11月28日(月)発売のヤングマガジン52号で、第87回ちばてつや賞ヤング部門受賞作が発表されました。
ちばてつや賞は、その名のとおり、ちばてつや先生が審査をする新人漫画賞。日本で最も歴史と実績のある青年漫画の登竜門です。
今回の受賞作は大量21作品!
ヤンマガWebでは本日11月28日(月)、大賞1作品・優秀新人賞2作品・準優秀新人賞2作品が公開!
12/2(金)には佳作・期待賞の16作品が公開されます。
また、ここでは、ちばてつや先生による選評も掲載します!

上位の受賞作はこちらで読めます! 他の受賞作も順次こちらに掲載します!!

ちばてつや先生総評

それぞれに自分の表現する世界を持つ個性的な作品が揃っていて嬉しいね。『コロッケ~』は登場人物の一人一人の個性がしっかりと表現されてドラマツルギーとしての才能が楽しみ。鋭いペンタッチでリズムに乗った表現力の『銀の弾』は読みやすく、画力も演出も魅力的な異才の持ち主。『魔法よとけろ!』はキャラもストーリー展開も伸びやかな大らかさが楽しい。『食人~』と『あなたの骨~』は実力はあるが演出力、セリフまわし等やや難があったので次回作に期待を。


大賞 賞金100万円
『コロッケ作るのめんどいけど』

スガ イラカ(東京都・28歳)48P
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ストーリー
実家のコロッケ屋を手伝わされ、日々退屈な高校生活を過ごす九助。しかし彼のもとに、ある日突然不思議な女性がやってきた。彼女の名前はしぐれ。いつも社員証をぶら下げている彼女が買うのは、九助が作った形の悪いコロッケだけ。どこかしぐれに惹かれ始めている九助だったが、一人営業の日を機に二人は急接近することになり‥!? 

ちばてつや先生 選評
コロッケ作りがへたな九助も、母の介護疲れで元気がなかったしぐれさんも、その他コロッケを買いに来るお客さんも、みんな個性的で、どこか抜けていて楽しい人ばかり。それぞれが悩みを持って生きているが欠点を補い合って助け合って、九助も30歳のしぐれさんもこの後、幸せになりそうな雰囲気。最後までほのぼのと温もりのある読後感が良かった。

2022年11月28日(月)発売 ヤングマガジン52号掲載!


優秀新人賞 賞金50万円
『銀の弾』

  (愛知県・30歳)  50P
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ストーリー
「吸血鬼は銀の弾丸で死んでしまうの」――。不死の体を持つ吸血鬼・アンジー。悠久の時を生きる彼女は、舞台女優という偽りの姿で人間界を生きていた。傲慢な態度で常に付き人に逃げられてきたアンジーだったが、彼女の下にクリスという一風変わった新人が現れ‥? 死ねない吸血鬼と人間の、まだ見ぬ恋の物語。 

ちばてつや先生 選評
キャラクターデザインも、演出も、一コマ一コマの構図もすべてにリズミカルでおしゃれな作品。流れるようなタッチで線に勢いがあり、絵を見ているだけで心地よくなる魅力を持った作家ではあるが、ややおしゃれが先行しすぎて、理解しにくいコマの散見されるのは一寸惜しまれる。でも吸血鬼の悩みもじわりと伝わってきて心に残る秀作。


優秀新人賞 賞金50万円
『魔法よとけろ!』

髙橋 恭平  (兵庫県・35歳)  39P
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ストーリー
食べることが大好きなぽっちゃりカップルのオニクとプニ子。ある日、食べ過ぎによりプニ子が倒れ、緊急搬送されてしまう‥! 心配で心配で、病院の前で立ち尽くすオニク。数時間後、そんなオニクの前に姿を現したのは、別人のようにほっそり痩せたプニ子だった――。 

ちばてつや先生 選評
コミカルタッチとリアルタッチを上手く使いこなして独特の魅力があるし、細かいことにこだわらないおおらかな演出や表現が、とても伸び伸びとした作品にしている。オニクもプニ子も、まわりの家族や学友たちも皆、憎めないキャラ達で微笑ましいね。


