大人気連載作ゾミア浅村壮平先生の秘蔵インタビューをヤンマガWebで公開!

『ゾミア』誕生秘話から浅村先生のプロ意識まで、全てがココに!

ヤングマガジン編集部
連載にあたり、ちば賞受賞作の『ゾミア』とは舞台やメイン登場人物が大きく変わりましたが(ちば賞版では舞台は1270年元国、メイン登場人物は奴隷商人のネルグイと奴隷ユーフェイであり、連載版では舞台は1215年金国、メイン登場人物は孤児のネルグイとバートル)その理由はなんですか?

浅村壮平先生
連載を目指すにあたって作品をテーマ的にスケールアップする必要がありました。そこで、作中の「敵」となる存在を一人の奴隷商人からモンゴル帝国へと変えました。ネルグイとバートルに主人公をチェンジしたのは、二人の主人公を対立する組織に分けることで、二つの陣営を描きやすくなるという理由からです。ただ、舞台や登場人物は変更しても、モンゴル及び中国史へのリスペクトは変わらず大事にできればとおもいます。

『ゾミア』ちば賞版を読む!
『ゾミア』連載版を読む!


ヤングマガジン編集部
その「モンゴル及び中国史へのリスペクト」のために、取材などはどのようにおこなっていますか?

浅村壮平先生
博物館や文化館にもいっていますが、主に専門の書籍を参考にしています。書籍をとにかく大量に集めて必要な情報を探すのですが、気になった書籍だけにとどまらず、その書籍の参考資料へと渡り歩くことが一番効果的ですね。ウィキペディアなどでも、ページの下に参考文献の項目があるので、そこから気になる書籍を探したりしてます。本当は連載前に中国・モンゴルにいってみたかったのですが、時間の都合と新型コロナウイルスの影響で海外旅行ができなくなってしまいました。悔しいですね。それでもなるだけ現地モンゴルの生活を体験したいと思い、羊のお肉を取り寄せて骨ごとかぶりついてみたこともあります。前歯と犬歯が欠けました。

ヤングマガジン編集部
そんな膨大な資料をもとにした『ゾミア』ですが、実際にストーリーを作る際に苦労したことはありますか? 日常を描く漫画とは描き方、作り方に違う点などがありましたらお教えください。

浅村壮平先生
僕の苦労なんて他の漫画家先生方のそれと比べたらコバエとゴジラくらいのレベル差があると思いますが、強いて言えば歴史ものは史実とフィクションのすり合わせが難しいです。完全なフィクションならば、お話作りに詰まったとき設定ごと面白くなる方向に修正できますが、歴史という題材が入ると史実も尊重しなければなりません。面白ポイントの構築に待ったがかかるわけです。「ここをこうできたら面白いけど、史実と矛盾する…」と。
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ちばてつや賞版『ゾミア』P46,47より

ヤングマガジン編集部
「史実とフィクションのすり合わせ」についてですが、歴史モノにおいて史実とフィクションのバランスをどのようにお考えですか?

浅村壮平先生
よく言われることですが、フィクションの要素は「大きな嘘を1つ」ぐらいがちょうどいいんじゃないでしょうか。半村良さんの『戦国自衛隊』だったら自衛隊がタイムスリップしたって部分だけが嘘にあたり、ほかは割に史実に忠実ですよね。人間って嘘ばっかりつかれるとムカつくじゃないですか。娯楽でムカついてたら世話ないですからね。
ただ、『ゾミア』は嘘をつきまくってる作品です。ネルグイ、バートル、その他多くの主要な人物は全員が実在しない人物です。耶律楚材は実在しますが、作中での立ち位置は史実とは異なります。最初からモンゴル側だったわけではないとされていて、作中みたいな裏切り者ではないです。今後の展開をも加味すると、『ゾミア』の史実とフィクションの割合は5:5ぐらいです。もちろん、これには理由があってそうしてます。

ヤングマガジン編集部
その理由も気になりますが、他にも今後の展開で注目してほしいことなどがあれば、お聞かせください。

浅村壮平先生
史実と比べながら読んでいただくと面白いかもしれません。タイトルの「ゾミア」というのは中国の辺境(といっても日本の6.6倍程の面積がありますが)に住まう人々を指した概念です。モンゴル帝国とは本来あまり関係もない土地ですが、それが本作でどう関わってくるのか。そこに注目してみると面白いと面白いかもしれません。もちろん、なーんにも知らなくても、通読すれば楽しんでもらえるようにつくってるつもりです(そうなってなかったらすいません)。

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連載版『ゾミア』3話P31より


ヤングマガジン編集部
「史実とフィクションのすり合わせ」についてですが、歴史モノにおいて史実とフィクションのバランスをどのようにお考えですか?

浅村壮平先生
歴史漫画、めちゃくちゃ難しいですが、考えてると無限なので楽しいです。自分と違う土地の、違う時間を生きる人たちのことを想像することは、とても楽しいです。どこかで生きている誰かの人生を想像すれば、自分の人生も楽しくなり豊かになると思います。歴史を考えることでそれを無限にできます。無量空処です。

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