欅坂46が改名を発表してから1年。欅坂46の頃とは何もかもが変わっていく中、現実を受け止めながら、また坂道を上っていこうと歩みを進める櫻坂46メンバーの守屋茜に、この1年の出来事と心境の変化、今抱いている気持ちを聞いた。


欅坂46と〝前向きなお別れ〟をすると発表してから1年ちょっとが経ちました。その間に、櫻坂46へのグループ改名以前からの変化を呑み込んで消化したり、まだ咀嚼していたりと、今もさまざまな思いを抱えているのではないかなと。そこで、守屋さんに1万字で語っていただこうと考えて、このような機会を設けた次第です。 

 
守屋茜
配信ライブ(「KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!」)の最後で改名するって発表してから1年が経ったとは思えないくらい、いろいろなことがありすぎたよねって、メンバーのみんなとも話すんですけど、やっぱり変化は大きかったですし、メンバーとの別れもあったりして、それぞれがまた一段と大人になった1年だったんじゃないかなって、すごく思います。


昨年の夏の時点では、まさか1年後に富士急コニファーフォレストで日向坂46と一緒に「W-KEYAKI FES.2021」を開催する未来が待っているとは、夢にも思っていなかったのではないですか?  
 
守屋茜
そうですね、昨年の今頃は先のことがまったく想像できなかったです。だから、「こんなに変わるんだ」ってビックリしています。欅とのお別れがあった後、櫻坂としてのイベントも思った以上にたくさんやっているので、1年でここまで変化って生まれるんだなぁって、振り返るとしみじみ思います。最近、1年前の写真フォルダとかを見てみたんですけど、「あ、こんな感じだったんだ」って、みんなの雰囲気すら違って感じるくらい変化が激しかったんだなって。


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菅井友香さんが改名を〝前向きなお別れ〟と1年前は表現していましたが、正直なところ、そう自分たち自身に言い聞かせていたり、思い込ませていたところもあったりしたんでしょうか? 
 
守屋茜
ありました。むしろ、そっちの気持ちの方が強かったと思います。やっぱり先が見えていなかったし、どうなっていくのかも分からなかったし、すべてがうまくいくとは思えなかったですし、一期生は特にそういう思いが強かったんじゃないかなって、今になってみると余計に感じられるっていう。でも、もう変わらなきゃいけないところまで来ていたし、ある種、前向きな自分たちでいなきゃいけないと思っていたので、なんて言うか、〝とりあえず不安な気持ちにはフタをしよう〟っていう感じでした。

で、10月のラストライブで欅としての自分たちはもう見納め、みたいな気持ちでいて。欅の曲をパフォーマンスするのは、本当にこれで最後になるかもしれないって思ったら、絶対に後悔しないように頑張ろうってなるじゃないですか。その結果、ラストライブが終わったとき、涙がずっと止まらなくて、燃え尽き症候群みたいになっちゃって。でも、自分の中ではやりきった感覚があったんです。ただ、「なんで泣いてるの?」って聞かれても、どうやって自分の思いを言葉にしていいのか分からなくて。「欅がなくなっちゃった」っていう喪失感が想像していた以上に大きすぎて、だけど達成感もあるっていう、すごく複雑な感情だったんですけど、涙を流すことで消化していたんだなって、1年近くの時間が経って、そう思えるようになりました。


3人のセンターと櫻エイト、つまりフォーメーション1~2列目のメンバーは全曲に参加して、3列目の〝BACKS〟は曲ごとに入れ替わる新たなシステムだったり、二期生の松田里奈さんが新たに副キャプテンに就任したことについても、消化できたという感じでしょうか。 
 
守屋茜
欅坂って、ほかにはないカラーがあって〝らしさ〟もハッキリしていたから、新しいグループになる以上は違った強みを見つけなきゃいけないなって、私は思っていました。それまではパフォーマンスのかっこよさだったり、作品性が際立っていたっていうのがあったと思うんですけど、単にグループの名前だけを変えて、でも中身は継続っていうわけにはいかないだろうなって。だけど、リニューアルしたばかりのときは、誰も、何が〝櫻坂らしさ〟なのかが分からないじゃないですか。むしろ、それが何なのかを探って、みんなで作りあげていこうっていう形での再スタートだったので、ほかのグループにはない、私たちだけのものを確立するには、そういう新しいシステムも受け入れていかなきゃいけないなって思ったんです。

とはいえ、誰も何が正解か分からない中で「新しい体制でいきます」っていうことになったら、好意的な受け止め方ばかりじゃないだろうなっていうのも想像できていて。でも、自分にそれ(新しいフォーメーションシステム)を超えるようなアイデアは出せないなって思ったので、あらためてイチから作っていく大変さを実感したっていうのが、正直なところでした。感覚としては、欅の初期よりも大変だったなって。


欅坂46での5年間という下地があった分、リセットする方が難しかったと‥‥? 
 
