『雪女と蟹を食う』ジャニーズWEST重岡大毅さん主演でドラマ化!
ヤングマガジン、ヤンマガWebで大人気を博したラブサスペンス『雪女と蟹を食う』が、ドラマ化決定!
人生に絶望した男とセレブな人妻。2人を結び付けたのは、蟹だった――。
ヤングマガジンやヤンマガWebなどで人気を博した『雪女と蟹を食う』を、主演・重岡大毅(ジャニーズWEST)×監督・内田英治(『ミッドナイトスワン』『全裸監督』)でドラマ化!
入山法子&勝村政信&久保田紗友&淵上泰史ら、豪華共演者が集い、未だかつてないラブサスペンスドラマが幕を開ける。
7月8日放送スタート!
→ドラマの詳細はこちらから!
ヤンマガWebでは『雪女と蟹を食う』ドラマ化を記念して、作者のGino0808(ギノゼロハチゼロハチ)先生にインタビューを行いました!
『雪蟹』誕生秘話や、知られざるGino0808先生のここでしか聞けないお話など、必見の内容です!
それではどうぞ!
Gino0808先生インタビュー! まずは誕生秘話から!
ヤンマガWeb(以下太字):本日は、よろしくお願いいたします!
Gino0808(以下細字):よろしくお願いします。
早速ですが、『雪女と蟹を食う』誕生秘話をお伺いできればと思います。
誕生秘話はですね、ちょうど連載を起こす前の年にバンドの漫画を書いていて、300ページくらい描いたのかな、それが評価そこそこだったんですけれども、連載会議には通らなかったのです。
そんな感じで方向性が見えないときに、たまたま自分の貯金がそろそろ尽きそうになりました。50万円切ったか切らないかくらいだったと思うんですけど、そろそろやばいなと思ってたときがちょうど夏。「このまま貯金が無くなったら、死ぬかもしれないな」と、まさに北くんと同じような心境だったときに、夢を見たんです。強盗が来たみたいな夢だったんですけど、その時に「身体を差し出してでも生きながらえる」みたいな女がいたら強いなっていう妄想があり、夢とそのときの妄想がちょうど組み合わさって、ネームの第一弾ができました。
そのときに『化物語』の一巻がちょうど出ていたと思うんですけど、その中に戦場ヶ原さんのセリフでですね、「知らないの? 蟹はとても美味しいのよ」というセリフがあって、いいな、蟹かぁと思って。蟹を食べに行くっていうのがバカバカしくていいなと。
その時はまだ「雪女」っていうのはなかったんですけど、第一弾のネームで、クーラーがガンガン効いている部屋で人妻とセックスするシーンのあとに、人妻が笑った様が雪女みたいだったっていうところと、その「蟹を食いに行く」っていうのを取って、「そうだ、『雪女と蟹を食う』にしよう」ということで、このタイトルになったんです。
先生の見た夢や、まさかの「化物語」など、いろんな要素がマッチして生まれたんですね。
そうですね。『化物語』と貯金残高と、夏の暑い入道雲と、いろんなものが混ざり合ってこうなっちゃったということでしたね。
メインキャラたちに迫る!
