新人漫画家さんのために、大ヒット作家に「人気作を生む秘訣」をお聞きするこの企画。
三田紀房先生、門馬司先生、小川亮先生という豪華メンバーに登場いただきます!

今回お話を伺ったのはシリーズ累計200万部を突破した『満州アヘンスクワッド』の原作者、門馬司先生!
全4回にわたってインタビューを掲載します。

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【第3回】マンガの中に「生きる」人間を描く‥‥。リアリティあるキャラクター描写のために押さえるべき2つのポイントとは?


――『満州アヘンスクワッド』のキャラクターたちはみんな突き抜けた個性を持ちながらも、作品世界の中で確かに生きて動いている人間として実体を持っているような感じがします。

門馬
キャラクターにリアリティを出すことって難しいんですよね。僕は普段、二つのことを意識しています。
一つ目は、まずキャラクターの日常を描いてみること。
二つ目は、キャラクターの過去を考えること。
これらを押さえることでキャラクターを掴んでいくことができます。

――それぞれ詳しくお話を聞かせてください!

門馬
「キャラクターの日常を描いてみる」というのは、そのキャラクターが普段どんなことをしているのか考えてみる、描いてみることです。
どんな日常生活をしているのかとか、いつも何を食べているのかとか、趣味は何かとか、そういうところが見えてこないとキャラクターがぼやけてしまうんですよね。
性格や物の考え方など、そのキャラクターの行動傾向のようなものも生活の中に滲み出てくるものなので、そういうところでキャラクターを掴みたいんです。
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▲青幇の「冷徹な猛犬」黄飛龍はキレイ好き。自身の縄張りである大連を汚す「ゴミ」に敏感。

――なるほど、ページの向こう側にあるキャラクターの日常まで考えて作り込むことでキャラクターの写実性が高くなり、リアリティのあるキャラクターを描けるのですね!
「キャラクターの過去を考える」のはどうでしょう?

門馬
僕はこの「過去を考える」ことがキャラクターを作る上で一番重要なことだと考えています。過去の経験を考えることでそのキャラクターの言動に説得力を与えることができるんですよね。
今このキャラクターはこういう行動をしているけれど、どうやってこの「今」に至ったのだろう? と考えてみると、実はこんな過去があったのかもしれない‥‥と、どんどんキャラクターに厚みを加えていくことができます。
すると一本筋が通るので、そのキャラクターが今後どうやって動くのかというところまで見えてくるわけです。

――実際の人間と同様にキャラクターたちも過去の積み重ねの上に今を生きているわけですものね。

門馬
また『満州アヘンスクワッド』のキャラクターたちは当時満州にいた実在の人物をモデルにしている部分もあるので、キャラクターの人生に歴史的事件などを溶け込ませることができると嬉しいですね。
キリルの過去は当時実際に起きていたスターリンの「大粛清」などの史実と上手く噛み合ったなと思っています。
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▲キリルはかつてスターリン政権下の秘密警察「НКВД」の下っ端として働いていた。

――過去を深掘ることでキャラクターの言動に根拠が生まれ、さらに時には史実と絡めることもできて物語の説得力が増す、ということですね! 過去を考えた結果、門馬さんの中でキャラクター像が変化したことはありますか?

門馬
凡さんですね。

――勇たちと敵対する関東軍憲兵、長谷川の相棒ですね。

門馬
僕は、敵キャラクターや悪役は絶対に一般の人がついてこられない思想を持っているべきだと思っています。敵や悪役は迷わない。こちらが理解できない思想を固く持ち続けている。そういう意味で「異常」な存在であるべきだと思います。
ただ、その中にも2タイプあるかなと思っていて、1つ目は長谷川のような
目的のためなら手段を選ばずなんでもするようなキャラクター、2つ目は凡さんのように実は人間的弱さを持っているキャラクターです。

凡さんは怪物のようなキャラクターを作りたくてできたキャラクターなので、最初は長谷川たちと同じタイプだったんです。しかし、どうしてそうなったのかと彼の過去を考えた結果、妹の存在が出てきて、結果としてリンのような小さな女の子に弱いという特徴が出来上がりました。
――冷酷な拷問マシーンのようだった凡さんの人間的な部分が垣間見える印象的なエピソードでした。この「垣間見える」ところがキャラクターのリアリティを高めているのですね!

まとめ ~リアルなキャラクターの描き方~

①キャラクターの日常を考えよう!
物語の外にあるキャラクターの日常シーンを考え、そこににじみ出るキャラクターの人物像をとらえよう!
②キャラクターの過去を考えよう!
現在のキャラクターの在り方の背景にある過去を深堀り、その言動に説得力を持たせよう!

門馬先生、ありがとうございました!
次回は門馬先生インタビューの最終回、見せ場を作りつつ内容も整理できるコマ割りの秘密に迫ります。お楽しみに!

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