「講談社コミックプラス」に掲載されたヤンマガ作品のレビューをご紹介!!

『女子校のこひー先生』

女子校で物理を教える新米教師の小日向先生。生徒からは「こひー」の愛称で親しまれているような、かわかわれているような‥‥。みんな距離感が近くて、もしセクハラ教師だって誤解されたらどうしよう‥‥。360°女子高生に囲まれた新米教師の奮闘コメディ!

無敵の女子高生たち


『女子校のこひー先生』を、かつて女子高生だった自分が読むと“こひー先生”をおちょくりまくる女の子の無敵感がよくわかる。そして大人になった今なら、こひー先生のご苦労も想像がつく。先生は絶対クタクタだ。なにせ毎日こんな感じなのだ。



女子校の新米教師・小日向先生は生徒たちから「こひー」なんてあだ名を付けられ、おしりを揉まれたり抱きつかれたり。で、こひー先生が「やめて欲しいんです」と言うとちゃんと彼女たちは揉み揉みをやめるのだが‥‥?



今度はおあいこでうちらのおしりを触っていいぞとからかう始末。おあいこになんて絶対にならないのに。



こひー先生はもちろん触りません。おあいこどころか懲戒免職待ったなし。そもそも触りたくもない。なのに女の子は懲(こ)りることなく「私はいいのに」なんて挑発する。
こんなのを日々かわしながら授業をするのだ。



ぺたぺたと仔犬のようにじゃれつくかと思えばそっぽを向かれることも。容赦ない。この気まぐれな感じが実にリアル。こひー先生、本当に大変だろうな。我が身を思い出す。すみませんでした。


女として見てる? (わけがない)


女子校でのびのび10代を過ごす彼女たちの、こひー先生との距離感は人それぞれ。だいたいものすごく近い。



こひー先生としては「こんなところ誰かに見られたら大変なことに‥‥」と焦るばかり。そう、真面目な新米教師のこひー先生は自分がセクハラの加害者になるまいと日々必死に気をつけている。
そんな彼をよそに女子高生たちはこひー先生にひっついてばかり。この無防備な近さには理由がある。



「先生って意外と私たちの事 女として見てるんですか?」これだ。彼女たちは、自分の胸が大きくなっていることもおしりが上等なことも、一応わかってはいるんだけども、性とは切り離された少女の世界に生きている。そこの一員としてこひー先生をカウントしているのだ。
だからこひー先生の男性的な部分を垣間見るとこんな反応を示す。



これは、「わあ‥‥」とビックリしている女の子が「ムラムラするの? うそー想像できなーい」と散々からかった果ての事態なのだが、おそらく「うそー想像できなーい」はマジだ。マジで想像できない。そして、こひー先生自身にとっても彼女たちはただの幼い人たち。
『女子校のこひー先生』はこの無自覚さとアンバランスさが可愛くておもしろい。なかにはこんな子だっている。



近寄るものすべてを刺す! みたいなこの視線の冷たさよ。彼女がピンチのとき、こひー先生はどうやって手を差し伸べる?


嫌って言うので終わります


もう1つ、私がとても好きだった怒濤の回を紹介したい。



生徒思いのこひー先生が受けた衝撃の相談! 実は“坂巻さん”は美術部で絵を描く女の子で、「これは美術の話だ!」と主張し、こひー先生を裸にしようとする。
無敵の女子高生たちは、とうとうホームルームの議題でこの問題を取り上げることに。



この三者三様のテキトーな反応がおもしろい。



ノンストップで熱弁をふるう坂巻さん‥‥! さあどうする小日向先生。



ここ、ものすごく大事な場面です。生徒のことが大切で、彼女たちを理解したくて、できることは何でもしてあげたい。そんなこひー先生にだって、耐えられないことがある。この真面目な「嫌です」を受けて、芸術に燃える坂巻さんはというと。



スパッとこの議論を終了させます。うん、「嫌」は大事。理由なんていらないんですよ、嫌なものは嫌。そして学級委員長の瀬川さんがニコニコとホームルームを進行させていくのもいい。危なっかしいようで実に平和かつ健全な学校風景にフフッと笑ってしまう。



※こちらの記事は講談社コミックプラス8/26更新の記事を再編集したものです。


レビュアー/花森リド
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。


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