守屋茜
やっぱり、いろいろなことを経験してきているから、それを一度全部忘れることってすごく難しくて。5年間で思ったことだったり感じたこと、背負ってきたものもあるから、本当にすごく複雑でした。でも、やらなきゃいけないし、変わらなきゃいけない。だから、その思いだけで前に進んできた感じです。


2020年の12月に「Nobody’s fault」で新たにデビューして、8ヵ月が経つわけですが、率直に今はどんなことを思ったり感じていたりするんでしょうか。 
 
守屋茜
実際、いろいろと慣れてきているんですけど、「櫻坂46 BACKS LIVE!!」をやるっていうことになったとき、スタッフさんが意図を説明してくれたんです。「このまま何もしないで3枚目シングルの期間に入っていったとしたら、大きな変化が訪れることもない。でも、3列目のメンバーがアピールする機会が今までなかったのも分かっているから、何とか個々の良さを引き出したい」って。

そんな風に、私たちのことをたくさん考えてくださった結果、「~BACKS LIVE!!」をやることになったんですけど、最初は自分たちが参加していなかった楽曲をイチから覚えるのに、めちゃめちゃ苦労しました。いつもは当たり前のようにダンサーさんや(振付を担当する)TAKAHIRO先生から教えていただいていたんですけど、「~BACKS LIVE!!」では自分たちで振り入れすることになって。最初にそれを聞いたとき、「え~、なんでそんな非合理的なやり方をするんだろう」って正直思ったんですけど(笑)、毎日がテストみたいな感じで、1ヵ月の間に各自がパフォーマンスする曲の完成度を上げていくっていう、そこから力を試されていたようなところがあって。とにかくBACKSのメンバーが自ら乗り越えなくちゃいけなかったので、動画を見ながら振りと動きを覚えて、メンバーと合わせていくっていう感じでした。なので、「○○の曲を完成させるまで、あと何日」っていう意識をみんなで共有して取り組んでいきました。ただ、櫻坂の楽曲って動きが結構複雑で、見ている以上にやってみると難しくて。1回目に合わせてみたときは、お互いに邪魔し合っちゃって、〝ぶつかり稽古〟なんて言っていたくらいだったんですけど(笑)、考えてみたら一期生が二期生に振りのことを聞くっていうのが、それまではなかったんですよね。聞きやすいっていうのもあって、同期のメンバー間で済ませていたところがあったんですけど、「~BACKS LIVE!!」ではそんなことを言っていられなくて、一期とか二期とかを超えて助け合うようになって。でも、それがきっかけで「この子は教え方が上手だな」とか、知らなかった一面が見えてきたり、一緒にいる時間が長くなった分、お互いに話すことも増えて、よりパーソナルな部分を知ることができたりもして。

そんな風にして、みんなで危機感を持って取り組んだことで、自然と振り覚えが早くなっていたことに気づきました。それまでの私は、ダンサーさんに目の前で同じ方向を向きながら踊ってもらわないと覚えられなかったんです。動画を見て覚えるとなると向き合うから、見え方としては逆向きになるじゃないですか。なので、最初は「うわ~、これ全部反転させて覚えるのか~」って絶望しかけたんですけど、段々と見方が変わっていって、向かい合っていても自分の向きに踊りが変換されるようになっていたんです。

そういうスキルが身についたというところで、分かりやすく成長できたっていうのもありますし、この1年で言うと、プライドも何もなくなったっていうのが大きいです。なんて言うんだろう、いい意味で気にしなくなりました。


以前、別の取材で「5年の活動の中で身につけたことの1つに、『期待しすぎないこと』がある」と話してくれましたけど、そこに繋がってくる感じでしょうか。 
 
守屋茜
はい。期待したものの、それがかなわなかったときの落胆ってすごく大きいじゃないですか。でも、やっぱり人って、無意識にどこかで期待しちゃうんですよね。で、よく話すメンバーから「だから~、期待すぎちゃいけないんだよっ」って言われて、「あ、そうだった~」って切り替えるんですけど(笑)。でも、「~BACKS LIVE!!」ではみんな、体力面でもスタミナがついたと思いますし、なによりも精神的にタフになったというか、大人になったなっていう気がします。