早速、とても興味深い話をありがとうございます。メインキャラクターの北、彩女さん、マリアの三人の、先生の中でのキャラクター像みたいなものがあれば教えていただきたいです。
私は男といったらダメ男しか描かない、というか描けないんですよね。
『蝉の鳴く頃』っていう作品で、私が一番最初に描いたタカヒロっていうキャラクターがいて、今の『童貞噺』の主人公になっている男なんですけど、彼のイメージからあんまり大きく外れた男性キャラが描けないんですよね。なので、そこから『エゴイストブルー』っていうのもデビュー作にありまして、その前島さんっていう北さんの髪の毛をもっと長くしたようなキャラクターがいるんですけど、そのビジュアルとタカヒロの性格を合わせて北くんになったっていう感じです。
だから一番自分の描きやすい男性キャラクター像、っていうのが北くんです。
彩女さんっていうのもまた『蝉の鳴く頃』の話になりますけど、『蝉の鳴く頃』と『童貞噺』に出てくる香澄さんって女の人がいるんですけど、文学少女っていうキャラクター設定があって、それがもっと大人になって人妻になったときの雰囲気が、そのまま彩女さんになったという感じですかね。何を考えているか全くわからない女性っていうのが一番惹かれます。
『エゴイストブルー』を描いた時に、やっぱり女性主人公だとうまく描けなかったんですよ。女の嫌なところさらけ出したキャラクターって嫌だなって思って。男性読者が見たくもないところまで描いてしまいそうだから、男性主人公でしか描けないんです。なので女性キャラのほうは思い切り、理想的な女性に描いてるんですよね。その分、でも裏の顔があって怖いとか、ちょっと狂気的みたいな、そこまでが魅力です。
怖いところまでもが魅力的。
ちょっと盲目的というか、やっぱりみんな筋としては誰かのことが好きっていうとこで動いてる、っていうのが私の描くキャラクターかなと思います。
彩女さんっていうのもまた『蝉の鳴く頃』の話になりますけど、『蝉の鳴く頃』と『童貞噺』に出てくる香澄さんって女の人がいるんですけど、文学少女っていうキャラクター設定があって、それがもっと大人になって人妻になったときの雰囲気が、そのまま彩女さんになったという感じですかね。何を考えているか全くわからない女性っていうのが一番惹かれます。
『エゴイストブルー』を描いた時に、やっぱり女性主人公だとうまく描けなかったんですよ。女の嫌なところさらけ出したキャラクターって嫌だなって思って。男性読者が見たくもないところまで描いてしまいそうだから、男性主人公でしか描けないんです。なので女性キャラのほうは思い切り、理想的な女性に描いてるんですよね。その分、でも裏の顔があって怖いとか、ちょっと狂気的みたいな、そこまでが魅力です。
怖いところまでもが魅力的。
ちょっと盲目的というか、やっぱりみんな筋としては誰かのことが好きっていうとこで動いてる、っていうのが私の描くキャラクターかなと思います。
マリアちゃんは、二人の旅路を描くにあたって、二人が勝手に死のうとしてて、二人が勝手に助かっちゃったらというか、生きながらえたって話だと何が何やらすごく自己満な話になっちゃうなあと思って。そこに対して、彼らが生きててよかったなと思ってくれるキャラクターがいないと、この話って成立しないと思ったんです。読者の視点から見ても。なので、やっぱりその北君と彩女さんの生を願っているキャラクターが絶対にいるなと思ったんです。でもそんな優しい人ってどんなキャラクターだろうと考えた時に、マリアなのかなと。そういう人がいたらっていうので、キリスト教のマリアから取って、マリアっていう名前になりました。
ちょっとマニアックな質問なんですけど、北と彩女さんに共通点があるじゃないですか。例えば「北」という旧姓が同じだとか、誕生日が同じとか。この共通点について、どういう意味があるのか聞きたいです。
単純に共通点がある人を好きになりがちだったり、運命を感じざるを得ないなというところだったりとか、あるいはただのシャレというところもありますね。彩女さんの旧姓が北だったというのは、結局彩女さんと北さんはラストで夫婦になったわけですけど、旅行の時点で夫婦みたいな関係性だったなというのを表せるかなと思って、「北」同士にしました。北くんの「北」は偽名なんだけど。それでかりそめの夫婦だったってところから、本当の夫婦になったよっていうニュアンスを含んでるって感じですね。
