伝説のクルママンガ『頭文字D』の名勝負を選出した「頭文字D名勝負列伝」が、読者のアンコールに答えて復活! 今回はプロジェクトDの神奈川遠征における初戦となったRX-7とランエボVIIのバトルを取り上げる。ハイパワー4WDばかり相手してきて辟易としている高橋啓介の前に立ちはだかったのは、またもランエボだった!!
マンガ/しげの秀一
文/安藤修也
【登場車種】
■先行:マツダ・RX-7(FD3S型)
→ドライバーは高橋啓介。ご存知、プロジェクトDのヒルクライムエース。茨城でのパープルシャドウ星野とのバトルでひと皮剥けた雰囲気がある。愛車のFDもこの神奈川遠征へ向けて馬力を向上させてきたが、足まわりのセッティングには若干苦労している様子だ。相手は今回もランエボということで、「なんでいつもオレの相手は4WDばっかりなのかね」とボヤいている(笑)。
■後追い:三菱・ランサーエボリューションVII
→ドライバーは小早川。パーマがかった頭髪にまばらなあごヒゲが特徴。ヒルクライム担当の座をチーム「246(ツーフォーシックス)」内の投票で獲得した。バトル前は「本気出していいなら負ける気しねぇんだけど…」「(FDの)ロータリーエンジンなんてもう終わってるし」と、相手をみくびっていたが、啓介本人を目にしてからは、「いい感じのオーラ出てましたよね…」と警戒を強めている。愛車は吊り下げ型のGTウイングを装着したランエボVII。
【バトルまでのあらすじ】
栃木、埼玉、茨城と制覇し、いよいよ関東最強を極めるための最後の地である神奈川県遠征へと突入したプロジェクトD。対する神奈川勢は4つのチームによる、4段構えの防衛ラインをひいた。まず最初に対戦するのは、チーム「246」。2戦以降のチームも見守る、あるいはタイム計測するなど、完全アウェイのバトルに挑むプロジェクトDに対して、その様子を見ていた246のリーダー大宮は、「オレは気に入ったよ」「小細工なしでうけて立ってやろうぜ!!」と、真っ向勝負を宣言するのだった───。
【バトル考察】
プロジェクトDが、先行か後追いかの選択権をホームチームである246へ譲ると、「相手をじっくり見たい」という思いから246側は後追いを選択。小早川はコースが低速ステージであることを鑑みて、2駆相手に加速勝負で負ける心配はないと予想。「1本目は様子見、2本目は勝負」という作戦を立てていたのだが、結果的にはここに落とし穴があった。
一方、啓介はまったく気負いなくFDに乗り込むと、横にいた涼介に向かって「オレの仕事の半分は、もう昨日のうちに終わってるんだ…」と吐露している。その意味はバトル後半で明らかになるが、後半の高速セクションでスパートをかけること、そのためにクルマの仕上がりとコースの攻略を高いレベルでプラクティス(練習走行時)から完成させておくということであった。
序盤、後方から啓介のFDを眺めていた小早川は、「高速区間ではさすがにフットワークもいい…」とFDのことを高く評価しつつも、まだ真価を見抜いていない。そして、この先の勾配がきつく路面の悪い荒れたタイトコーナー区間でレベルを測ろうとした。
実際にタイト区間に入ると、FDのセッティングのレベルの高さを見抜くと同時に「何かが足りねぇ」と感じた小早川。さらに“つかずはなれず”の状態でFDを追い続けると、「乗り手の存在感が希薄すぎるんだ…」ということに気づく。そして、これまでプロジェクトDが勝ってきたのは、ドライバーの能力よりクルマ作りを含めたチームとしての総合力が要因だったと決めつけてしまった。
コースの中間地点を越え、勾配がゆるくなる。啓介は、涼介との計画通り、スパートをかける地点をはかる。ちなみにFDのセッティングも、ここ一発のスプリントのキレを重視している。ものすごくピーキーで、スピンにいたるまでのコントロール幅が狭い足まわりになっているため、長時間のプッシュは不可能だった。つまり、1本目のスプリント勝負で失敗すれば自ずと敗北が見えてくるという綱渡りセッティングだ。
そして、道幅が狭く視界も悪い区間に突入した時だった。小早川が「いくらなんでもここでは来ない…」と判断した刹那、前方のFDがテールランプの残像を残してコーナーの先へ消えた!
慌てる小早川! すかさずアクセルを全開にしてFDを追う! しかし、コーナーでFDにグングン引き離される。そしてラストの超低速区間に入り、小早川は「もう一度くっつけば…まだ2本目がある…!!」と気持ちを引き締めた。
ところが、差は縮まらないどころか、小早川のランエボVIIがいくら踏ん張ろうとも、それからFDの後姿を見ることはできなかったのである。恐るべき高橋啓介の集中力と本気のラストスパート。
結果は、FDによる7秒逃げ切りのパーフェクトウィン。高橋啓介はFRのRX-7で、またもやハイパワー4WDに鮮やかに対して勝利を飾ることになる。啓介が思い描いていた通りの走りを実現できたこと、そして事前に策を練った兄の涼介による戦略的な勝利でもあった。
※この記事はベストカーWebの記事を再編集したものです。
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