さっき「気にしなくなった」と話していましたけど、それは自然と物事を受け入れるようになったことでもあるのかなと感じました。つまり守屋さんが言ったように、精神的に大人になったのだろうなと‥‥。 
 
守屋茜
誤解を恐れずに言うと、最初に動画を見て自分たちで振りを覚えるって聞いたとき、よく動画で上がっている〝踊ってみた〟と同じ方法で、私たちもやらなくちゃならないのかって思ったんです。それに今までは、振りの一つひとつに意味があって、そこに込められた思いや熱意を理解しながら踊りを身体に染みこませていくっていう感覚だったので、単に動画を見て覚えたものを、お金を払ってくださったお客さまに見ていただくのはどうなのかなって、納得できなかったというか。

でも、一通り全曲の振り入れが終わった段階で、もともと、オリジナルのフォーメーションでパフォーマンスしていたメンバーを〝オリジナルメンバー〟って呼んでいたんですけど、その人たちから「なぜ、ここでこの振りなのか?」「この動きは何を意味しているのか」といった細かい部分を教えてもらうことで、楽曲への理解を深めていくことができたんです。正直、自分が参加していなかった楽曲に対しては、その辺が曖昧だったんですけど、TAKAHIRO先生が歌詞をどのように解釈して振付に落とし込んでいるのかを知ることで、愛着が増すというか、より好きになりました。
 

自分が参加していない楽曲に対しては、どこか距離を感じてしまっていたという感じだったんですかね。 
 
守屋茜
そうなんです。それに、好きな楽曲でも振りの意味が分かっているのとそうじゃないのとでは、曲への思いに温度差が生まれちゃうというか。そういう部分で言うと、「~BACKS LIVE!!」を経験したことで曲に対する思いのバランスのようなものがうまくとれるようになりました。それと、技術的なことも大事だけど、気持ちが入ったパフォーマンスこそが、見ている人に届くっていうことを改めて実感できたのが大きかったです。どれだけ練習を積んでも、いくら振り固めをしても、メンバー全体の内から出てくる思いがなかったら、ただ見せているだけに過ぎないんだなって。

それは歌声にも響いてくると思います。シングルに収録されている音源と、「~BACKS LIVE!!」で私たちが歌ったものとでは、同じ曲でも全然印象が違っていたんじゃないかなって。通常の音源では聴けなかったBACKSメンバーのソロパートをライブで披露したことで、違いを楽しんでもらえたんじゃないかなって思うし、メンバーから〝BACKSバージョン〟の「おもさび(思ったよりも寂しくない)」も好き、なんて言ってもらえたりもして、うれしかったです。比べてもらおうとか超えてやろうっていうんじゃなくて、「~BACKS LIVE!!」ならではの良さを出せたんだなっていうところで、あぁ、オリジナルメンバーにも伝わったんだなぁって。


本当に守屋さんが話してくれた通りで、「~BACKS LIVE!!」1日目ラスト、「BAN」でセンターに立った大沼晶保さんの表情やたたずまいに鬼気迫るものを感じて、グッときたんですよね。そういうシーンがたくさんあった3日間だったという印象です。 
 
守屋茜
すごくうれしいです。私からすると、2日目のふーちゃん(齋藤冬優花)の「BAN」も説得力がすごくあって、本当に泣けました。


一方、守屋さんは自身もオリジナルメンバーで参加している「思ったよりも寂しくない」でセンターに立ったわけですが、以前から思い入れの強い1曲だと話されていました。ラップのソロもありましたが、どのような思いを胸にパフォーマンスに臨みましたか? 
 
守屋茜
好きな曲の方が伝えやすいかなっていう理由でセンターに立候補したんですけど、よく考えたら間奏のところでラップがあるなって。あれ、私ラップやったことないぞ、どうしようって(笑)。でも、もともと好きで毎日のように聴いていたから、自然と覚えていたところがあって。リハーサルで歌ってみたときに、「ラップのパートは分かりやすく説明するように言ってみて」ってアドバイスをいただいて、それを意識したら楽に歌うことができたんです。