準優秀新人賞 賞金30万円
『あなたの骨が埋まった体』

永井 乳歯  (茨城県・23歳)  50P
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ストーリー
冷凍睡眠ポッドを使用した後、妻の記憶が消えていた。絵本作家の男は妻の記憶を取り戻すべく、絵本を読み聞かせながら変わり果てた日本で旅をする。旅の道中で「坂部」という男に出会い、暮らしを共にしながら妻の回復を待つことになるが、その果てに待っていたのは、残酷な結末だった。荒廃した世界で巻き起こる、愛と記憶の再生譚。 

ちばてつや先生 選評
地球温暖化の近未来の話で、発想は面白いのだが、地下の設備や時間の経過の表現、妻・雪子の病状など、読者が気になり知りたい情報が曖昧なので、作者の世界に入っていけないのは残念。人物の描き方も静かな表現なりに充分画力はあるので、読者を迷わせない読ませ方、演出力を更に磨いて欲しい。

準優秀新人賞 賞金30万円
『食人贖宥状』

ハミタ  (静岡県・22歳)  30P
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ストーリー
俺は深夜の公園で目撃してしまった。学校で話題の美女・鴨野が人を食べているところを。「嘘かと思うけど、了承は得てるから」、「本当は人を食べたくない‥」と苦悩する鴨野。俺は鴨野が人を食べないように協力することになるが、彼女には怪しい言動が‥。美しい彼女は“悲劇のヒロイン”かそれとも”人食いの殺人鬼”か。  

ちばてつや先生 選評
男女共に魅力あるキャラクターを描ける画力のある人だね。ただ、年齢が近いと皆、同じ人物(特に同じ運命に引き込まれる学生など)に見えてしまうのは読み手を迷わせるから、しっかり描き分ける力をつけて欲しいな。更に大事なのは惚れた女性に対する反応やセリフに不自然なところが数ヵ所あり、残念。ネームの段階でしっかり練り直そう。


佳作 賞金20万円
『商人とタマゴ』

イシコ  (広島県)  50P
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選評  ※佳作以下の選評は担当編集者によるものです。
心に傷を抱える商人と、無邪気な少女の関係性が素晴らしかったです。二人が旅をしている姿を見ているだけで幸せな気持ちになりました。そして衝撃のラスト。可愛らしい絵柄で非常に切ない物語を描かれていて、唯一無二の才能だと感じました。このオシャレさを失うことなく、より広く読者を意識した企画で連載を狙ってほしいです。


佳作 賞金20万円
『圓 -madoka-』

都 旭  (東京都・29歳)  46P
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選評 
設定、キャラがいい。作品全体を覆うどこかヒリついた空気感もいい。自分自身の「かっこよさ」を持っている点で、作家性においても高評価。安易な答えで作品をまとめるのではなく、もがいたまま閉塞感を打破する主人公にも魅力を感じた。設定がチャレンジングだったこともあり、リアリティの面では課題が残る。 


佳作 賞金20万円
『バックホームおにぃ』

問松 居間  (福岡県・25歳)  38P
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選評
かつて妹の先を行っていた兄の、挫折と成長の物語。「妹に自分の人生をモデルにした人生ゲームを作られる」という設定が秀逸で、昔と比べて燻った人生を送っている兄に感情移入しながら読んでしまいました。キャラクターの葛藤をイメージ絵で表現するのが上手で、漫画でしかできない心情描写に長けているのも大きな武器だなと思います。


佳作 賞金20万円
『ロボティック・レボリュート』

品川 一  (神奈川県・33歳)  47P
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選評
ここぞ、というところにある主人公の良い表情が読み手の感情に訴えかけ、いじめという凄く難しい題材をSFの要素を組み込みながらうまく描き切った秀作。「ロボト」を直接の問題解決の手段に用いるのでなく、主人公の成長を促すきっかけまでに留めているのも非常に巧い。あとはネームの読みやすさだけ。


佳作 賞金20万円
『王の力』

黒江 景秋  (奈良県・25歳)  53P
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選評
1つの国の行く末を描き切った大作。読み切りに収める尺が足らず、ネームが忙しなくなっている箇所もありましたが、キメのシーンは大胆に熱く読ませる漫画力がありました。そして何より、絵の魅力が素晴らしかったです!


