ちばてつや先生総評

大賞 賞金100万円
『夜を泳ぐ魚たちは』

藤原 ハル  (東京都)  48P

ストーリー
「本日のパパ活、よろしくお願いします」─パパ活女子・未果の前に現れたのは、70歳のブンジ。柔らかい語り口の彼は、なぜかセックスは求めず、ただ未果の身体に触れることを望む。どうしてブンジは交わりを求めないのか？ 不思議な高齢者との夜を重ねるうち、未果の心にも変化が現れ始める。
 
ちばてつや先生 選評
現代の都市界隈に生きる孤独な若者の生態を深く抉る作品だね。売春やクスリで夢も希望もない現実をリアルに表現し、そこへ死が間近な老人をからめて、どうにも救いのない展開だが、ラストの寒い冬空の下での演出は主人公「未果」のわずかに生きる希望、そして老人「ブンジさん」の微かな愛の温もりが感じられてホッとする。

2024年6月3日（月）発売 ヤングマガジン27号掲載!
作品を読む

優秀新人賞 賞金50万円
『ボールはいつも冷たいほうに流れる』

ストーリー
トナと京子。幼馴染の男女は成長とともに、緩やかに、だが確実にその関係性を変えていく。中学生から高校生、そして社会人―。時にすれ違い、怒りをぶつけ合い、そして理解し合う。ある二人の幼馴染が過ごした10年間の青春を描く、切なくも甘酸っぱい物語。

ちばてつや先生 選評
幼馴染のトナと京子の思春期から青春期への微妙な心のすれ違いを繊細なタッチで描いている。人物の表情表現は心情が籠っていて、読者をドキドキさせる演出に非凡さを感じる。ただ、後半の京子の相手を殺す（本当に殺したのかな？）展開は少々荒っぽく、大事な作者の意図がしっかり伝わってこないのが惜しまれる。

作品を読む

優秀新人賞 賞金50万円
『ようこそ生物研!』

ストーリー
花を愛し、虫が大嫌いな大学生・緑が出会ったのは、読モもこなす虫大好き美少女・まほろだった！ 彼女が所属する生物研究部と共に、校内で大量発生する虫の調査に付き合わされることに。“好き”に一直線な彼等に振り回されながら、少しずつ変わっていく緑。愛すべき変人たちが爆走する、農工大青春ストーリー！

ちばてつや先生 選評
線の一本一本に勢いがあるし、キャラクターもイキイキ魅力にあふれていて、絵を見ているだけで読む人を元気にするパワーがあるねー。小さな虫で気を失う園芸部員という設定は少々作り過ぎの感じではあるが、これからの生物研は楽しそう、と思わせる読後感が良かった。

作品を読む

準優秀新人賞 賞金30万円
『病めるとき』

犬嶋 乃介  (東京都)  47P

ストーリー
夫との仲が冷めきった結婚数十年目の主婦・平沢和子。ある日、ひどい肩こりから石化してしまった夫を助けるために、エルフの森へと足を踏み入れる。しかし、石化を解く手段はモンスターが数多く出現する「聖なる泉」へと行かねばならないことを告げられる。

ちばてつや先生 選評
絵はとっても丁寧だし、タッチも綺麗。ストーリーも内容がたくさんあり過ぎるほど豊富なのだが、演出が少々硬いために人物の心情「喜怒哀楽」が伝わってこなかったのは残念。ちょっとしたエピソードだけにしたほうが、作者の意図が活かされたと思うぞ。

作品を読む

準優秀新人賞 賞金30万円
『日めくりカレンダーの父』

黒田 カズキ  (東京都・23歳)  49P

ストーリー
父が遺したのは、自身が登場する日めくりカレンダーでした―。お笑い芸人の今日子は、「普通の人間になれない」ことに悩み、父の死をきっかけに活動を休止してしまう。そんな娘を見かねて、母は作りかけの日めくりカレンダーに「娘なりの言葉を書いていく」ことを提案するのだが‥‥。

ちばてつや先生 選評
頑固で仕事一筋で笑わなかった父親とその娘の世界にはなかなか入っていけないが、繰り返される無表情な男のカレンダーとその演出で何か得体の知れぬ感情が、じわりと伝わってくる。不思議な作品だが、新しい一つの表現ではあるね。次回作に期待。

作品を読む

佳作 賞金20万円
『550万の家』

担当編集者 選評
ゴミ屋敷を鑑定し値段をつけて買い取る。奇妙な客から依頼を受けた不動産業者二人の仕事ぶりをミステリー仕立てで描いた新人賞としては異質の作品。専門知識をふんだんに盛り込み、かつそれをきちんとストーリーに落とし込んでいて非常に完成度が高い。痛風を抱える先輩のプロの仕事ぶりに痺れた。