あと、音程とかも(山﨑天の)オリジナルキーよりも少し高めにアレンジして歌いやすくしたんですけど、振りが見た目より結構激しめなので、バランスを考えないと息が上がって歌えなくなっちゃうんです。そこを意識するのが大変でした。自分ではすごく頑張って歌っているのに、ライブ会場の構造とか当日の状況で、お客さんにどう聴こえているのか、3日間で調整していくのも難しかったです。そこはPA(音響スタッフ)さんと「この部分はもっと声を張ってみて」といったやりとりをしたんですけど、欅の時から含めても初めてだったんです、そこまで細かい部分まで詰めるのって。すごく難しくて大変でしたけど、一緒に完成度を高めていく作業はやりがいがありましたし、いいパフォーマンスができたときに自分と一緒喜んでくれる人がいるっていうことに、今までとは違ったうれしさを感じました。


「チーム欅坂」を経て、さらに「チーム櫻坂」で新たな一体感を得たということですね。 
 
守屋茜
よりコミュニケーションをとるようになったことで、一体感が強まった感じがしました。そういうところも「~BACKS LIVE!!」での経験が生きているなって思います。


コミュニケーションというところでは、3日目のMCで二期生メンバーたちと手紙を通じて思いを伝え合う一幕がありました。あの場面もグッときましたよ。
 
守屋茜
はい‥‥私もです(笑)。実はMCも「~BACKS LIVE!!」から初めて、ちゃんと構成を考えてリハーサルをするようになったんです。それまでは振り固めやダンスのリハに時間を注ぎ込んでいたんですけど、今回から「この曲のあとは、このメンバーでMCを担当します」って割り振られて、「じゃあどういう話をしようか」とか、「1日目から3日目まで、チームごとに違いが出るようにしよう」って考えていって。なにより、演出家の方から「MCがグダるとライブの流れも悪くなっちゃうから、そこは大事にしてほしい」と、ご指導をいただいたので、MCのレベルも上げていこうっていう意識は、メンバー間でも相当高かったと思います。もうそこは本当に、めちゃめちゃ高かったので‥‥っ!


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めちゃめちゃ強調しますね(笑)。でも、確かに欅坂46時代のライブMCを思い出してみると、これまでのライブでは菅井さんがまず話をして、メンバーの誰かに振るっていうスタイルでしたよね。 
 
守屋茜
あと、欅の時はライブ全体の世界観を大事にしていたので、あまりMCに比重を置いていなかったというのもあったと思います。でも、櫻坂になったんだから、そこも変えていこうって。演出家の方が「~BACKS LIVE!!」で違いを見せてやろうって言ってくださったことで、グループごとに特色が出るよう、しっかり考えようという意識も高まったんです。

で、私たちの3日目のMCでは手紙という形で、メンバー間の思いや、決意を伝え合おうっていうことになりました。ただ、難しかったのが、だいたいの尺が決まっているんですけど、私たちが手紙を読んでいるのを聞いているファンの皆さんを座らせず、立ったまま聞きたくなるようなMCにしてほしいと演出家の方から言われていたことです。時間配分もそうですけど、どうすれば飽きさせない構成になるんだろうって、すごく考えました。


そうだったんですね。でも、本番であんなに増本綺良さんが泣きじゃくったりするっていうのは、計算外だったのかなって。 
 
守屋茜
綺良ちゃんだけじゃなくて、全員が手紙の内容は本番まで知らなかったので、もう本当に涙腺が危なかったですね(笑)。しかも、ふーちゃんが私に向けて贈ってくれた言葉(※「新二期生のみんなにメッセージを伝えたんですけど、隣にいる茜にも本当に感謝していて。ありがとう。茜は本当に、ここまで来る間にグループの元の部分をずっと支えていてくれて、茜に助けられた一期生や二期生がメンバーの中にはたくさんいると思うので、これからも茜らしく自由にいてください」)も完全にサプライズで、あの言葉を聞いた瞬間にビックリして、全然泣くつもりがなくて耐えてたんですけど、涙腺が決壊しました。あれはですね、反則ですっ!


心から湧き出た言葉って、そういう力がありますよね。泣いたっていいんですよ! 
 
守屋茜
いや、本当はすごくうれしかったです(笑)。あとライブ後に守屋麗奈ちゃんたちと写真の送り合いをしていたんですけど、麗奈ちゃんからも「茜さんが手紙で涙を見せないようにしていたところで、私も号泣しました」って言ってくれて。でも、今でも本当は泣き顔とかを人に見せたくないし、見られたくもないんです。そもそも、人前で泣く性格でもなかったんですけど、年々涙腺がゆるくなってきちゃって、涙を抑えられなくなってきました。

だから「W-KEYAKI FES.2021」のときも、ライブ後の関係者の方々に向けたあいさつの場で(日向坂46キャプテンの佐々木)久美ちゃんが今までのことを振り返りながら話しているのを聞いて、自然と泣けてきちゃって。なんか人の言葉が胸に響くと、勝手に涙が流れてきちゃうんですよ~。なんなんですかね? 大人になるにつれて、もっとゆるくなりますか?