期待賞 賞金10万円
『荒野に斬る』

五褒美  (兵庫県・31歳)  50P
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選評
話の勢い、アクションの切れ、キメにいったセリフ回しの妙にヒキがあって素晴らしい! 主人公を格好よく見せるための構成力、派手な立ち回りをもっと際立たせるための画力の向上に期待しています。


期待賞 賞金10万円
『リベルム』

吉井 隆悟  (東京都・24歳)  50P
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選評
説明不足など、読者に対し不親切な点は目立つ。しかし、作家の“描きたいこと”への熱量に圧倒された。キャラにも光るものがあるため将来に期待。また、難解な設定を恋愛の話で中和しようとする姿勢はすばらしい。

期待賞 賞金10万円
『飾りじゃないのよライトは』

蟹本 えい  (兵庫県・26歳)  47P
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選評
毒を吐きつつもアイドルに真摯に向き合う少女というヒロイン像が面白かったです。セリフや小ネタの節々も笑えて、確かなギャグセンスを感じられました。惜しむらくは画力がもっとあれば、ヒロインをより素敵に描けたかと。

期待賞 賞金10万円
『Empty Space』

ぐび  (25歳)  50P
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選評
宇宙と神を巡る壮大なスケールのテーマを読み切りで描き切ったのが素晴らしい! 煩雑になりがちな世界観の説明をしっかり絵でフォローする演出力に目を見張るところがありました。少し観念的な傾向のある本筋をしっかりエンタメに昇華できれば、さらなるレベルアップが期待できます!


期待賞 賞金10万円
『ネギとゾンビの黙示録』

吉田 屋敷  (東京都・32歳)  48P
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選評
振り切ったバカバカしさを大真面目に正面から描いているのが清々しい作品でした。奇抜なアイデアを成立させるために細かい設定を詰めているのが伝わってきて、世界観にリアリティを持たせていました。


期待賞 賞金10万円
『夏休みの思い出』

髙橋 萌  (愛知県・24歳)  50P
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選評
淡々とストーリーを展開させつつも、ヒロくんという少年の不気味な様子を丁寧に演出できていました。少し難解なテーマを持て余している感じはあるものの、構図やコマ割り、背景の描写など丁寧に物語を描く姿勢がとても素晴らしいです。次回作ではより読者を意識した構成や展開を期待しています!


期待賞 賞金10万円
『記憶遺棄』

可惜夜季央  (千葉県・31歳)  50P
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選評
バディものとして主人公たち二人の関係性とキャラクターがとても魅力的に描けていました。設定やアイディアも秀逸で、興味をそそられる演出がしっかりできています。キャラクターたちの会話も飽きさせず、しっかり地力を感じられる作品でした。構成力と画力を磨いて更なる飛躍を期待しています!


期待賞 賞金10万円
『無名』

久石 らい(埼玉県)47P
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選評
漫画家志望者の主人公の心情が、とても真っ直ぐで丁寧な筆致で描かれていました。画力も高く、強い迫力を感じさせます。山田のキャラクターも良い。今後は自身から切り離した題材で勝負してほしいです。


期待賞 賞金10万円
『Angel Week』

高木 無限(福岡県・30歳)43P
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選評
設定、ドラマ、セリフの切れ味がどれも秀逸で綺麗にまとまっている作品でした! 小さくまとまりすぎ&ご都合主義な展開は課題なので、次回作ではキャラの掘り下げと、オリジナリティのある作品を期待します!


期待賞 賞金10万円
『二人で』

守熊 杏梨(埼玉県・22歳)50P
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選評
登場する化け物のデザインが破壊力抜群! オリジナリティがあるし、めちゃくちゃ気持ち悪い! そして、その化け物に立ち向かう“二人”の愛の絆がすばらしい。伝えたいメッセージがストレートに入っていて最高です!!


期待賞 賞金10万円
『わんダフルわーるど!』

上月 亮(東京都・27歳)42P
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選評
実験的な仕掛けのある作品で、2つの絵柄を描き分ける力が素晴らしかったです。反面、その部分以外のメッセージやストーリーの強度がもの足りない印象でした。もっと情熱を注げるテーマを探していきましょう。


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