『彼岸島』シリーズ1000万部突破を記念して、現在『彼岸島 48日後…』を連載中の松本光司と、ヤンマガWebとコミックDAYSにて『彼岸島』公式スピンオフ『彼、岸島』を連載する佐世保太郎による全4回の対談企画が実現!

第1回目は『彼岸島』の制作秘話に迫ります。
 

『彼岸島』が生まれたきっかけ

ヤンマガWeb
『彼岸島』シリーズ1000万部突破!おめでとうございます!!
松本光司
ありがとうございます。
ヤンマガWeb
今回、突破記念ということで、『彼、岸島』の佐世保太郎先生と対談という形で、『彼岸島』シリーズについて制作秘話などをテーマにお話しいただけたらと思います。

佐世保太郎
はじめまして。佐世保太郎と申します。実は松本先生とは初対面で…。緊張しています。こんな渋い俳優さんみたいな方だったとは。
松本光司
佐世さんは、髪型がすごくいいですね(笑)。
※編集部注:佐世さんは超ロン毛のモヒカン! リモート対談時は、その長髪を片側に流していた!
佐世保太郎
今日のためにちゃんと美容院でセットしてきました!
松本光司
『彼、岸島』読んでますよ。面白いです。
佐世保太郎
ほんとですか! いつ怒られるかとびくびくしながら描いてたので、そう言ってもらえて嬉しいです(笑)。
『彼、岸島』は担当編集のH野さんから「彼岸島のスピンオフを描いてみませんか?」と提案があったのがきっかけで生まれました。『彼岸島』はどのようにして生まれたんですか?
松本光司
結構前のことになりますが、当時のアシスタントとゾンビ映画の話で盛り上がっていて、ゾンビ漫画を描けないかな?って思いまして。ただ、ゾンビは知能がないので敵ボスとかが作りにくい。じゃあ吸血鬼だったらいんじゃないか、ということでゾンビっぽい吸血鬼漫画、『彼岸島』となりました。
佐世保太郎
そうだったんですね。実はスピンオフのお話をいただくまで手に取ったことがなかったので、この機会に一気に読ませていただきました。『彼岸島』はすごく熱狂的なファンが多いと聞いていたのですが、その理由がわかりました。一つはキャラクターが魅力的なことだと思うんですが、松本先生が一番気に入っているキャラはなんですか?
松本光司
お気に入りはなんだろうなぁ…。みんな好きですよ。隊長もネズミもあごあごも(笑)。自分的に一番手応えがあったのは、キャラというか邪鬼ですけど、姫ですかね。
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"姫"という名からはかけはなれたおぞましい姿! 目が合うと襲われてしまう!
『彼岸島』第16巻
第百四十五話「水の音」より 
目があった瞬間、形相が一気に変化する‼
『彼岸島』第16巻
第百四十五話「水の音」より 
佐世保太郎
姫は強烈でしたよね。
松本光司
初めての名前がついた邪鬼です。自分としてはあのときモンスターデザインとして一皮剥けた気がします。

読者の心に残るキャラクターにするために欠かせないストーリー演出

 
佐世保太郎
松本先生はキャラクターを考えるとき、どんなことを意識しているんですか?
松本光司
これも邪鬼の話になりますが、とにかく自分の予想を超えたいですね。いろんなパーツの組み合わせや落書きを経て、見たことのない感じになるまで練り廻します。最終的には何か馬鹿っぽいものになることが多いです。
例えばエテ公だったら、「女の人の股間に爺さんの顔がある」というキャラクターの根幹が思いつくまでとにかくもがきます。
あとは海老をつけようとか、大股開きで登場させようとか、結構楽しく完成形に向かって行きますかね。
ただ、できたときは何だか急に冷めて、とにかく恥ずかしくなって、編集に本気で馬鹿にされるのを覚悟します(笑)。
不思議と経験上、自分が恥ずかしいものほどみんなの反応がいいので、それを言い訳に「このデザインで大丈夫」って言い聞かせて描いてます。
佐世保太郎
担当編集と揉めることってあるんですか?
松本光司
最近は全くないですが、凄く昔、明の幼馴染のポンのときに揉めましたね。
ポンはみんなに見捨てられた後、亡者となって明の前に現れるんですが、担当編集に「一番弱者のポンが、ここまで惨めなのはかわいそうだ。ポンのことはもう描かなくていいのでは?」と言われまして。
それに対して僕は「このままポンを描かないでいると、どうでもいいキャラクターのまま読者が忘れてしまう。ここでポンの最後をしっかり描いて、読者に彼の生き様を伝えたい。これが作者としてポンにしてやれる最良のことだ」と、押し切りました。
一定期間血を吸わなかった吸血鬼のなれの果て”亡者”。醜悪な姿と悪臭から、吸血鬼からも嫌われる存在である。そんな姿になってしまった仲間・ポンを明は涙を流しながら殺害した。
『彼岸島』第8巻 
第六十四話「プライド」
『彼岸島』第8巻
第六十五話「優しい明」より
佐世保太郎
確かにポンはすごく印象に残っています。
松本光司
あの頃はとにかく人気を取って連載作品として安定させたいと必死でしたが、ポンの件を経て、自分が面白いと思うことを全力で描けばいいんだと確信しました。

編集者は最初の読者。反応を見て、伝え方を工夫する

 
佐世保太郎
松本先生は担当編集にもストーリー展開を言わないと聞きましたが、本当ですか?
松本光司
もちろん『彼岸島』連載当初はネームを描く前に担当編集と色々打ち合わせをしていましたが、ここ5,6年はいきなりネームを見せる感じです。だから担当編集もネームで初めて展開を知ることになります。
自分がネームをずっと練っていると、読者の目線が曖昧になってきてしまうので、初見の編集者の反応を見ることで読者目線を取り戻しています。この作業は絶対に必要なので、助かります。
佐世保太郎
編集者の反応を見て、展開を変えることはあるんですか?
松本光司
展開は変えたことはないかな。ただ、伝え方は変えます。
佐世保太郎
伝え方?
松本光司
たとえば、自分の片腕が化け物化してしまった勝次が倒れているシーンを描いたのですが、読者が本当に凹んで絶望されたら困るんです。そんな漫画は描きたくないし、そう思われたら失敗です。
自分としては「ショック!! なんてこった!! ああどうなんの勝次!! 次読みてぇ!!」みたいに、結果的にワクワクしてほしい。僕の思い描いたように読者を誘導できてたらうまく行くはずなんです。
だから編集者の反応を見て違うと思ったら、何度でも修正します。ストーリーのテンポを変えたり、順番を変えたり、目線を足したり、説明を加えたり、逆に省いたり。ただ、展開自体は変えません。そこを変えると、多分自分のものではなくなってしまうから。
佐世保太郎
なるほど!
松本光司
自分が面白い流れじゃないと意味がないんです。
デビューの頃からですかね、僕は一番の読者に「高校生の頃の自分」を想定することにしました。
一番漫画に飢えていて多感だった頃の自分に、「この漫画面白いなぁ」って言わせたいんですよ。
そしたらあの頃憧れてた様々な漫画家に、少しは近づけた気がするでしょ(笑)。

第1回はここまで!!
3月15日(月)に更新される第2回では、佐世保太郎氏の『彼、岸島』制作秘話に迫ります!
お楽しみに!