誕生日は、私の名前が0808なので、8月8日にしました。 あんまり深く考えてない(笑)。
ちょっとマニアックな質問なんですけど、北と彩女さんに共通点があるじゃないですか。例えば「北」という旧姓が同じだとか、誕生日が同じとか。この共通点について、どういう意味があるのか聞きたいです。
単純に共通点がある人を好きになりがちだったり、運命を感じざるを得ないなというところだったりとか、あるいはただのシャレというところもありますね。彩女さんの旧姓が北だったというのは、結局彩女さんと北さんはラストで夫婦になったわけですけど、旅行の時点で夫婦みたいな関係性だったなというのを表せるかなと思って、「北」同士にしました。北くんの「北」は偽名なんだけど。それでかりそめの夫婦だったってところから、本当の夫婦になったよっていうニュアンスを含んでるって感じですね。
誕生日は、私の名前が0808なので、8月8日にしました。 あんまり深く考えてない(笑)。
自分が描いたものだけど、改めて読むと泣いてしまう。
先生にとって印象に残っているシーンや、ここは読んでほしい! といったシーンがあったら教えてください。
自分が描いたものだけど、改めて読むとボロボロ泣いちゃうんですよね。泣いてる顔見てるだけでも。なのでまあ、彩女さんの泣き顔や、マリアが泣くところだったりですね。女の子が泣くところを描くのが好きなんですよ。すごく美しいといいますか、笑っている顔より、泣いているところっていうのは一番描いてて楽しいというか、カタルシスがあるなあと思うので、ぜひ泣き顔を見てほしいですね。
個人的には、最後マリアが絵葉書を受け取るシーンで泣いてしまいました。あと、彩女さんが煙草を吸うシーンも好きです。
絵葉書のシーンは絶対に入れようと思っていたし、最後の方も自分の描きたいシーンをいっぱい詰め込めたので、エピローグの前の最終話がすごい気に入ってます。
煙草のシーンは、男性読者から人気でした。
Gino先生と文学
『雪女と蟹を食う』では『文学』がひとつキーワードになっていると思うのですが、文学との関係性はいかがでしょうか。
私は太宰治狂なんですけど、太宰治が本当に好きで、太宰治が書くセリフからあちこち引用してくるくらい好きなんですよね。言葉の選び方だったりとか、しゃらくさいんですけど、でもなんかそれが良くて。あのキザな感じというか。そしてすごく色気があるんですよね。他の人にはないような色気があって、やっぱりダメ男を描いてますし、私がダメ男好きなのも太宰の影響かとは思うんですけど(笑)。なので『斜陽』と『人間失格』は枕元にずっと置いてて、いつも読んでいます。
それと反対に宮沢賢二は、実際には行けなかったんですけど、岩手に宮沢賢二記念館っていうのがあって、岩手のシーンでそこから発想できないかなと思って、宮沢賢二についていろいろ調べたりとかしました。自己犠牲精神が強い人だなあというか、まさに「雨ニモマケズ〜」の通りの人だったんだろうなあと。私はその時初めて『銀河鉄道の夜』を読んで、ああ、こんな終わり方する話なんだと思って。かなり悲しいというか、行き場がないというか、どうしようもない話だなって思ってしまいました。死に向かう列車に二人が乗って、死とは何だろう、生きることって何だろうとかそういうことを考えさせられました。
7巻の最後、北さんが溺れていくときに、物語ラストのシーンにどうやったら入れるか、つまり、生きていたら死にゆく人を止める術ってのがあるのか、行動一つ次第で未来は変えられるということを深く考えました。3巻の中盤以降『銀河鉄道の夜』がラジオで流れてくる、あそこのシーン以降の構想をまだ決めかねていた時にちょうど太宰治と宮沢賢治の対比っていうのが出てきて、最終的にラストに向かう構成がちょっとずつ見えて来たんですよね。
「描かされた話」
(担当編集)その宮沢賢二記念館とかいろんな行った居酒屋とか、取材で見たものを上手く使いますよね。毎回すごいなと思って(笑)。
全部、ネタがないのよ(笑)。ネタがないから取材に行ったとことか、自分が見聞きしたタイミングで全部作ってる。
でもそれって全部タイミングで、例えば図書館に行った時にパッと取った本だったりとか、たまたま見たYouTubeの動画だったりとか意外とハマるんです。不思議なもので。だから描いたというよりは「描かされた」話だなと思います。もう一回描け、と言われたら絶対無理って思っちゃう。
取材は、漫画とほぼ同じルートを辿ったり?
