ヤングマガジンにて、ハライチ岩井勇気さんが原作を務める『ムムリン』が大好評連載中!
今回は、岩井さんへのインタビュー企画第3弾!

1月6日に単行本第1巻が発売となる『ムムリン』。連載を続ける中で岩井さんが気付いたことや気に入っているエピソードなどを教えていただきました!

コウタのほうがむしろ宇宙人みたいなものかもしれないです

211221su001_dp.jpg 914.38 KB
ヤンマガWeb
『ムムリン』の単行本第1巻発売おめでとうございます! 単行本でまとめて読むと、宇宙人なのに事なかれ主義のムムリンと、正論で相手を突く超合理主義のコウタのやりとりが、またさらに面白く感じられます。
岩井
ありがとうございます。ふと思ったんですけど、コウタのほうがむしろ宇宙人みたいなものかもしれないですよね。「これってこういうものだよね」ってみんなが当たり前に思っていることをコウタはそう思わないので、ある意味でムムリン以上に地球に対して違和感みたいなものを覚えていて。ムムリンのほうが「それってそういうものだよね」って、どこか思考停止しているんですよ(笑)。そのへんのふたりの在り方と関係性は不思議ですよね。
ヤンマガWeb
奇妙な共同生活ってことになると、その比重は宇宙人に掛かるわけですが、何なら小学生のコウタのほうが奇妙っていう(笑)。
壱.jpg 154.48 KB

岩井
ムムリンはポコムー星ってところから来たわけですが、ポコムー星はだいぶなぁなぁなんだろうなって(笑)。ただ、コウタはコウタで合理主義ではあるけれど、もっと合理的なやり方ってあると思うんですよ。僕自身、昔はロジカルに言うことが正義だって思ってた部分があるんですが、例えば人を動かすときって、へりくだってでも嘘ついてでも、その人さえ動かせれば本当はそれでいいじゃないですか。コウタもまだまだ子供なので、そういうやり方も学んでほしいなって思います。
ヤンマガWeb
今回の1巻収録話で、岩井さん自身特に気に入っているエピソードやキャラクターは?

参.jpg 139.81 KB

岩井
街でムムリンがおじさんとぶつかって絡まれる話(『第4話 恥ずかしくないの?』)。あれはすごい好きですね。おじさんが年上のほうが偉いって価値観を押しつけてくるわけですが、他人にまでそれを強要するってすごいなって思うんですよ。強要してるからこそ、最後はさらに年上の爺さんにぶっ叩かれていて、あれは気持ちいいですよね。自分の土俵に連れ込んでおきながら、その自分の土俵で負ける感じ。ああいうやり口を僕自身もずっとやってるんですよ。 “お前の土俵に行ってやるけれど、そこで負けたらお前は終わりだぞ!”って(笑)。

弐.jpg 95.98 KB

岩井
キャラクターでは、コウタのママがすごくいいですね。ロジカルなコウタに対して、鉄拳制裁じゃないですか(笑)。それでいてムムリンを住まわせて、母性があるんでしょうね。古いタイプのママですごい好きです。
ヤンマガWeb
第4話はラストのお爺さんの一撃がなんともアナーキーでまたいいですよね(笑)。佐々木順一郎先生の絵の魅力も大きいですが、原作と漫画で佐々木先生とはどういうふうにやりとりされているんですか?
岩井
セリフとト書きを書いて、台本みたいなものを作ってお渡ししています。本当にこれは非効率だって思っていて(笑)。読み物にする必要性あるかって言うと、ないんですよね。ネームが書けたらト書きとか要らねぇのになって思いながら書いてます。しかもきっちりした性格なので、行を改行したりとか、カギカッコを使ったりとか必要以上にきれいに書いてしまって、本当意味分かんないですよ。ただもちろん、佐々木先生が読みやすいようにっていうのはあって、相方に渡すんだったらもっと雑でいいんですが、佐々木先生に渡すってなるとちゃんと書かないとなって思ってしまって。佐々木先生にはまだ画面越し(リモート打ち合わせ)でしか会ったことないですよ。だからもしちゃんとしなくなったら、“コイツ、雑に書いてき出してるな”って思ったりする人かもしれないなぁって。“ないがしろにしてませんか!?”とかキレたらどうしようって思いながら、きれいに書いてます(笑)。
ヤンマガWeb
もっと雑でもいいのか、佐々木先生に確認取ってみましょうか!?
岩井
いや、たぶん「全然雑でいいですよ」と言ってくださるとは思うんですよ。ただ、心で本当にそう思ってるかどうかは分からないので‥‥あえて聞かないでおきます(笑)。

211221su211_dp.jpg 2.44 MB

ムカつくが原動力です。 

211221su270_dp.jpg 1.13 MB

ヤンマガWeb
これからがさらに楽しみですが、アイデアに詰まることはないですか?
岩井
そこは全然困らないですね。思い浮かばないっていうときはないです。M-1(グランプリ)があったのでしばらく滞っちゃっていたんですけど、基本的にはパパパッと書けて。題材としては基本的に、世の中にこういう悪ってあるよねっていう〈あるある〉と、普段の生活でムカついたこと、今までムカついたヤツの3パターンなんですよね。

