伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ次世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、13巻発売時点の現在で、ついに単行本累計発行部数320万部を突破した。
同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。第12回目の今回は、MFG参戦車では珍しいライトウェイトスポーツモデル。同じカテゴリーに位置するトヨタ 86とのバトルは見ものだ。
文/安藤修也
マンガ/しげの秀一
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■名門が生んだピュアスポーツ
「ロータス」は、レース界ではよく知られたコンストラクターで、かつてはF1にも参戦していた名門だ。1980年代にはアイルトン・セナや中嶋悟らを擁して、ホンダエンジンを搭載していた時代もあり、日本でもその活躍を知る人は多いに違いない。
そんなロータスだが、少量生産のスポーツカーメーカー「ロータス・カーズ」として1950年代から市販車の販売も行ってきた。特に、同社を代表するモデル「エラン」や、『007』『プリティウーマン』といった映画にも起用された「エスプリ」、そしてクルママンガの金字塔的存在でもある『サーキットの狼』で活躍した「ヨーロッパ」などは有名だ。
長い年月の間にさまざまに形態を変えながら現在も販売体制を維持するロータス・カーズだが、1995年に発表した「エリーゼ」でひとつの頂点を迎える。これはアルミやFRPを用いた超軽量ボディに開閉可能なタルガトップを備えた2シーターのライトウェイトスポーツで、実用性を抜きにした「走るため」のクルマとして、多くのファンを魅了した。
そしてそのエリーゼの派生車として2000年に誕生したのが、『MFゴースト』に登場する「エキシージ」である。立ち位置としては、エリーゼをベースとした豪華&ハイテク仕様のスペシャルマシン。ストイックな造りがなされたエリーゼを高性能化しつつ、外観もよりアグレッシッブなデザインにまとめられている。
ロータス エキシージ(S・2013年モデル)/全長4080×全幅1800×全高1130mm、パワーユニット:3.5L V型6気筒スーパーチャージャーエンジン、最高出力:350ps/7000rpm、最大トルク:40.8kgm/4500rpm
デビュー当初はローバー製の1.8L直4エンジンが搭載されていたが、2004年に一新された「シリーズ2」こと2代目モデルからはトヨタ製の1.8L直4エンジンへと載せ替え、さらに2006年には過給機(スーパーチャージャー)を追加したハイパフォーマンスモデルもラインナップされている。
このトヨタ製「2ZZ-GE型」エンジンは、かつてセリカなどに搭載された小排気量スポーツエンジン。時代がズレるとはいえ、トヨタ 86がスバル製エンジンを搭載していなければ、同系列エンジンが採用されていてた可能性もなくはない。
2012年のシリーズ3(3代目モデル)で、エリーゼのエンジンはトヨタ製3.5L V6スーパーチャージャーへと変更され、ボディサイズも拡大されている(作中に登場するのは同シリーズ3)。その後、2021年いっぱいで生産終了となってしまったが、どの時代においても、パワステのないダイレクト感満点のステアフィール、ハードな乗り味などは共通している。
■アルファロメオとのフォーメーション作戦が炸裂
作中では第17話「ヤジキタ兄妹」において、MFGドライバー八潮翔(やしお かける)の愛車として、ファミレスの駐車場から発車する場面で初めてお目見えしている。カーナンバーは16ということで、前年度のMFGでは、ギリギリ ”神フィフティーン(上位15位のポイントランカー)” 入りを逃したようだ。
そもそも「リッチマンズレギュレーション」と呼ばれ、大排気量の高級スーパーカーが大手を振るっていたMFGにおいて、エキシージのような小排気量のライトウェイトスポーツカーで参戦すること自体、不利なはず。八潮翔もそれを承知のうえでの参戦なのだろうから、ロータスやエキシージに対して何かしら思い入れがあるのかもしれない(まだ作中では語られていない)。
そんななか開催されたラウンド1「小田原パイクスピーク」では、予選で12位を獲得。2ポジション後方の14位には妹の北原望(きたはら のぞみ)が駆るアルファロメオ 4Cがつけている。(事情があって苗字が異なる)この兄妹が操る2台のライトウェイトマシンは、その機動性を活かして協力しながら走ることを得意としており、決勝レースでは、早速その技が発揮された。
最初の餌食となったのは、予選15位と2台の間でスタートしたシビックタイプR。コーナーでエキシージが一度開けたコースを塞ぎ、シビックタイプRにブレーキを踏ませると、その瞬間を見逃さずアルファロメオ 4Cがねじ込む。高いハンドリング性能を駆使したブロックフォーメーションでシビックタイプRを翻弄した形だ。
その後、スルスルと後方から追い上げてきたトヨタ 86に、ガスと霧が漂う温泉街、通称「デスエリア」で追いつかれると、デスエリアの出口で2台続けてパッシングされてしまう。コーナリング中に効いたトラクションコントロールが、逆に八潮のドライビングを邪魔した格好だ。
しかし「カマボコストレート」と呼ばれるコース最長のストレートでは、3台がお互いのスリップストリームを利用し合う形で、ストレートスピードを伸ばす。小排気量の3台が弱点を克服するべく共闘する姿は見どころになっている。
■今後のライトウェイト対決に注目!
ラストラップ後半の下りでは、アルファロメオ4Cをいとも簡単に抜いてきた86を、エキシージが巧妙にブロック! しかし片桐夏向のスーパーテクニックの前には成すすべもなく、あっけなく追い抜かれてしまう。
この時に八潮翔が「ロータスといえば、曲がることにかけては他のどんなメーカーにもヒケはとらない‥(中略)トヨタの86なんかに劣る点は‥ひとっつもねえんだ!!」と叫んでいる。八潮の言い分を正しいとするなら、このパッシング劇はマシンではなくドライバーの腕の差が出たということになる。なお、最終的にエキシージは12位でレースを終えている。
この年のMFGが開幕した時点で、MT、つまり3ペダルのマシンは、エキシージと86のみ。よりスパルタンなクルマ造りがなされ、ロータス ヨーロッパの流れを汲むこのハンドリングマシンが、主人公とはいえトヨタ 86に負けてなるものか。そう思うのは、八潮翔だけじゃないはず。今後、エキシージに86を凌ぐ活躍を期待するロータスファンは数多く存在するに違いない。
※こちらの記事は、ベストカーWebの記事を再編集したものです。
※こちらの記事は、ベストカーWebの記事を再編集したものです。