そんな感じです。 私は旅行もそんなに行くわけじゃないし、本もたくさんは読まないし、知識がそんなにはないから、取材をして描くっていうのがすごい向いてるんですよね。 新しいものが見たいって思いで漫画を描いてるので。
取材で作りながら描いていったということなんですね。ラストは決めていなかったのですか?
ラスト‥‥一応生きるっていう最初の前提はありました。でも場合によっては死んでいたかもしれないし、本当の意味で決まってはなかったのかもしれないですね。途中から、主人公たちって別の人格として勝手に動いていっちゃって、それを制御する術は私にはないので、彼らの人格はもっと別のものになっていた可能性はありますね。ぎちぎちには決めてなかったな、という感じです。
ただ、ある程度、形はどうであれハッピーエンドがいいよねという気持ちはありました。明るい時代だと人が死ぬ暗い話を描いてもいいんだけど、コロナっていう時代性もあって、これだけみんなが辛い思いをしている中で、二人が死ぬってエンドはなかったなと思いますね。
割と、作品を描く上で社会的な責任を背負っていると思うんですよ。作品は大勢が見るものですし。その中でちょっとでも生きてみようかなって思える話の方が、今の時代性にも、私が描きたいものにも合っていました。なのでこう、いいラストに落ち着いたんじゃないかなって思います。
期待のドラマについて!
ドラマ化について伺わせていただきます。ジャニーズWESTの重岡大毅さん主演でドラマ化ということで、心境などはいかがでしょうか。
ジャニーズWESTの重岡さんの人気のおかげで、かなりTwitterでも話題になりまして。トレンド1位とか2位とかだったりしましたね。それもありがたい話だなって。楽しみにしてます。
あと、キービジュアルに使われてる重岡さん、不服というか不安げな表情が北さんに似てるなあって。似てない?
今回撮影現場に何回かお邪魔させていただいたんですけど、ロケが贅沢で、スタジオじゃ味わえない自然光のリアリティ、まあ本物だから当たり前なんですけど、それが臨場感に繋がってくるので、すごく期待していますね。あんなにロケをするようなドラマって他にないだろうから。劇場映画並みの予算というか、苦労というか。すごいドラマになるんじゃないかと思って本当に期待しています。
今回撮影現場に何回かお邪魔させていただいたんですけど、ロケが贅沢で、スタジオじゃ味わえない自然光のリアリティ、まあ本物だから当たり前なんですけど、それが臨場感に繋がってくるので、すごく期待していますね。あんなにロケをするようなドラマって他にないだろうから。劇場映画並みの予算というか、苦労というか。すごいドラマになるんじゃないかと思って本当に期待しています。
Gino先生、貴重なお話ありがとうございました!
本日は、貴重なお話をたくさんありがとうございました!
最後に、Gino先生の今後について、一言いただけますでしょうか!
そうですね、やっぱり恋愛ものが自分の強みというか、自分が一番面白く描ける題材だと思っています。あんまり突飛なことは描けないので、地に足を付けたというか、人間をより深くえぐっていくような作品が描けたらなと思います。あとやっぱり太宰が好きなので、漫画界の太宰になりたいです。
(担当編集)漫画界の太宰いいですね、目指していきましょうよ。
それさあ、Sさん(ヤンマガ編集長)に言ったらすごい笑われた(笑)。けど、『雪女と蟹を食う』が出たときに、読者の方が純文学みたいって感想をもらったことがあって。そう思ってくれる人がいたっていうのは、すごくうれしいことだったので、純文学ぶりをもっと高めていこうと思います。
あと、『童貞噺』も面白いので読んでください! 物語の筋が見えづらいので難しいかもしれないですけど、どこからでも読めるライトさがあって読みやすいと思うので、『童貞噺』はオススメです。頑張ります。
ありがとうございました!