ヤンマガWeb
パターンは違っても、ムカつくが原動力なんですね(笑)。

岩井
毎週それでいけちゃいますね(笑)。ただ自分がムカついたことを書いてるだけじゃなくて、ある程度、みんな共感できるようなものだと思うのでスカッとしていただければ。

ヤンマガWeb
ちょっと毛色の違うエピソードも試してみたいというのはないですか?
肆.jpg 243.63 KB

岩井
話のオチをそうするときもありますね。あと、登場人物に対して何か言うってパターンじゃないときもあるんですよ。最近、ムムリンが特撮番組を観てる回を書いたんですけど、テレビに注釈が入りまくるんです。それでムムリンは「面白かった」ってなるのに、コウタは「テレビ終わってんなぁ」って(笑)。そういうものも全然できるんだなって思いました。やりようはいっぱいありますね。
ヤンマガWeb
見え方が似ている(!?)某作品になぞらえて、映画原作の大長編になるとイヤなヤツも意地悪なヤツもいい人になってるみたいなこともできそうですね(笑)。
岩井
できますよね(笑)。それをちょっとやろうって思ったときもあるんですけど、悪いヤツがいきなりいいヤツになるって、思考や感情の持って行き方をちゃんとしないとサイコパスになっちゃうんですよ。イヤなヤツが急に優しくしてきたら怖いじゃないですか(笑)。そこはちゃんとしなきゃいけないなって思います。
ヤンマガWeb
もともと『ヤンマガ』ってどういうイメージがありましたか?
岩井
作品の自由度が高いイメージですよね。エロもあって、グロいのもイケるみたいな。ルール無用な感じはありました。『ムムリン』にしてもそうですけど、縛りって『ヤンマガ』ぐらいになるとないのかなって(笑)。少女漫画みたいなものはちょっと違うかもしれないけれど、逆にそういうものをやってみても良かったのかもしれないですね。そこでやることに意味があるみたいなことになるじゃないですか。『ヤンマガ』でやるからには少女漫画っぽいだけじゃ終わらないんだろうなってどっかで思いながらやるから、逆に面白いかもしれない。そのまま少女漫画っぽく終わっちゃっても、それはそれでありですからね。
ヤンマガWeb
今、お好きな『ヤンマガ』作品はなんでしょう?
岩井
『ギャルと恐竜』(森もり子・トミムラコタ)はすごい好きですね。アニメ化したときも面白く観てました。男視点と女視点の要素が入ってるなと僕は思っていて、恐竜がかわいくてほのぼのするんですけど、男視点で見るとオンナの家に泊まったときの感じがすごい出ていて。その視点で見ていて、憧れてます(笑)。
→『ギャルと恐竜』はこちらから読めます!


ヤンマガWeb
作画も含めて描いてみたいという願望はないですか?
岩井
人の顔を描くにしても正面と横顔しか描けなくて、横顔も利き手と逆の向きしか描けないですらね(笑)。今度サイン会があるんですけど、普通、漫画家だったらサインと絵も描くじゃないですか。それを頼まれそうで、絵も描いたほうがいいのかなって(笑)。でも佐々木先生の描くムムリンがムムリンで、僕が描くとただのファンアートみたいになりそうなのでやめようかなって思ってます。サインにしても、原作者のペンネームみたいなものを作れば良かったんですけどね。ただ、岩井勇気って名前を出さないのは講談社が許してくれなさそうなので(笑)。“そういうことでオファーしたんじゃねぇんだけどな”って思われそうじゃないですか。それで何がいいんだろうなって考えたんですが、サインだけ書いて漫画のサイン会なのにこれだけかって思われるのもあれなので、『ムムリン』っていうロゴだけ練習しようかなって思ってます(笑)。

ヤンマガWeb
最後に、『ムムリン』の今後の展開含めて読者の方にメッセージをいただきたいんですが?
岩井
先のイメージまで結構考えているんですけど、あぁ、あれだ! 今後について語るときにこれを言っとけばいいなと思ってるひと言があって、「伏線はいろいろ散りばめてありますので」。散りばめていなくても、そう言っておくことが大事だなって(笑)。絶対に後付けだろうってことを伏線って言い張ってる人がいっぱいいますからね。それも今度『ムムリン』で書こうと思ってます(笑)。結局、そういう違和感を書いていく作品なんですよね。「伏線はいっぱい散りばめてありますので」って言っときますわ……って書いておいてくださいって、書いておいてください(笑)。

211221su301_dp.jpg 3.57 MB



『ムムリン』はヤンマガWebで配信中!▼▼今すぐ読む▼▼
1371 (1).jpg 59.69 KB