そうですね、さらにゆるくなります(笑)。感動すると、すぐ泣いちゃいますからね。 
 
守屋茜
分かります! だって、さっきもふーちゃんの話をしながら、もう泣きそうでしたもん。


涙もろくなりますよね。そこから繋げるわけじゃないんですけど、「W-KEYAKI FES.2021」のアンコールで、「W-KEYAKIZAKAの詩」を披露した時、櫻坂、特に一期生のみんな泣いていたじゃないですか。やっぱり、あの曲には特別な思いがあったんだろうなって、それこそ見ていて泣けてきました。 
 
守屋茜
私たちもライブが終わってから、(菅井)友香とふーちゃんとこば(小林由依)と私で話していたんですけど、(涙を堪えながら)いろいろな思いがあふれてきちゃって──。それこそ、ずっと欅への思いに蓋をしていた状態だったのが、久しぶりに「W-KEYAKIZAKA~」を歌うことになって‥‥しかも歌う前から会場が緑のサイリウムでいっぱいになっていて。もう二度と見られないと思っていたあの景色を見てしまったら、いろいろ思い出しちゃったんです。心の底からは納得することが難しかったことだったり、それぞれ、本当にいろいろな思いがあったんだと思います。で、もらい泣き状態になって、一期生みんなで号泣していました。

その後で密着カメラにインタビューされたんですけど、ふーちゃんが「前はこの曲(=W-KEYAKIZAKAの詩)で終わることでライブ全体の世界観が変わっちゃうんじゃないかって、歌うことに抵抗を感じたときも実はあったんですけど、久しぶりに歌ってみて、すごくいい曲だったんだなって、改めて気づけました」って話していて。私も初めて歌った有明コロシアムのライブの時の気持ちを思い出しましたし、あの時一緒に歌っていたメンバーの顔も浮かんできて、あー、もう泣きそう‥‥。


メンバー、特に一期生だけに見える情景が確実にあるのだと思います。ちなみに、最後に歌ったのは2018年の夏の全国ツアーの千秋楽、幕張メッセのライブだったと記憶しているんですが‥‥。 
 
守屋茜
そうですね、あの時はスタッフさんがメンバーにだけ見える映像を流して、泣かせに来たんですよね。あの時のことも思い出しました(笑)。


そうやって気持ちを新たに「W-KEYAKIZAKAの詩」を歌ったことで、本当の意味で気持ち的にも前を向けたのかなと想像しますが、どうでしょう? 
 
守屋茜
もう歌う前から緑一色に会場を染めてくださったのを見て、みなさんが欅坂を忘れずにいてくれて、それぞれの心の中でずっと残り続けているんだなということが分かりましたし、これからもずっと欅のことを愛し続けてくれて、語り継がれるグループになったのかなって。何て言ったらいいのかな、私がラストライブの直後に「欅がなくなっちゃった」って感じたのとは違うところで、ちゃんと残っていたことが感じられて、安心したっていうか。そういう意味で、うれしかったんですよね。


言おうとしていることは、すごくよく分かります。だから、これも今にして思うとですけど、櫻坂46に改名する時の「欅坂46を、超えろ。」というキャッチコピーは、メンバーからしたらものすごくハードルが高かったんじゃないかなと思ったりもするんですよね。 
 
守屋茜
そうかもしれないですね。でも、「W-KEYAKI FES.2021」が終わって感じたのは、超えなくちゃいけないのは自分たちの中にある、過去と比べてしまう気持ちなんだなって。ずっと「欅共和国」をやってきた富士急コニファーフォレストにもう一度立ってみて、櫻坂46としてライブをするってなった時、舞台のセットとかは今までと同じだったり、出番を待っている時の階段とかも「あ、前と同じ階段だ」って思ったり、「欅共和国」のオープニングで出る直前の気持ちとか、本当にいろいろなことを思い出したんですけど、その過去と今を比べてしまっているのは自分自身じゃないかって、同時に思ったんです。超えるべきはそこなんだなって、今回の「W-KEYAKI FES.」で再確認しました。


