドバイサイドを繰り広げることとなり、最終的には先にチェッカーを許してしまう。この時のGT-Rの走りが物議を醸し、一旦、審議になったものの裁定はフェア。結果、11位フィニッシュとなった。
R8は3戦を終えた時点で、前年ランキングと同じ5位につけているものの、ここまでレース中に大活躍するような場面が見られていない。ドライバーのキャラ的には、主役になる可能性は高くはないのかもしれない。しかし、世界3大レースのひとつ「ル・マン24時間レース」でウイナーに輝いたモデルとしてのプライドにかけても、このままシーズンを終えられない。奮起が期待される。
※こちらの記事は、ベストカーWebの記事を再編集したものです。
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