新人漫画家さんのために、大ヒット作家に「人気作を生む秘訣」をお聞きするこの企画。
三田紀房先生、門馬司先生、小川亮先生という豪華メンバーに登場いただきます!



『アルキメデスの大戦』『ドラゴン桜』『インベスターZ』などの大ヒット作の生みの親・三田紀房先生に伺う第2回のテーマは
キャラの描き方についてです!

第1回「 企画を生み出す極意に迫る!」はこちら!

三田紀房先生 プロフィール
1958年生まれ、岩手県北上市出身。明治大学政治経済学部卒業。
代表作に『ドラゴン桜』『インベスターZ』『エンゼルバンク』『クロカン』『砂の栄冠』など。『ドラゴン桜』で2005年第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。



【第2艦】 三田紀房流・登場人物の描き方!
 ~キャラクターはパッションで描け! 名言とは「当たり前のこと」!~


第2回はキャラクター編! 漫画づくりにおいて欠かすことのできない「キャラの作り方」と「表現方法」について、三田先生に直撃インタビューしちゃいました!




◯主人公、サブキャラクターについて


ーーまず、主人公になるキャラクターに求めること、描く上で心がけていることやルールはありますか。

三田
自分にとって一番魅力的な人物を描くことを心がけています。
自分の中で魅力的だと感じるのは、善と悪の両方が見られるような人物です。

どんなにいい人でも、悪の部分って必ずあると思ってるんですよ。頑張っているんだけれど、途中で挫折してしまう。そんな強さと弱さが同居している、読者に近い存在を主人公として描こうと思っています。

大谷翔平選手みたいに超ストイックな人もいるけれど、ほとんどの人はそうじゃない。やっぱり世間一般の人が持つ、勤勉な部分と怠惰な部分はちゃんとセットで描くことが大事だなと思っています。

ーー 一方で、三田先生の作品には、ときどき主人公の存在が霞むくらいの「悪いサブキャラ」が登場しますが、意識されていることはありますか。

三田
描きたいように描く、ということですかね。 

描いてると、(主人公より)悪い奴を描いてる時の方が面白かったりするんですよ。だから、そういう時は素直に自分の心にしたがってます。

「全体の構造が崩れるかもしれないな」などと考えてブレーキをかけるよりかは、自分の感情が赴くままに描いた方がいいものができる気がします。

そして悪い奴を描くときは、ゴリゴリ描く! 辻褄はあとで合わせたらいいんですよ。

  『インベスターZ』©Norifusa Mita/Cork 


ーーなるほど、では漫画のキャラはその場その場の流れにしたがって描いた方がいいんですね。

三田
無理に型にはめるより、そのあとの展開はしょうがないと割り切って、思い切って描く方がいいと思います。その時々のパッションで描くことで、漫画にエネルギーを与えてくれるのでね。

『ドカベン』を描かれた水島新司先生が語っていた有名な話で、ストーリー上三振をさせるはずの岩鬼が、気づいたらホームランを打っていた、というエピソードがあるんですけど、あれこそが漫画の醍醐味というか真髄だと思います。

◯セリフについて


ーーつづいて、漫画の「表現方法」についてお伺いしたいと思います。

まず、セリフについて。
三田先生の作品には、名ゼリフがたくさん出てくると思うのですが、これらはどうやって生まれるのでしょうか。

三田
名ゼリフ、と皆さんにいっていただきますが、実はいたって普通のことを言っているだけなんです。

よく自分の漫画の金言集や名言集を書籍にしてもらったりするんですけど、読み返してみると、「普通のこと」しか言ってないんですよね。1ページまるまる使って、まるで名言かのように描いていますけど、「普通のこと」なんですよ。

でもなぜ名言に聞こえるかというと、みんな「当たり前のことを実はあまり言わないから」なんですよね。当たり前のことって、「言わなくてもわかるよね」となってしまう。それをボーンと、あえて1ページまるまる使って描いてあげると、名言っぽくなるんです。

以前取材で、学生の方々にインタビューをする機会がありました。
そうすると、「学校の先生に、桜木(ドラゴン桜の主人公の教師)みたいに『東大に行け』とはっきり言って欲しかった」と、口を揃えて言うんです。意外と学校の先生から、「東大受けろ」って言われてないんですよ。

大学を限定して「ここを受けろ」とは、先生からするとなかなか言えないでしょう?
なぜなら、学生が受験に落ちてしまった時のリスクが大きいからです。

そのような、普段なかなか言いにくい「当たり前のこと」を言うことこそが、名言になるんです。

だから自分が憧れる主人公に言わせるんですよ。自分も、なかなか言えないからね(笑)。

もちろん、ネームやコマ割り、写植の表現も大切です。小さいコマでやるより、ページと吹き出しを目一杯使ってやるのが大切です。

 『ドラゴン桜2』@Norifusa Mita/Cork 



◯表情の描き方について


ーー三田先生の漫画の中に登場する「悪いキャラクターたち」の表情がとても印象的です。そういった、一度見ると忘れられない「悪い顔」は、どのようにして生み出すのでしょうか?

三田
とにかく「わかりやすく描くこと」が大切です。なぜかというと、その方が読者の理解度が高まるんです。だから「ここぞ」という場面でしっかりとわかりやすく描くことで、読者との意志の疎通ができるようになるんですよ。


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『アルキメデスの対戦』

ーー三田先生、今回も貴重なお話ありがとうございました!
次回は三田先生インタビューの最終回! 漫画づくりの心構えなどについて伺います!


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