そういう意識の深まりや、グループのポテンシャルを改めて感じた1ヵ月間だったな、というのが正直な感想です。 
 
守屋茜
終わってから、いろいろなスタッフさんとお話をしたんですけど、「これからはグループの中での平均点をもっと上げていかなきゃいけないね」って言われて。「~BACKS LIVE!!」を経験したことで、自分に足りないものが新たに見えた一方で、BACKSメンバーのみんながセンターを経験したことによって、自分がグループを背負うっていう責任感や、「こういう思いで櫻坂の活動をしたい」っていう意欲に繋がったんじゃないかなって。前は「やりたくても、自分は引っ張れない」って、やる前から諦めていたところがあったように感じていたんですけど、「~BACKS LIVE!!」を経験したことで解き放たれたのかなって。だから、本当の意味でスタートはここからだなって思っているんです。


3枚目シングルのリリース、それから櫻坂46になってから初のアリーナ・ツアーも決まったということで、この秋はグループの進化=深化=真価を見せていくことになるんじゃないでしょうか。 
 
守屋茜
また「~BACKS LIVE!!」の話になっちゃうんですけど、「こんな機会は、もう二度とない」っていう思いで取り組んだので、終わった時の達成感も大きかったなって。それに、「自分たちが櫻坂を変える」ってメンバー一人ひとりが心から思っていたから、見てくださった方々の心を動かすパフォーマンスができたんだろうなって感じます。私自身も、改めて表現することの楽しさを味わえました。ステージに立って、踊って見せることが楽しすぎて、「明日はこういう風にやってみよう」って考えるだけでワクワクしましたし、表現することの原点を思い出させてもらえたなって。そういう意味でもやってよかったなって思いますし、感謝しているんです。


守屋さん自身もブログに書いていましたけど、「経験することすべてに何か意味がある、と思えるようになった」のは、心が成長した証しだと思うんですよね。 
 
守屋茜
それが分かるようになったから、今も表現ができているんだろうなって思います。それに、起きていることすべてに意味があるって思えるから、まだまだ全然頑張れますし、まだまだ楽しめるな~って。


素晴らしい心意気ですね。あと、すごく細かいところで言うと、二期生のメンバーが「守屋さん」じゃなくて「茜さん」と呼んで慕うようになったことが、なんかいいなと思うんです。守屋さんがグループに2人いるから、自然なことなのかもしれないですけど‥‥。 
 
守屋茜
どうなんですかね。でも、一期生としてグループを初期からずっと見てきて、メンバーが気落ちしているのに何もしてあげられなかったことがあったから、今度こそ少しでも力になりたいっていう思いはあるかもしれないです。アイドルって本当に大変な側面もあって、すごく笑顔が素敵だった子なのに笑うのが難しくなっちゃったり、人に見られることが怖くなっちゃったり、悩みも多かったりするんですけど、だからこそグループという場所は、個々の良さがずっと変わらず、夢を持ち続けられる場所であってほしくて。それもあって、二期生たちのことは気にしちゃいますね。


そんな風に周りを慮れるのは、もうすぐオーディションに合格して6周年を迎えるという、活動歴の長さも関係しているんじゃないかなと思います。 
 
守屋茜
気づけば6年があっという間でした。でも、乃木坂さんは10周年じゃないですか。辞めることは簡単だけど、続けることは本当に何事も難しいから、心の底から乃木坂のみなさんを尊敬します。それは同期のメンバーに対しても同じで。同期が続けてがんばっているから、私もがんばれる。本当にかけがえのない、大切な存在です。


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そこを踏まえて、守屋さん自身は今後、どんな風に活動を続けていくんでしょう? 
 
守屋茜
う~ん、何だろう‥‥でも、やっぱり自分が楽しめていないと、ファンのみなさんにも楽しんでもらえないと思っています。この活動をずっと続けてきて得た一番の財産って、応援してくださるファンの方々の存在なんです。それこそ、オーディションに合格した直後からずっと私のことを見守ってくださっている方々もいらっしゃるんですけど、その分変化にも敏感で、気づかれてしまうと思うんですよ。本来は自分がみなさんを元気づけて、夢や希望を与えるのが使命だと思うので、ネガティブな感情を抱かせたくないなって。

なので、いろいろなことが自分の身の周りであったとしても、自分がちゃんと楽しめる環境づくりを心がけるようにしています。楽しめる環境っていうのは、「好き」とか「面白い」っていうポジティブな感情が自然と生まれてくるような場所とか空気のことだと思うんです。私は、この世界に憧れて入ってきたし、ずっと好きでい続けたいので、楽しむことを忘れずにこれからも頑張りたいです。


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(文:平田真人)