「講談社コミックプラス」に掲載されたヤンマガ作品のレビューをご紹介!!

迫りくる変態たちに悶絶!? 内なる自分を解放する性癖全肯定の異色ラブコメ!!

文武両道、容姿端麗、パーフェクトな生徒会長を演じ切る男、土御門聖。そんな聖が放課後に見てしまったのは、いつもはおとなしいクラスメイト・佐渡さんがドSに教師をいじめる姿だった――! 佐渡の秘められし性癖に、完璧な生徒会長が巻き込まれていく…! 人には言えないコトがあるアナタに贈る、異色ラブコメ!


いろんな性癖に挟まれた生徒会長


『聖くんは清く生きたい』の主人公・土御門聖(つちみかどひじり)が清いか清くないかで言えば、だいぶ清い男子高生だと思う。聖は美騨良学園(みだらがくえん)の生徒会長でピカピカのエリートで眉目秀麗‥‥で、外ヅラをキメまくっている。


こんなふうに「バーカバーカ」って内心あざ笑っているし、そもそもこんなヤバい名前の学園(でも名門校っぽい)の生徒会長をやってるあたりで、読者として察するモノがあるのだが、それでも彼は清い。そしてリビドーと魂の清らかさが両立することを思い出して元気が出る。



誰もいない教室で股間に縄を食い込ませながら鞭を受けても



生徒副会長にゴリゴリの言葉責めをしても、彼は清い。ところで聖ってドM? ドS? どっち?


ヤンマガはエロ本じゃないんだよ


聖の学園生活というか性は、ある日をきっかけに蛇行(だこう)を始める。



静まりかえった放課後、内気そうでいつもオドオドしている“佐渡美月(さどみづき)”が向かった先は理科室。そこで待っていたのは、不自然なタイミングで退職することになった担任の男性教諭で‥‥!



こっそり後をつけて教室に入った聖としては、当然こんな心配する。ここで清いポイントが1点加点です、ちゃんと佐渡さんを助けようとする。

でもなんだか様子がおかしくて‥‥?



これ佐渡さん? 「雄豚」、しかも「育てた」? 佐渡さんが? 雄豚を?

佐渡さんは縄を器用に取り回して先生をたちまちボンレスハムのように縛り上げ、先生はウットリ。ほんとだ、佐渡さんは確かに先生(雄豚)を飼育&調教してる。



おしとやかな佐渡さんが履いてたソレ、黒タイツじゃなくてガーターストッキングだったんですか……。あれよあれよという間に始まったSMプレイに青ざめる聖。



なんということ! ちなみにガーターベルトはパンツの下に装着すると、いろいろと着脱がラクだよ!

いろいろあったあと、怒濤のエロ展開について生徒会長として事情を問い正したところ、佐渡さんは「メガネを外すとドSのスイッチが入る」ことが判明。あと先生がドM。



聖の清いポイントがここでも1点追加だな。白目になりつつもちゃんと話を聞いてるから。そして生徒会長に見られちゃったからには退学しますと佐渡さんは言うけれど‥‥



うん、やめなくていいよ(プレイの場所は考えてほしいが)。聖の清さが光ってる。実は彼には性にまつわる苦い思い出があるのだ。小学生のころ、成績優秀で性教育の知識もバッチリだった聖についたあだ名は「エロ博士」。まあそれはよしとして、「聖くん、学校にエッチな本持ってきてたんだって」という不名誉なゴシップの餌食となってしまう。でも彼が持ってきたのは青少年に有害な成人図書じゃないんですよ。



これは、かつてヤンマガで立場を不当に失った男のラブコメなのだ。恥ずかしさと他人からの侮蔑によって己の欲望を抑圧し、やがて外ヅラをきれいに取り繕うようになった聖には、自分を解放しまくる佐渡さんの姿がまぶしい。



これは聖の本心。ね、ヤンマガはエロ本じゃないんだよ。


プレイは一人じゃできませんよ


佐渡さんの退学を食い止め、佐渡さんの秘密を守り、佐渡さんに協力すると決めた聖。さあここからが大変だ。「協力する」と言ったけれど、何をどう協力するかなんて考えていなかったのだ。



聖の心の声がかわいい。で、ガマンしすぎて苦しそうな佐渡さんを見かねて「俺を縛れ」と申し出る。これも生徒会長としての務め。あと、前述したとおり、彼は人間の欲を否定したくないわけです。

佐渡さんを抑えつけるメガネを聖がそっと外すと‥‥。



ああ、始まった。



双方で力加減をチェックしつつビシバシ振るわれる鞭! 信頼関係あってこそのプレイが展開される。1巻まるまる生徒会長がいじめられっぱなし。

そんな聖の人徳と背徳の匂いを、他の女たちも敏感に嗅ぎつける。



彼女たちの性癖を決して否定せず、ずるずる呑み込まれていく聖に白々しさがないところが私は好きだ。それに彼もちょっと解放されてるかも。インモラルかつ非常にモラリストな男だと思う


※こちらの記事は講談社コミックプラス7/31更新の記事を再編集したものです。


レビュワー/花森リド
ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。


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