作品を読む

佳作 賞金20万円
『堕第天国』

担当編集者 選評
絵が非常に上手く、可愛い作品。絵柄の引き出しも多く、ツナマサさんの今までの積み重ねが感じられました。テーマや感情の掘り下げや、「読者をどう楽しませるか」を意識して、どんどん作品を作っていって欲しいです。 

佳作 賞金20万円
『姉、お姉ちゃん、妹、私』

担当編集者 選評
とても優しく、心が洗われる物語でした。夫を亡くした姉が愛犬のことを元夫の名前で呼び始めるという突飛な設定ですが、その理由がわかるシーンにグッときます。ラストの上司の主人公への気遣いも、キャラが世界に実在しているかのような人間味を感じました。今後はあと一歩驚きのある展開を！

作品を読む

佳作 賞金20万円
『俺の姉貴は魔法少女』

担当編集者 選評
絵・構成・キャラクターなど、漫画としてのクオリティが高い作品でした！ 地力のある作家さんなので、オリジナリティや性癖を詰め込んだ連載企画を楽しみにしています！ 

佳作 賞金20万円
『馬鹿馬鹿SHE』

担当編集者 選評
癖になるギャグと会話のセンスに脱帽。会話劇主体でありながらも終盤の畳み掛けは素晴らしかったです。少ないページ数にまとめ上げる力も非常によかったです。原稿も丁寧に作られておりここからの画力の向上に期待が持てました。このセンスを活かせるキャラクターや設定を課題により最大限の力が出せるよう頑張りましょう。

期待賞 賞金10万円
『エフ』

担当編集者 選評
吸血鬼を狩るものたちのストーリーを淡々と描いた意欲作。作品の背景にある世界観や無条件に楽しめるアクションが光る。読者をどうやったらこの世界に没入させられるか、さらに工夫していってほしい。

作品を読む

期待賞 賞金10万円
『ツッコミスティック』

担当編集者 選評
摩訶不思議な設定にもかかわらず、しっかりと最後まで読ませる表現力の高さがすごいです！ 女性キャラクターの描き方がとても良かったです！

期待賞 賞金10万円
『変身』

担当編集者 選評
壮大かつ緻密に練り込まれた世界観を細部にまでこだわって描き上げた完成度の高い作品でした。一方で設定や世界観が先行しすぎた様子もありました。次は読者と歩調を合わせたストーリー展開を意識してみましょう。

期待賞 賞金10万円
『ヘルマンの娘』

担当編集者 選評
壮大なストーリーを見事に読み切りでまとめた構成力が素晴らしい。重厚なテーマの中にエンタメ性もあった。読者との接点を作り出し、キャラクターが掘り下げられるようになれば更に良くなると思います！ 

期待賞 賞金10万円
『隣の嘘つき転校生さん』

担当編集者 選評
人のために嘘をついてしまう赤箸さんと自分より人を気にしてしまう亜羽くんの関係性が素敵でした。阿尾さんにしかない視点と感情表現の上手さをより伝えるために次回は読者とエンタメを意識しましょう。 

期待賞 賞金10万円
『おくりびと』

担当編集者 選評
安楽死志願者との最後の10分間を描くという設定が素晴らしいと思います。後半の海を見せるシーンは、セリフも演出も心に響きました。もももさんは非常に努力家で画力もどんどん伸びてきているので、次回作にも期待しています！ 

期待賞 賞金10万円
『望みの卵が開くとき』

担当編集者 選評
話のスケールは大きいですが、確かに主人公の成長が見られるストーリーで素晴らしいです。次は文字情報の調整や見やすいコマ割り、そして更なる画力の向上を目指しましょう！

期待賞 賞金10万円
『ワガハイはガワである』

担当編集者 選評
可能な限りセリフを排除しつつも、キャラクターの魅力が伝わる作品でした。絵柄の繊細さも良いですね。作品を通して暗い印象を受けたので、読者を楽しませることを意識して作品作りを続けて欲しいです！

期待賞 賞金10万円
『NAME』

担当編集者 選評
非常に熱いストーリーでした！ 画力も高いですし、最後のラップシーンのカッコよさは素晴らしかったです。キャラがまっすぐすぎるゆえに展開がベタで予想できてしまうのが玉に瑕なので、今後はさらに読者の予想を裏切っていきましょう！ 

期待賞 賞金10万円
『余りあるほどの愛だったから』

担当編集者 選評
キャラクターの掛け合いが見ていて楽しい作品でした。セリフや演出にアイディアが効いていて、特にラストスパートは印象に残る素晴らしさ。次は主人公の心情をより描写することで読者の共感を得ることを目指しましょう。

期待賞 賞金10万円
『LOVE＆PIECE』

担当編集者 選評
とても雰囲気のある作品！ 画力はもう一歩なので、自身の持ち味を見つけて伸ばしていってほしいです。また雰囲気だけにとらわれず、テーマやキャラクターを深堀りしていくことができれば、作品として充実していくと思いました！