伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ新世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得している。
当連載では、作品内で繰り広げられるガソリン車のレース『MFG』で活躍するドライバーや、主人公・片桐夏向の周囲を取り巻く人々など、魅力あふれる登場人物たちの人となりを分析し、そのキャラクターや人物像を明らかにしていく。
今回は、MFG統括本部長の地位につく上有史浩を紹介。『頭文字D』におけるプロジェクトDの外報部長が、その道を極めて辿り着いた仕事とはいったいどういったものなのか?
■交渉役を長く務めた男が上り詰めた地位
「史浩」、フルネームは「上有史浩」。一般の方からしたら「え!? あの人?」と思う名前だが(笑)、『頭文字D』読者にとってはお馴染みの名前である。「赤城レッドサンズ」、そしてその進化でもある「プロジェクトD」で渉外担当を務め(作中では「外報部長」と呼ばれていた)、対戦チームとの交渉役を一手に担っていた頼りになる男だ。言うなれば、“あちらの”上有さんと同じような役回りである。
で、こちらの上有史浩は、『頭文字D』ではユーノス ロードスターを愛車としていたがバトルをするシーンは一度もなく(実は原作では苗字さえも登場していなかった)、読者にもよく知られたキャラクターでいながら、それほど思い入れのあるファンは多くなかったかもしれない。そんな史浩が、『MFゴースト』にも登場しているのだ。
初めて登場したのは、第3話「カナタ出走まであと3日」。東京の六本木ヒルズにあるMFG本部に、相葉瞬からMFGエンジェルズ7番の名前を訪ねる電話があり、それを断ったオペレーターに対して「クレームか?」と尋ねているのが、中年になった史浩である。このオペレーターからは「上有本部長」と呼ばれており、ここで早くもMFG本部で部長職を務めていることがわかる。
若かりし頃の史浩と比べると、妙に揃った感じだった(笑)あの髪型は、しっかり七三に整えられており、年相応に白髪混じりになっている。また、以前から目立っていた頬骨は現在も健在だが、顔や身体まわりを比較するとだいぶ肉づきがよくなったようで、スーツ姿からそれなりの中年オーラを漂わせているのは、物悲しくもあり、頼り甲斐があるようにも見える。
ただ若い頃から人と人とを結ぶようなことをしていた彼が、全世界で視聴者数3000万人以上とも言われるMFGにおいて、統括本部長を務めるまでもなった。誰もがやりたい役割でもなく、また、やれる役割でもなかった交渉役を必死に続けていたことが、彼にとっては幸いしたのかもしれない。もちろん、彼にはこういう仕事が合っていたことは確かなのだろう。
■涼介や拓海の存在を感じさせる役割
『MFゴースト』本編では、今のところ高橋涼介が姿を現していない。しかしその話声を聞けるシーンがあって、それは史浩がMFGのエグゼクティブオーガナイザーである涼介に電話をして片桐夏向のMFG参戦を伝える場面である。涼介は『頭文字D』時代から相変わらずそっけない態度で史浩をあしらっており、この2人の関係は今も変わってないのだと安心させられる。
この涼介との会話シーンをはじめとして、史浩というキャラクターは、MFG運営の幹部でありながら、『頭文字D』と『MFゴースト』という2つの作品をつなぐ橋渡しのような役割をしていることが多い。たとえば、MFGラウンド1「小田原パイクスピーク」で夏向の予選通過が決まったシーンでは、「もってるなー片桐夏向。そーゆーところも‥‥師匠ゆずりか‥‥」と、夏向の師である藤原拓海のことを読者に思い起こさせている。
さらに、同ラウンド1「小田原パイクスピーク」の決勝レースで夏向が果敢なドリフトを魅せたシーンでは、「正真正銘、藤原拓海のゼロカウンタードリフト‥‥プロジェクトDが誇る無敗のダウンヒルエースが芦ノ湖に降臨した‥‥」と、『頭文字D』ファンの心をわし掴むようなワードを使って、夏向のテクニックを絶賛している。
■MFGを理解し、すべての責任を背負う
もちろんMFG運営の統括本部長であり、涼介を除けば最高責任者でさえあるため、当然のごとくMFGのことは表から裏まですべて把握していて、「まぼろしのコースレコード」は高橋啓介が叩き出したものだと知っている。そしてMFGラウンド2「芦ノ湖GT」でベッケンバウアーと沢渡光輝によって初めてその記録が破られた時には、「啓介の渾身のスーパーラップを‥‥4年目にしてやっと超えてくるレベルにあがってきたか‥‥」と、驚きのような、しかしどこかほっとしたような思いを発している。
さらに、同ラウンド2「芦ノ湖GT」では、決勝レース中に芦ノ湖周辺に濃霧が発生。レースを中止するべきかどうか難しい判断を迫られる事になったが、この時は、「レースはこのまま続行する」、そして「不測の事態が発生した場合は、すべての責任はわたしにある‥‥以上だ」とレースの続行を指示している。さらに、視界が悪いなら悪いなりに走ればいい、公道でレースするということはそういうことなのだと言い切っており、涼介に代わってMFGの基本理念を説く存在なのである。
ちなみに、MFGを彩る女性アイドルユニット・MFGエンジェルスという存在は、どうやら史浩の肝いり企画のようである。さらにそのメンバーであるナンバー8こと沢村まりえを気に入っていたようで、レース中にそのことを実況の田中洋二から暴露されている。まりえは、スレンダーなモデル体型ばかりのエンジェルスメンバー内では珍しいぽっちゃり系なのだが、多くの日本人中年男性はふくよかな女子を好みがちである(筆者の独自調査による)。その点では史浩というキャラは中年男性の代弁者のようなものである(笑)。
※この記事はベストカーWebの記事を再編集したものです。
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